2007年 11月 29日
団塊の罠

写真は1981年発売のザ・ビーナス「キッスは目にして」
阿木耀子作の歌詞は「罠、罠、罠に落ちそう~」
一昨日のNHKクローズアップ現代で、定年退職者が騙されたケースとして、海外移住と自費出版の事例が紹介されていた。
どちらも、ちょっと冷静に考えて見れば怪しいとすぐわかる話だ。常識的なリスク管理(裏を取るなど)も不十分だ。現役時代、知的職業やビジネスの世界に身をおいていたような人たちがなぜ引っかかるのだろうか。
筆者は、最近のホワイトカラー(会社員や公務員)の定年退職者には、引っかからないための三つのリテラシーが不足していると考えている。
一つ目は、全体を把握する力だ。
自営業者と違って、分業が進んでいる大組織では、多くの人々は販売から仕入れまでのビジネスプロセス全体を見渡す視点、あるいはそれを支える資金の流れを把握する視点を獲得するチャンスがあまりない。だから、市場ニーズを考えればありえない話に乗せられたり、契約の重要なポイントを見落としたりする。部分的なことしか知らないのに、ビジネスの全体を知っていると錯覚すると危ない。
二つ目は、現場の「きったはった」を実感する力がない。
多くのホワイトカラーは、概念を操作する仕事についている。しかし企画だ計画だと言ってもそれは所詮紙の上のことだ。言葉による理屈で「整合性」が取れていればそれでよしとするバーチャルリアリティーの世界に生きている。ところが現場・現実・現物はまったく違う事情で動いていたりする。それを紙の上の理屈に合っているように見せかけることは簡単だ。事実を把握する、それも「皮膚感覚」で察知することが大切だ。理屈が通っていてほんとらしく見えることほど信用してはならない。理屈と事実は違うからだ。
三つ目はお金のリテラシーだ。
自営業者と違って自分が資金繰りで苦労したことがない。経費も自分の懐から出ない。確定申告もやったことがない。だからお金に関しては驚くほど鈍感だ。いろいろ研究して頭でっかちになって投資らしきことに手を染めながら、一方でばかばかしいほど高い金利のローンを払っていたりする。たとえ金融機関に勤めた経験があっても、ホワイトカラー個人にはお金自体に稼がせる投資の感覚が身についていないと考えた方がいい。
このようなリテラシーが不足しているのに、それを自覚せずになぜつまらない話に乗って騙されるのか。それは簡単に言えば自分のことしか考えていないからだろう。
自費出版だって所詮は自己顕示欲だ。海外移住だって自分が優雅な老後を過したいだけだ。仕事に名を借りてさんざん自己実現を追い求めてきたのに、退職後もまだ自分の事しか頭にないから引っかかるのだ。
いいかげんに、自分はいいから世のため人のために何かしようと思わないのだろうか。自分と家族を支え食わせてくれた社会(会社ではない)に恩返ししようと思わないのだろうか。
趣味だって、社会(あるいは地域)と無縁ではないはずだ。仲間達と一緒に趣味を役立てよう、人様に楽しんでもらおうとか色々あるはずだ。もちろんそう考えている先輩や同輩もたくさんいるが。
団塊の世代のホワイトカラー定年退職者が変な投資話や海外移住や自費出版などの罠に落ちないようにするためには、まず、自分ではなく人のために何ができるかを考えることだろう。
もちろん筆者も同類なので、引っかからないように口ずさんでいるのである。
「罠、罠、罠に落ちそう~ 誘惑の恋 私を誘う キッスは目にして 恋は薔薇色」
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登録日:2007年 11月 29日 12:05:04
- プロフィール
- Ryuichi Himori
- (男)
- ryuichi.himori@gmail.com
- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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