2008年 01月 18日
サブプライム問答
【1月16日 AFP】米国経済の後退による株式市場の続落を受け、福田康夫(Yasuo Fukuda)首相は16日、市場に平静を呼び掛けた。
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(c)AFP
八「ご隠居さん、ちょっと教えてほしいことがあるんですがね」
隠居「おお八っぁんかい。なんだい?」
八「へぇ、今騒がしいサブプライムなんとかですが、あれはいったいどういうことなんで?」
隠居「うむ、あれか。おい八つぁん、おまえさんは貧乏かい?」
八「なんでぇやぶからぼうに。そりゃ貧乏も貧乏。自慢じゃねぇが、先祖代々極めつけの大貧乏ですよ。それがどうしったってぇんです?」
隠居「別にいばることはないだろう。で、そんなお前さんでも家はほしいかい?」
八「そりゃ、六畳一間の裏長屋に嬶と餓鬼三人ですからね。もちっと大きい、てめぇの家がほしい。しかしこちとら筋金入りの貧乏ですからね。買えやしませんよ。貯金もねぇし。嬶はへそくりがあるかもしれねぇが」
隠居「ところがな、メリケン国ではそんなお前さんのようなのに金を貸して家を買わせようってことになってな」
八「へ、奇特なやつもあるもんだ。借りたって返せやしねぇでしょう。こちとら、毎日のおまんまだって困ってるってぇのに」
隠居「それがな、家を買わせれば家が借金の方になるし、貧乏人でも家を持てば、取られるのはいやだから一生懸命働いて返すだろう。だから取りっぱぐれは少ないだろうと考えたのじゃ。これを『合理的選択の理論』というらしいが、いかにも頭でっかちなメリケン人の考えそうなことじゃ」
八「へぇ、そんなもんですかね」
隠居「ところで八、お前の商売はなんだ?」
八「いやですねご隠居、知ってるじゃねぇですか。大工ですよ、でぇく」
隠居「うむ、で仕事は毎日ちゃんとあるか?」
八「そりゃお天気がよければありますがね。ちょっと雨が続けば仕事がなくて銭が入らない。それに景気が悪くなって普請が減ったらたちまちおまんまの食い上げでさぁ。家どころか食うために借金しなきゃなんねぇ」
隠居「そうじゃろう。貧乏というのは働きが悪いから貧乏なのではない。どんなにがんばっても天気や景気はどうしようもないのじゃ。何しろ貧乏人には産業革命いらい『本源的蓄積』というものがないのじゃからの。貧乏は『構造的問題』じゃ。だから貧乏人に無理に金を貸しても、ちょっとしたことでたちまち焦げ付くということじゃ。メリケン人の『貧乏人も家を持てばがんばってなんとかなるだろう』という考えは間違いじゃ。
八「そりゃそうですね。ところでご隠居、メリケン国の貧乏人が借りた金が返せない、というだけで何で世界中が大騒ぎになるんです?貧乏人なんだからそんなにたくさん借りてねぇでしょう?しかも中にはちゃんと返してるやつもいるだろうに」
隠居「おう、いいところに気がついた。それはな、貧乏人の借金証文を小分けにしてあちこちに売っているからじゃ」
八「へ?どういうことなんで?」
隠居「ここに貧乏人が十両借りたとする。利息は例えば一両につき二分じゃ。わかるか?」
八「へぇ」
隠居「この十両の借金証文を一両づつ十枚に分ける。それを金持ちの借金証文と一緒にするのじゃ。金持ちは取りっぱぐれが少ないので利息も安い。例えば金持ちの利息は一両につき一分とする。で、金持ちの借金九両と貧乏人の借金一両を足して十両の借金としたら利息はいくらじゃ?」
八「へえ、金持ちの利息九分と貧乏人の利息二分で十一分になりやす」
隠居「そうじゃ。これが金持ちだけの借金なら利息は十分じゃ。つまり、同じ十両の借金証文でも、貧乏人の借金をまぜると利息が多くなるのじゃ。借金の期限が来たら合わせて十両と十一分の金が入る証文を、例えば今のうちなら十両と五分でいいですよ、と言って売るわけじゃな」
八「へぇ!メリケン人はうまいこと考えるもんですね」
隠居「で、この十両で利息が十一分の借金証文をまた小分けにして、他の利息の安い借金証文と合わせて世界中に売ったのじゃ。一人の貧乏人の借金証文を小分けにして、金持ちの借金証文とあわせて十人に売る。さらにこの借金証文を小分けにしてまた十人に売る。ということは、一人の貧乏人の借金証文を百人が持っている、ということじゃ」
八「へぇ!なるほど」
隠居「さてそこでじゃ。一人の貧乏人が借金が返せなくなったとする。さっきの、十両の借金証文のうち貧乏人の一両がぱあになる。するとこの借金証文は本来は借金の十両足す利息の十一分の値打ちがあったはずが、九両足す九分の値打ちしかなくなってしまう。ここまではわかるな?」
八「へぇ」
隠居「そこで、貧乏人が借金を返せなくなったらしい、といううわさが流れると、証文を持っている奴が一斉に証文を売ろうとするのじゃ。何しろ、どの証文にどれだけ貧乏人の証文が入っているかよくわからないのじゃからな。皆が証文を売ろうとするので値段が下がる。もともとの金持ちの借金証文まで値段が下がってしまう。一人の貧乏人が借金が返せそうもないとなったら、証文を持っている世界中の百人がそれを売ろうとするのじゃからな。だから世界中の借金証文を買って持っていた金貸しや両替屋がみんな大損した。しかも証文を担保に金を借りている連中も大勢いたからの。これがサブプライム問題じゃ」
隠居「しかもじゃ、証文をまとめて売る奴らは、直接貧乏人に金を貸している業者に対して『もっと証文はないか?いくらでも買うぞ』とけしかけておったのじゃ。そこで業者は、最初から金を返せそうもない奴にまで無理やり金を貸して家を買わせたのじゃ。これをメリケンの言葉で『モラルハザード』と言うらしい」
八「へぇ!そこで鼻を垂らしている与太郎みたいな奴にも金を貸したんですかい?そりゃ取りっぱぐれるわけだ」
隠居「だからな、八、お前が家を買うなら借金などせずに、こつこつ働いて貯めて、貯まったら買うことだな。サブプライム問題は、どれが本当に返せない借金かを調べて借金証文を作り直す必要があるので、収まるまで時間がかかるだろう。どうだ、わかったか」
八「へぇ、よくわかりやした。で、問題がサブプライムだけに・・」
隠居「サブプライムだけに?」
八「ずいぶんと寒ぶい話ですねぇ」
お後がよろしいようで。
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登録日:2008年 01月 18日 21:25:33
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- Ryuichi Himori
- (男)
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- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事、(社)指定管理者協会理事長などいろいろ。公共経営・行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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