指定管理者制度の正体見たり枯れ尾花
指定管理者制度の本の原稿もようやく完成の目処がつきつつある。
一方、今日は東京で弊社の業務用音響機器営業部門(文化ホールにミキサーやスピーカーを売り込むお仕事)の人たちに指定管理者制度について研修しなければならない。
今まで行政や文化財団、NPOなどでさんざん講演や研修をやってきたが、やっとお膝元からお声がかかったのだ。社外では有名人でも社内ではこんなものである。
それはさておき、民間企業のひとたちに指定管理者制度の説明をするときに気をつけなければならないのは、「制度」という概念に対する官と民の捉え方の違いである。
「制度とは、伝統、慣習、法律といったフォーマル、インフォーマルな規範の体系であり、それらは一定の行為パターンを作り出す」(一橋大学 谷本完治教授)というのが、意識的にしろ無意識的にしろ民間人が抱く概念だ。終身雇用制度、金融制度、結婚制度などが想起される。
だから「制度の変更」や「新たな制度」には、かなり大きな変更、社会的に大きな影響を与える変更というイメージがある。
ところが、行政の概念としての制度はたかだか法律とその運用についてのことに過ぎない。法律を少しいじることを○○制度と称しているのだ。
指定管理者制度は、民間から見ると、「管理に関わる業務を一括して発注できる委託先を拡大した」ということに過ぎない。今まで「公共団体」「公共的団体」「地方公共団体が二分の一以上出資する法人」に限られていたのが民間企業、NPO法人、法人格を持たない団体にも拡大しただけだ。管理者の持つ権限や裁量幅は、良く考えると何も変わっていない。だから、利用者から見れば施設の利用については何も変わらないし、施設に納入している業者から見れば、発注する管理者の名前が変わっただけだ。
民間(企業や利用者)にとってはそこが変わるかどうかが大きな変化であって、管理者がどこであれやれることが同じなら、制度変更といっても泰山鳴動ねずみ一匹だ。サービスの向上やコストダウンは管理者がだれであろうが(制度がどうあろうが)やればいいだけのことだ。
指定管理者制度は、民間委託を進めるにあたって障害になっていた地方自治法244条について、施設の使用許可が行政処分に当るところを議会の議決を必要とすることでクリアして改正したものだ。これを新たな「制度」と言っているのだ。民間(企業や利用者)にとっては使用許可が行政処分かどうかはまったく関係ない。相変わらず受付でおばちゃんが利用許可証にハンコを押してくれるだけで、そのおばちゃんの身分がどこの職員かは誰も考えていない。
これが指定管理者制度の正体見たり枯れ尾花である。
ただし、必ずしも法律には定められていない公募による競争やモニタリング、民間企業・NPOの参入によるサービスの向上、コストダウン、人材活用、地域の活性化などが起こると、その影響で公共施設の管理運営のありかた、ひいては地方行政のありかた、市民と行政の関係が大きく変わる可能性がある。そうなってはじめて制度が変わった、あらたな制度ができた、ということができるだろう。
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登録日:2007年 01月 10日 10:15:05
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