2007年 06月 27日

ホール建設を計画している自治体及び建築家への提言

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厳しい財政事情の中でホール建設を進めている自治体及び建築家の皆さんに提言がある。

それは、いいホールを建てるために、興行会社の劇場から学んだらどうか、ということだ。

自治体のホールは建設費を償却する必要がない。しかし興行を本業とする企業は、そのための設備としての劇場の建設費を事業収入から償却していかねばならない。つまり建設費の元をとらねばならないのだ。

そんなことが本当に可能だろうか。自主事業の収支比率(公演の総経費に占める収入の比率)が50%そこそこの公共ホールから見れば信じられないかもしれないが、興行会社はこれができなければ倒産してしまう。

そのためには当然ながら劇場の建設費は徹底的に抑えなければならない。その典型が、1998年に竣工した劇団四季の劇場「春」と「秋」だ。写真を見ていただければわかるように、この劇場の形状は単純な箱の組み合わせで、外壁の素材は鉄板だ。いわゆる「安普請」だ。

しかし、劇場の建築が粗末だからといって、劇団四季の公演が粗末だという話は聞いたことがない。劇場の外観・デザインと公演の質にはあまり関係がないということだ。

この劇場はミュージカル専用劇場なので、ミュージカルのための舞台設備・機能は非常に充実している。また、観客を快適にする数々の工夫がされている。ミュージカルはロングランで演目の転換も大掛かりのため、それをやりやすくするための構造上の工夫も欠かせない。当然山本理顕氏の城下町ホールと違い、搬入口は道路に直接面していて大型トラックが横付けできる。

以前劇団四季の主催者浅利慶太氏は、自分たちの劇場は公共ホールの半分のコストでできると豪語していた。確かに、型が単純で大理石の壁のような余分なものは何一つないので説得力がある。

建築家は劇場は夢を与える空間だと言うかもしれない。それなら劇団四季の公演がある夜に行ってみるといい。道路からファサードに向かうライトアップで演出された通路を行くだけで、心が高揚し、期待感が膨らむ。たとえ壁が鉄板であってもだ。

建築家にとっては立体的な造形ができず、せいぜい平面の色やグラフィック的なデザインしかやる余地がないので不満かもしれない。しかし四季劇場の事例で発注者である自治体に考えて欲しいのは、建築家の考える造形と、そこで行なわれる実演の質を高めたり集客したりするととは関係ない、ということだ。そう考えれば建設費を劇的に下げる方法が見えてくる。

それにしても、2001年度の劇団四季(四季株式会社)の営業収入(売り上げ)は189.5億円、営業利益は25.7億円(直近2007年3月期の売上は229.2億円)。建設費を償却しながら(あるいは償却費相当の使用料を支払いながら)この数字は立派というほかない。

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登録日:2007年 06月 27日 23:36:05

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プロフィール
Ryuichi Himori
(男)
ryuichi.himori@gmail.com
団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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