2007年 03月 29日

寄付と広告宣伝費

MIXIのアートマネージメント関連のコミュニティで、「アートにお金を出すとき、企業にとっては広告宣伝費より寄付のほうがいいのではないか?」というご意見があった。

企業に対する誤解もあると思うので、ここで「なぜ寄付より広告宣伝費のほうが望ましいか」について詳しく説明しよう。

筆者はいまある音楽イベントの協賛を取るために企業を回っている。一人で約40社を訪問するのだが、先日もある大手企業にアポの電話をいれたところ、担当の部長さんが「お金を出すのはやぶさかではないが、寄付なのか?それとも広告宣伝の費用になるのか?」とおっしゃる。「プログラムに御社の広告の掲載をお願いするということなので、広告宣伝費になると思いますよ」とお話したところ安心したような声で「それなら来てください」とのこと。これが企業の本音だ。

前回書いたように、寄付は課税され、広告宣伝費は経費として認められ、課税されない。
企業の損益というものはおおまかにいうと、
  売り上げー(経費+原価)=利益
ということになる。(これを税の用語では、益金ー損金=所得、という。)

税金(法人税など)は経費や原価など(損金)ではなく利益(所得)に課税される。つまり、寄付や課税対象となる接待費などは経費や原価など(損金)ではなく概念的には利益(所得)の一部なのだ。となると企業内部の意思決定のレベルが違ってくる。
(なお、売上にかかるのが消費税である。)

広告宣伝費をどう使うかは、担当者の権限に応じてある程度は任されている。ところが寄付は大まかにいえば利益をどう処分するか、という話しなので意思決定はより上位で行なわれる。
大手企業の部長が安心したのも、広告宣伝費なら自分で決済できるが、寄付は自分のレベルでは決済できないからだ。場合によっては社長決済や取締役の稟議を必要とするかもしれない。金額は同じでも面倒がまるで違うので安心したわけだ。
いずれにしろ、経費は従業員、寄付は経営者、と覚えてもらいたい。

株主との関係で言えば、株主への配当は利益から行われるので、概念的には寄付と競合する。配当に回るべき分を寄付するには、よっぽど株主を納得させる理由が必要だ。今の株主は昔と違って物言う株主だ。だから経営者でも恣意的な判断で寄付をすることは許されなくなっている。株の大半を持つオーナーでなければ無理だろう。一方で経費の使い方は原則的には株主は経営者及び従業員に任せてよっぽどでなければ不介入だ。

企業のお金をアートに引っ張ってこようと思ったら、このような企業の原理を理解し、企業が出しやすくなる工夫をしなければならない。作品がいいとか作家がすばらしいとか社会的意義があるとか言って押しているだけではだめだ。

金額の大小に拘わらずそうだ。先日筆者はある大学のデザイン学部の卒業制作展に3万円協賛した。それは当日配布するリーフレットに載せる弊社の広告の代金として、ということでそれなら筆者も決済できる。これを3万円寄付して欲しいと言われると難しい。地域の大学への協力、という意義があっても手続きが面倒でやる気がしない。

つまり企業とは抽象概念ではなく人の集合だ。だから人に働きかけ、その人が企業の意思決定を引き出しやすいように工夫し協力することが大切なのだ。

カテゴリー[ アートマネージメント ], コメント[4], トラックバック[0]
登録日:2007年 03月 29日 00:14:00

カレンダー
< 2007年 03月 >




1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
プロフィール
Ryuichi Himori
(男)
団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
(なお、mixiもやってます。)
最近のコメント
[07/05] 何のための税金か? メープル
[07/03] 指定管理者講演会
[07/02] 指定管理者講演会 himori
[07/01] 指定管理者講演会 handa
[07/01] お金は銀行に預けるな!? himori
[07/01] 何のための税金か? himori
[07/01] 指定管理者講演会 himori
[06/29] 指定管理者講演会 まる3
[06/24] 何のための税金か? メープル
[06/17] お金は銀行に預けるな!? handa
最近のトラックバック
お気に入りリンク
検索