2007年 07月 03日

助さん格さんの迷走と黄門様の反民主主義

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黄門様が「助さん、格さん、なんとかしてやりなさい」と指示を出したから問題は解決か、と思ったらちっとも解決せず迷走している。

何のことかと言えば、まず中国残留孤児への新たな支援策。1月に東京地裁で原告が敗訴したあと、安部黄門がかっこよく指示を出し、選挙が近づいた7月2日にもあらためて何とかしなさいと指示を出したのだが、ちっとも進まない。孤児の収入調査などで話がつかないのだ。

次に薬害C型肝炎の被害者の救済策。これも6月25日に安部黄門が対策を指示したのだが、お代官厚労省は大阪高裁の和解案も拒否し、迷走している。そもそも国は大阪、福岡、東京の各地裁で全部負けて控訴しており、黄門様の解決指示にもかかわらず取り下げようとしない。

両方とも、助さん格さん自民党プロジェクトチームが検討しているのだが、このままでは参院選前の解決は難しそうだ。それはそうだ。それまでの国の建前との整合性がそう簡単につくものではない。

みんなが「かわいそうだからいい加減何とかしてやれよ」と思っている問題について、選挙前になると黄門様が現れて、「何とかしなさい」と指示を出す。そもそもこれがおかしい。民主主義の原則からはずれている。そこには二つの問題がある。

まず第一に、困っている人の救済策を考え、実施するのは行政の本来の役割だ。法律が不備なら国会に提起して法律を作ってその枠内で粛々とやればいい。後から指示して救済するくらいなら、最初からやっていればいいのだ。本来のことをやっていれば黄門様が登場する余地はない。黄門様が何かしなければならないとすれば、この段階(裁判になる前)で行政の長としてさっさと解決せよ、としりをたたけばいいのだ。

ところが行政の不作為や不当・不法な処分がある。それを是正するのが本来なら裁判所の役割だ。そもそも権力の恣意性から市民を守り、法の下での統治を維持するのが裁判所の役割だ。それが3権分立の民主主義の基本だ。ここでも黄門様が登場する余地はないはずだ。

ところが、日本の行政相手の裁判の勝率は10%以下と言われている。これが第二の問題だ。裁判所が民主主義の最後の砦の役割を果たしていないのだ(最近はほんの少し変わってきたが)。裁判に訴えても救われない。お代官の不正を勘定奉行に訴えてもお代官に有利な判決しかでないから、人々は黄門様の恣意的な権力行使に期待してしまう。

国相手の裁判に負けた原告団が、解決を訴えに首相官邸に行き、そこで首相が解決を指示するということ自体、そもそも民主主義の原則から見れば異常である。

黄門様頼みが結局は権力の恣意性を温存し、民主主義は遠のくのだ。だからどんなにいいことを言っても、黄門様に喝采を送ってはならない。

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登録日:2007年 07月 03日 22:21:03

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Ryuichi Himori
(男)
団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
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