2008年 02月 25日
シューカツの真実 その3

(絵は南蛮屏風に描かれた17世紀初頭のキャラック船)
このシリーズはオチが思い浮かばないのでだらだらと続くのである。
6.水夫のシューカツで考えねばならなかったこと
(1)able seaman への道
当時の水夫の雇用契約は航海ごとの契約と年季奉公があった。航海ごとでは乗り込むときに支度金をもらい、到着したら残額をもらって解雇、水夫は新たに乗り込む船をみつける、船も次の出港の時に新たに水夫を募集する、というもの。年季奉公は3年程度の契約で、ほとんど無給の奴隷状態もあれば、読み書きや航海術を教える(船長の知り合いから預かった少年など)という契約もあるなど様々だった。
いずれにしろ終身雇用などではなく、船を下りたらすぐ次の船を見つける必用があった。そのために経験を積んでable seaman(一等水夫=経験が長いだけでなく能力が高い者)として認められ、引く手あまたで給料も高い、という水夫にならねばならなかった。
水夫=会社員という職業を選んだ現代の見習い水夫は、会社が実は貿易船であるとなれば、一度入った船に過剰適応するのではなく、どこの船でも通用するable seamanを目指さねばならない。自分がable seamanに成長できる船はどこか、という観点から考える必用がある。able seamanになれば下士官である掌帆長、専門職の船匠など、あるいは士官である航海士になる道が開けるのである(でも船主にはなれない)。
(2)どのように船を選んでいたか
昔の水夫は迷信深かったので、運のいい船、運の悪い船を気にした。帆船の運行は気象に影響され、人智には限界があったので無理もないが、実は経済を読むのも風を読むのと同じで人智に限界があるので、運がいい会社に越したことはない。それに、期待していなかった新商品が当ったなどの運の良さにも、何か理由が隠されているかもしれない。
そもそも企業戦略が当ったなどというのは学者や評論家の後付けの理屈であり、努力は必須だが成功は偶然の産物にすぎない。
次に船長の問題がある。船長にはただ残忍冷酷なだけの独裁者もいれば、水夫の健康にも気を配り、能力を最大限に発揮させることができる者もいた。航海術や交易に長けている者もいれば、家柄がいいだけの無能な者もいた。ひどい船長は港が近づくと何かと船員をいじめて船が着くと逃げ出すよう仕向ける者もいた。この場合船長は約束の給料の残りを払わずに済むのである。
現代の会社でも、たくさん雇って営業させ、客が一巡して売れなくなったらやめるように仕向ける会社もある。小売業では中年になると給料が上がらなくなり、辞めざるを得なくなる会社もある。
船の様子や雰囲気、水夫の様子や港の噂から乗るべき船を見極める必用がある。当然見掛け倒しのとんでもない船はたくさんあった。経験のない見習水夫には見極めるのは至難の技だったがそれは現代の会社選びも変らない。確かに東インド会社の船は比較的待遇がよく人気があったが、地味でも水夫の成長に役立つ船もあった。
また、貿易は人の裏をかく(誰もが同じ物を積んでくれば値が下がる)商売なので、人気のある行き先や積荷に惑わされてはならなかったのも、現代のシューカツと同じであった。
(続く)
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登録日:2008年 02月 25日 18:22:23
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- Ryuichi Himori
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- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事、(社)指定管理者協会理事長などいろいろ。公共経営・行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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