2008年 05月 21日

地域医療の崩壊と再生

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先日の行政学会で地域医療に関する分科会に出席した。

この分科会の議論を聞いて地域医療の崩壊についての筆者の疑問はある程度答えを得ることができた。

1.必ずしも新医師臨床研修制度が悪いわけではない。

地方の公立病院の深刻な医師不足は、平成16年から導入されたこの制度によって大学の医局から医師が派遣されなくなったことが一因だ。筆者は単純に間違った制度を導入したのだからもとへもどせばいいのではないか、と考えていたが、どうやらそれは間違いらしい。

制度が導入される前から医局制度は行き詰っていたというのだ。若い医師は古色蒼然とした「白い巨塔」には魅力を感じず、医学博士ではなく高度な専門医の資格を取ることを望んでいるが、それは従来の大学病院ではかなえられず、医局制度はむしろじゃまになっていたようだ。制度改正によってアメリカのテレビドラマERのような世界がやっと日本にも登場するので、これは不可逆的な動きだという。

この流れを逆手にとって、意欲的な地方の公立病院は若い医師にとって魅力的な、しかもより実践的な臨床の経験を積むことができる研修プログラムを用意して研修医を惹きつけることにより、医師不足が解消の方向に向かっている、という報告があった。

2.民度が低い地域から医者が逃げる。

地方によって医師不足に陥る地域とそうでない地域があり、必ずしも全国一律で地方医療が崩壊しているわけではない。その違いはどこから出てくるのか。例として経営破たんした夕張市立総合病院についての発表資料から一部抜粋する。

●社会的入院の多さ
・入院患者の9割近くが70歳以上の高齢者
・医療的処置よりは介護業務が多い
・医師が医療を行う場面は少なく、技術の向上は期待できない
・若い医師はこのような病院には集まりにくい
●患者の全てが被害者ではない
・市民の中には治療費を滞納してそのままという人も多かった
・滞納額は2億円を超えた
・救急車をタクシー代わりに使う人も多かった
・介護に疲れたからと言って、救急車を使って入院する人が多数いた
・無診察投薬が当たり前のように横行していた
・病院は、このような人達に対して毅然とした態度を取れなかった
(城西大学伊関準教授の資料より抜粋。なお伊関氏のブログをご覧ください。
http://iseki77.blog65.fc2.com/  )

本日20日のNHK生活ホットモーニングで紹介されたように、住民自身が立ち上がり、コンビニ診療をやめない限り地域医療は再生しないだろう。医師や行政にお任せでは何も解決しない。これは地域医療に限ったことではないが。

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登録日:2008年 05月 21日 00:12:59

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Ryuichi Himori
(男)
ryuichi.himori@gmail.com
団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
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