2006年 10月 09日
理想主義の凋落と北朝鮮の核実験
(わかりにくいので改稿しました。単なる感想文です。)
以前にも書いたように、団塊の世代である筆者は学生時代ベ平連のデモに参加していたが、共産主義には懐疑的だった。
一人が万人のために、万人が一人のために、というのは人間が欲望より理性が勝る生き物でなければ成り立たない究極の理想主義だ。だから戦前から多くのインテリの若者をひきつけた。
しかし、人間はそんなに理性的な生き物だろうか?自己の利益の最大化を図るのが人間ではないだろうか?
思ったとおり、また心の隅には残念な気持ちもあるが、理想主義は凋落した。そのなれの果てが北朝鮮の核実験だ。
凋落の軌跡を簡単にたどってみよう。
1.もともとの共産主義
「万国の労働者よ団結せよ」というのが本当に成り立つなら、これはこれでロマンがあった。労働者が国境を越えて団結するためには、先進国の労働者は身を削って発展途上国の労働者を支援しなければならない。共産主義はお互いに我慢して相手を助ける気持ちがなければ成り立たない。
労働者は国境を越えて団結しない限り、分断され、搾取される。例えば、これは今でもそうだが、低賃金を許容するスト破りが現れると、賃金は下がっていく。そうならないように力の弱いもの同士連帯しなければならない。
もともと共産主義は国家を超える思想だった。
2.一国社会主義
社会主義というのは共産主義の前段階のことだ。そこではまだ国家は存続しているが、労働者の国家であり、労働者の国際的連帯の前衛だというのが建前だった。
しかし、筆者が学生時代、既に社会主義国家の仮面ははげ、結局指導者は自国さえよければいい、と思っていることが明らかになった。国境を越えた労働者の連帯ではなく、自国さえ良ければ他国はどうでもいい。周辺国の社会主義化は世界革命ではなく、単に自国の安全保障のための衛星国化だった。もっと言えば、自分の支配体制さえ持続できればあとはどうでもいい。それがわかっているので当時の社会主義国家と西側の労働者が連帯することは結局なかった。
3.共産主義の凋落
これは今の北朝鮮のことだけではなく、スターリンのソ連も、毛沢東の中国も、チャウシェスクのルーマニアも、ホーネッカーの東ドイツもみんなそうだった。いわゆる一国社会主義はもはや国家を超えた労働者の連帯は放棄していたのだ。共産主義の理想によってみんなが我慢することが崩れ、一部の国、一部の党員がいい目にあうことが明らかになれば、自由な経済活動によって豊かになろうとする人民の反乱はいつか体制をひっくり返す。
社会主義国家の崩壊は、共産主義という理想が結局は成り立たないことを最終的に証明した出来事でもあった。
4.共産主義とは似て非なるもの
いまや北朝鮮を共産主義国家と思う人は誰もいないだろう。共産主義の理想から程遠い今の姿は、人々をいくらでも不幸にもできる単なる国家というシステムの極端な姿だ。
かつて中国が最初の核実験を行なった時、日本の左翼の間では賛否両論が沸き起こった。アメリカ帝国主義に対抗する労働者の武器か、世界の核廃絶を願う市民に対する挑戦か。結局は自国の覇権と指導者の安泰を保障する手段にすぎなかったのだが。
北朝鮮の核もそういうものだ。しかし自由な経済活動によって成功を目指す行動は人間の欲望に基づいている。それを押さえつける体制は、長くは持たないだろう。
誠に残念なことに、人々の欲望に依拠する不完全なシステムである資本主義市場経済の代わりは、まだみつかっていない。(労働組合はまだ残っているが、組合員である正社員の既得権を守るだけのものになってしまった。)
カテゴリー[ 戦争と平和 ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2006年 10月 09日 23:01:06
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- Ryuichi Himori
- (男)
- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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