2006年 11月 28日
小泉神話の集合的無意識(第二弾)
そろそろ昨年の選挙を思い出していただいただろうか。
このシリーズで言いたいのは、小泉神話を生み出した集合的無意識は意外と強いのではないかと言うことだ。ユングが考えたほどではないかもしれないが、いかに健忘症の日本人とはいえ、なにしろ集合的無意識はそうそう消えるものではない。
そのことを逆の面から照らしているのが、筆者の昨年の選挙での見聞、つまり地すべり的に勝利した自民党の末端組織がいかに機能しなかったか、ということだ。
それではMLからの転載第二弾である。
2005年9月8日
「今日は別の選挙区の某候補の選挙事務所から生中継です。ここは都市中心部の選挙区です。中選挙区から小選挙区に変わって4回目の選挙ですが、さすがに地元の選挙基盤や組織が大きく変わってきたのが感じられます。
ひとつは、お金がないこともあって利益誘導的要素が薄れてきたために、支持団体が選挙をやる理由が変わってきたことです。(というか理由があまりないのでいやいややっている。)
二つ目は、下請けの社長や土建屋のおっちゃんも代替わりして若返ったために(50代が多い)、選挙事務所でも意外と政策が話題になります。というのも変な話ですが、今までは政策などどうでもいい人たちがやっていたので。(小泉支持もわりと多い)。
伝統的な保守の地盤もかなり変りつつあるな、というのが実感です。ただ、選挙というお祭り好きの地域の体質はあまり変わっていないようです。
盛り下がっている理由のひとつに、小選挙区で党組織選挙になっている、ということがあります。実は前回の大物大臣経験候補と今回の候補は中選挙区時代は同じ党でしのぎを削っていました。小選挙区で大物が川の向こう岸に行き、支持者が取り残されました。
例えば個人後援会の○○婦人会は△△党婦人部となり、かつてのライバルを応援することになったのです。結果として、おばちゃんたちもどうも力が入りません。
候補者個人への思い入れが薄いので、△△党員としての「お仕事」感覚でやっているようです。」
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登録日:2006年 11月 28日 21:01:08
小泉神話の集合的無意識(第一弾)
自民党の復党問題は決着がついたようだ。
そこであらためて、昨年の郵政民営化選挙とは何だったのかを振りかえってみたい。
というのも、復党問題を始めとする小泉政治の微妙な修正(後戻り)は、自民党が想像している以上にダメージを与えると思うからだ。
昨年の郵政選挙で自民党に投票したのは、「アンチ既得権・閉塞感の打破」という小泉神話についての国民の「集合的無意識」だ。この「集合的無意識」は今も根強く存在する。一方で既得権組は確実に地盤沈下している。この状態で既得権復活の「匂い」を「集合的無意識」がどう受け止めるか。それを昨年の選挙を振り返ることから考えたい。
まず、昨年の選挙に関して行政経営フォーラムのMLに載せた文章を(多少アレンジして)改めてこのブログに再録する。長いので3回に分けて掲載する。まずはその第一弾である。これを読んで昨年の選挙を思い出していただきたい。
2005年9月4日
「今日は某大臣経験大物候補の選挙事務所に詰めるので行ってきました。プレハブの選挙事務所の2階に各支援団体の小部屋があり、半日そこに詰めます。
小部屋にはノートが置いてあり、団体のメンバーが記帳に訪れます。私の仕事は来た人にお茶を勧め、暇な人と雑談するほかに特にありません。実は結構これを気に入っています。油まみれの作業服で来る下請けの親父さんとよもやま話をするのは結構楽しいものです。
さて、私はここ20年ほどこんな感じで身近に衆議院議員選挙を見ていますが、選挙の現場でこれほど盛り上がらないのは初めてです。中選挙区の時代には、部屋から投票依頼の電話をかけたり、誰が何回顔を出したとか出さないとか殺気立った雰囲気がありました。前回の選挙ではそのようなことははなくなり、のんびりした雰囲気になりました。今回の選挙では、私が詰めている間に記帳に訪れる人はほとんどなく、来ても雑談するでもなく記帳を済ませてそそくさと立ち去るばかりです。隣の農業団体の部屋も人こそ何人かいるものの活気はなく、事務所全体が静かで緊張感が感じられません。
この候補は郵政の議決では賛成していますが、地元ではほとんどふれません。田舎で特定郵便局もたくさんあるので、わざわざそんなことを言う必要はないと思っているのでしょう。
この選挙区の対立候補は松下政経塾出身の民主党新人です。この地区は大企業の工場が多いのですが、この候補は組合とはほとんど接点がなく、組合の応援は目立ちません。そもそも組合の組織力・影響力は低下しており、選挙への対応もおざなりです。地元出身で少数の個人的支援者に支えられた候補の存在感はあまりなく、とても政権交代という勢いではありません。
お互いの支持者にとって郵政民営化も政権交代もどうでもいいしらけた選挙、という実態はここだけでなく周辺の選挙区に共通しています。マスコミの報道で受ける印象とはかなりちがっています。選挙事務所にいても、なんでいま選挙やってるんだろう、という愚痴が聞こえてきます。
私はこのしらけ選挙の原因は二つあると思っています。
ひとつは小選挙区制で両方とも比例と重複立候補であり、大臣経験大物は万が一のことがあっても比例復活は確実だからです。選挙だから事務所では昔通りのマニュアル的作業が行われていますが、まったく形式的で形骸化しており、熱がこもっていません。
一方対立候補のほうは完全な比例だのみで、民主党に風が吹けばあわよくば、とい
う感じです。
もうひとつは、それぞれの党あるいは候補者が掲げる政策と、それぞれの選挙運動をやっている人たちがまったく関係ないからだと思います。農協のおっさんや下請けの親父さんにとって郵政民営化などどうでもいいし、民主党候補の高校時代の同級生は政権交代など考えてやっているわけではありません。政策が鮮明になればなるほど、支援者には関係なくなる、という構図です。
とはいえ、私はこのような選挙の現場を見て、政治は確実に変わってきているのを感じます。どちらの候補でも、従来の支援団体は確実に退場をはじめています。早晩、農協や労組、企業などは候補者の当落にほとんど影響を及ぼさなくなるでしょう。
しかし、その代わりのアクターがまだ登場していない。熱烈な支持者をその周りに集めるような旗印としての、対抗軸が鮮明な政策、それを掲げる候補者とその政策を自らのものとして実現しようという支援者がまだ今回の選挙では見られない、ということです。
昔はこの軸はイデオロギーであり「階級」でした。いまはそれぞれの政策パッケージがすべて180度異なる、ということはありえない。小選挙区における2大政党の候補者の政策は「微差」になるでしょう。選挙はエネルギーがかかります。この「微差」をめぐって情熱を傾ける支援者グループが現れるか、それを組織できるか、がこれからの選挙の課題だと思います。
しかし、日本の選挙がまだそこまでいかないのは、「微差」のどちらが誰にとってより望ましいかが鮮明になっていないからだと思います。お互いの政策を間違っているというだけでなく、自分たちの政策が誰にとっていいのかを鮮明にしなければなりません。
さて、私は選挙事務所に詰めるわけですが、私が誰に投票するかはまったく別の問題です。念のため。来週また別の選挙区へ行きます。ご興味があればそちらで考えたこともまたレポートします。」
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登録日:2006年 11月 28日 10:53:30
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- Ryuichi Himori
- (男)
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- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事、(社)指定管理者協会理事長などいろいろ。公共経営・行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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