2007年 10月 05日
貧しくてゆたかな町

今年(2007年)4月に亡くなったアメリカ文学界の巨匠(SFファンの筆者としては偉大なSF作家)カート・ヴォネガットの短編小説に、「貧しくてゆたかな町」(1952年)という一編がある。
ストーリーはこうだ。
経営コンサルタントのケイディは「もう一世代にわたって赤字続きの工場でも、その中をぐるっと一周し、帳簿をざっとながめただけで、どうすれば年間50万ドルの原料を節約し、いまの従業員の三分の一を減らして、しかも生産高を三倍に増やせるかを、工場の支配人に助言することができた。どうすればいままで廃棄処分にしていたものを資源として売り、その金で工場全体にエアコンを設置し、背景音楽を流す費用を浮かすだけでなく、そのエアコンと音楽のおかげで個人の生産性を十パーセントも高め、不満を五分の一に減らせるかを教えることができた」(浅倉久志訳、早川文庫SF1635、2007年)という凄腕だ。
ケイディはある企業に雇われ、新しい本社を立ち上げるために「周囲の酪農家たちに奉仕する小さな商店街と、公立学校、郵便局、警察署、消防署の集まり」とかつて温泉で不動産ブームになったときに建てられ、今は空家同然になっている15件の邸宅のある小さな町に引っ越してきた。人々は有力者の転入を熱烈に歓迎した。
町の一員となったケイディは、郵便局員のおばさんの作業効率を改善し、消防車の新規購入を無駄だとしてやめさせ、町の文化祭に競争を持ち込んだ。古い邸宅を買い上げ、ケイディの新たな本社に勤める人に転売するために都会から不動産屋がやってきて、町は沸きかえった。ケイディは町の人たちに「ささやかな進歩」もたらした。
あるときケイディは、町の郵便局を廃止して広域の郵便集配制度を利用しようと提案した。「状況の内部にいる人たちは、慣習に目をふさがれているからね。この町のあなたがたがそうだ。何分の一かの経費と手数で、はるかによいサービスを受けられるのに、郵便局を存続させようとする」(同) 郵便局のおばさんは町の人たちを助けるために殉職した消防署員の未亡人だった。この時町のひとたちは我に帰った。
町の志願消防士会員になるのに3年間の居住を必要とする、という規則をケイディに通告することを決める総会で、それまでケイディと行動を共にしてきた町の有力者はこう演説した。「彼は頭脳明晰な人物だから、きっと居住年数の条件を理解してくれるでしょう。田舎町は工場とはちがいます。その中へはいって、何が作られているかをひと目で見てとり、つぎに帳簿を見て経営状態のよしあしを判断する、というわけにはいきません。われわれは何かを作ったり、何かを売ったりしているのではない。みんなで一緒に暮らそうとしているのです。それについては、あらゆる人間が自分なりの専門家でなくてはなりません。それには何年もかかります」(同)
現代の日本の状況、自治体改革や郵政民営化にとっても実に寓意に満ちた話ではないか。「それについては、あらゆる人間が自分なりの専門家でなくてはならない」というのは実に自治の原点だろう。
それから、私たちはアメリカは市場原理主義一辺倒の国、というイメージを持っているが、この小説に描かれた1950年代のアメリカの田舎町ではそうではなかった、ということが良くわかる。アメリカの原風景、ということだろうか。
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登録日:2007年 10月 05日 23:45:52
リスクをとる、とは?

以前の記事で書いたように個人投資を毛嫌いしている筆者としては(株式投資と円天と何がちがうんですか?)、最大のリスクテイクは、飲んだことのないワインを通販でケースで買うことである。
写真の赤ワイン12本、白ワイン12本が届いた。赤ワインは以前飲んだことがあり、値段の割りにおいしいとわかっているのだが、白ワインはまだ飲んだことがない。一応ボルドーのAOCワインなので注文したのだが・・・・・・う、水っぽい。
まずくても自己責任である。あと11本、飲み干すまでがんばろう!
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登録日:2007年 10月 05日 00:20:19
- プロフィール
- Ryuichi Himori
- (男)
- ryuichi.himori@gmail.com
- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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