2007年 02月 07日
「洗練による普遍性」地方再生のキーワード
佐渡からお酒が送られてきた。
どちらも「金鶴」の蔵元、有限会社加藤酒造店のお酒。
左側が金鶴純米酒「風和」。佐渡産五百万石使用、精米率55%。
右側が純米酒「拓」。たかね錦使用、精米率60%で「第77回関東信越国税局酒類鑑評会燗審査の部優秀賞」とある。
先日ここで紹介した「真野鶴」は、日本酒の進化を改めて認識させられるほどおいしかった。軽くフルーティーな吟醸酒ではなくこくのあるしっかりした味なのに、舌につきささるようなところがなく、飲みやすかった。
今度の「金鶴」も大いに期待できそうだ。
佐渡には昨年まで6つの酒蔵があったが、1つがやめてしまい、今は先日紹介した5つが残っている。それぞれ競争してお互いに切磋琢磨し、ネット販売や酒蔵見学ツアー、海外への販路開拓など努力している姿がたくましい。それも基本はうまい酒づくりへの真摯な取り組みだろう。
筆者は佐渡の酒蔵に文化による地方再生のキーワードを見る。それは「洗練による普遍性」の獲得だ。
地酒はもともとローカルに消費されていた。昔は2級酒に分類され、おいしいお酒とは思われていなかった。酒臭くべたべたと甘く重い味を覚えている方も多いと思う。一方大手酒造メーカーは設備を近代化して低コストで大量生産し、TVCMなどで売上を伸ばした。
取り残された地方の酒蔵は、ある時期から、原理的には昔からの製法を守りながら、米や酵母など素材を研究し、造り方を工夫し、どんどん味を改良していった。その結果それぞれの個性を出しながら昔とは似ても似つかない洗練された日本酒になった。日本の歴史上現代の日本酒がもっともおいしいと言われている。
日本酒の地酒はいまやそのおいしさが世界に知られるようになり、海外にもファンが多い。
洗練されて普遍性を獲得するのは文化・芸術に共通する現象だ。洗練とはその場所その時代にしか通用しないコンテクストをそぎ落とし、ひたすら本質を追求する作業だと筆者は考えている。その結果現れる本質は、時代・文化の違いを超えて理解できるものだ。
優れた芸術家の作品は本質を突いているから文化の違いを超えて理解される。しかし決して天才ではない平凡な人々に担われるローカルな芸能や工芸も、多くの人々の努力によって洗練され、普遍性を獲得する。料理や酒も同じだ。
地方にある芸能や工芸、料理、食材、酒はそのままでは単にその地方の人にしか理解されないローカルなものだ。しかしそこに人々の長い時間をかけた本質追求の努力・改善が積み重なることによって洗練され、普遍性を獲得し、世界の人々に理解され求められるようになる。地域に眠る素材を引き出し、それに磨きをかけるのが「洗練による普遍性の獲得」による地方の再生だ。
伝統をただ守るだけでなくそれに磨きをかける、つまりひたすら本質を追求し改良することが大切だということを、佐渡の酒蔵が教えてくれる。素材はまだまだたくさんあるはずだ。
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カテゴリー[ 文化を考える ], コメント[1], トラックバック[0]
登録日:2007年 02月 07日 22:56:34
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- Ryuichi Himori
- (男)
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- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事、(社)指定管理者協会理事長などいろいろ。公共経営・行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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