2006年 11月 08日
民主主義の逸脱
民主主義の逸脱
昨晩はある市の市会議員と2時間ほど面談していて気付いたことがある。
それは日本では行政の裁量幅が大きく、民主主義をスポイルしているのだが、それを補完・助長しているのが地方議会・議員だということだ。
この議員は市民派の一人会派だ。だから議員としての活動方法は議会で「質問」することと、職員に個別に働きかけることだ。「質問」は対応する行政側の「前向きの回答」(「善処する」など)を引き出すことによって行政の行動を変えることができる。職員への個別の働きかけは、個別事情を職員に知らせることによって対応を促すことができる。この議員としては、いずれも「いわゆる口ききなどとは違う。地域の保育園の定員を増やしたり、入札の透明化の促進へ向けてきっかけを作ったり、成果が上がっている。いいことをしているのに何が問題なのか?」という。
そもそも、一議員に言われたからといって職員が変えたりすることが民主主義ではない。政治家が(議会として、あるいは二元代表制では首長が)決めたことを実行するのが行政の役割であって、行政や個々の職員が自分達が決めて自分達で実行する、というのは民主主義ではない。行政の裁量幅が大きいから、一議員に言われて職員が「もっともだ」と思って変えることができるのだが、それがそもそも問題なのだ。
「それでは全てのことに議会が議決せよということか」とこの議員は反論する。
そうではない。議会は話し合ってルールを作り、行政がそのルールの則って執行するのを監督せよ、と言っているのだ。それが議会制民主主義の原則ではないか。
ところが行政は自分で都合のいいようにルールを決め、勝手に解釈し、恣意的に裁量する。議会はそれをただ追認し、行政の裁量の中からおこぼれにあずかっているだけではないか。この議員は自分が行政を変えさせたというが、それはあくまでも行政側がここまでは言うこと聞いてもいいかな、と判断した範囲内のことにすぎないことがこの議員にはわかっていないのだ。
それでは議員個人としては何もできないではないかというかも知れないが、その通り。民主主義は良かれ悪しかれ手続きと多数決だ。やりたければ多数派になるか首長に選ばれるかしかない。そんなまどろっこしいことはできない、もっと効率よくできるはずだ、と言って社会主義をやってみたら失敗したのではないか。
今、議会に求められているのは、「良識派」の議員が増えてそれぞれが良いと思うことをばらばら行政にやらせることではない。地域及び自治体経営の取締役会あるいはドイツ企業における監査役会として機能し、経営の最高機関としてルールを定め行政を監督し、経営に責任を持つことだ。そのような機関としての議会として機能することだ。
「うちの家から学校に行くのに危険な場所を通らねばならないので、うちの子だけ学区を変えてくれ」というのは議員個人が口をきくことでも、行政が個別に裁量することでもない。ルールに則って処理されるべき問題だ。不都合があればルールを変えればよい。
その点、指定管理者制度は実にうがった制度だ。個別施設の全てについて指定管理者移行の条例と指定管理者選定を議会で議決しなければならない。今までのように議会の場でただ批判したり評論したり揚げ足とったりしていればいい、というものではない。決定者としての議会の結果責任が問われるのだ。これが民主主義におけるガバナンスの本来のあり方だ。
議員が議員の立場で地域のコーディネーターをしたり、地域の人々の相談にのったりすることを否定するつもりはない。みんなの世話役として信頼されて選ばれたのだろうから。
皆に信頼されているという立場で行政に頼らない地域課題の解決をリードすることができるし、筆者の知っている中にもそのような議員が存在する。
しかし、多数決を経ずに行政を動かすのは民主主義の逸脱だ。
行政評価、マニュフェスト、指定管理者制度、市場化テスト、市民との協働など今地方自治で進んでいる改革は、「民が担う公共」へ向かう改革だ。「官から民へ」というのは民営化のことではない。パブリックという概念を官の独占物から市民の手にとりもどす改革だ。そのとき、議会は、議員個人の主張や会派の如何にかかわらず、存在自体が改革に対する従来型の行政を補完する抵抗勢力になっていると言えるだろう。(上山信一さんが指摘している大阪市議会などはその典型だろう。)
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登録日:2006年 11月 08日 18:12:40
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- Ryuichi Himori
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- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事、(社)指定管理者協会理事長などいろいろ。公共経営・行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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