2007年 07月 05日
(仮称)城下町ホールのこと
今日、たまたま専門家と話していて、小田原市の(仮称)城下町ホールのことが話題になった。
彼いわく「選考委員の顔ぶれを見れば、ああいうプランが選ばれるのもわかるよね」
顔ぶれとは、
委員長 藤森照信(大学教授・建築家)
副委員長 市橋匠(小田原市助役)
委員 伊東豊雄(建築家)
松村みち子(小田原市景観審議会委員)
本杉省三(大学教授・劇場計画コンサルタント)
坂本恵三(小田原市企画部長)
もちろん筆者は、建築家としての藤森氏、伊東氏はおおいに尊敬するし(特に、筆者の住む市にある藤森氏設計の秋野不矩美術館は好きな建築のひとつである)、本杉氏の実績にも敬意を払う。しかし、委員の中に、プロにしろアマチュアにしろ、リスクをとって公演を主催する人が誰も入っていないことが問題だ。
病院の建築コンペをするときに、審査員に医師が入っていない、ということがあり得るだろうか。おそらく現役の医師が入って自らが医療行為をするときの使い勝手の観点から審査するに違いない。
ならばなぜ、ホールの審査で、実際にそこを使って公演を主催(制作)する人が入っていないのだろうか。もし入っていれば、その人は実際に公演を行なう立場から審査するに違いない。公演の採算にとっても、ホールの使い勝手は死活問題だからだ。
そして結論としては、山本理顕氏のプランはおそらく選ばれなかっただろう。
審査委員の顔ぶれに問題があることは、以下の山本理顕氏のプランが選ばれた理由にも現れている。
◇選定理由(小田原市ホームページより)
○ホールが本来持っている晴れやかさ、非日常性を感じさせる魅力あふれる提案である。
○「小田原だからこそ、このメインホールを」という設計者の情熱が感じられる提案となっており、「都市の自由広場のようなホール」というコンセプトは、小田原のシンボルとして、今後の小田原市のまちづくりに大きな影響を与えると思われる。
○メインホールの使い方を設計者としてしっかりと捉え、具体的な使用イメージに基づく提案であり、ホール機能についての真摯な姿勢が感じられる。
○オープンロビーの機能、音響面、耐震性などが優れた提案であり、実績のある設計者による完成度の高い設計が期待できる。
一番の問題はこの3番目の理由だ。
ホールとは、そこに実演家が自分の世界を描く真ッサラなキャンパスだ。これは実演芸術家の共通認識だ。それなのに、「使い方を設計者としてしっかり捉え」「具体的な使用イメージ」に基づいて機能を提案していることが評価されている。実演家の「具体的な使用イメージ」は多様であり、それを実現できるのは、公演ごとに創られる舞台美術、大道具小道具、音響、照明である。建築家が提供する、建築に付随しているがゆえに限られた機能で実現できるものではない。「具体的な使用イメージ」は建築家の想像力をはるかに超えた多様性があるのだ。
これは、この城下町ホールについて発言している劇作家井上ひさし氏※はじめ多くの専門家が共通に指摘していることだ。ここがわからなっかったことが、審査委員の中に専門家がいなかったことを証明しているようだ。
・・・・・・・
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カテゴリー[ 文化ホールについて ], コメント[5], トラックバック[0]
登録日:2007年 07月 05日 23:18:13
- プロフィール
- Ryuichi Himori
- (男)
- ryuichi.himori@gmail.com
- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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