コミュニティの再生と社会参加のための教育について
さて、昨日の審議会で感じたことを2点、
1.コミュニティは「再生」ではなく「構築」だろう
昭和30年代に筆者が小学校時代をすごしたのは、東京の住宅街だ。80年前はサラリーマン向けの新興住宅地だったのだろう。小学生のころ、筆者が地域社会によって育てられたとか、コミュニティの存在を意識した、ということはまったくない。
確かに、あの子はどこの家の子だ、という認識は今よりあったかも知れない。でも、自治会は回覧板が回ってくるだけだし、子ども会もなかったし、地域の大人にしかられたという記憶もない。今の子より外で遊んでいたかも知れないが、遊ぶのは同世代の子だけ。そもそも少人数で遊んでいて集団で遊んだ記憶はない。
貧しくも助け合って生きてきたコミュニティは都会の住宅地には存在しなかった。農作業を共同で行なう田舎にはあったのかもしれないが、昔はどこにでもあった、というのは幻想にすぎない。
だから日本中が都市化した現在、コミュニティがないのは当たり前だ。過去に存在していたのは地縁血縁のコミュニティで、それはもともと田舎にしかなかったのだ。
だから今しなければならないのは、ノスタルジックなコミュニティの再生ではなく、自立した市民が自発的に集まる都市のコミュニティの新たな構築だ。日本も成熟した市民社会のコミュニティづくりを考えねばならない、ということだ。地縁血縁社会の復活ではない。
2.社会参加の教育
子供の社会参加の教育についていくつかの興味深い事例が報告された。共通して言えるのは、子供の社会参加は大人がお膳立てするものではない、ということだ。あくまでも、子供が自ら社会参加を意識することからスタートするのが大切だ。子供が自ら地域社会に興味を持ち、地域課題の解決を考えるようになるのをじっと待つのが社会参加の教育の真髄だという。大人はつい先回りしてお膳立てし、誘導しようとする。でもそれは間違いだ。子供自身に気づかせ、行動を起こさせねばならない。とても忍耐と高度な技術を必要とする教育で、成果主義にしばられた今の学校と先生には難しいだろう。報告された事例を見ると、子供たちが他人を思いやる感性と能力を持っていることがよくわかる。誘導しなくても自分で問題を発見し、自然にボランティアを志すようになる。
社会参加の教育の「仮想敵国」は、今の子供はぶったるんでいるから兵役の代わりに全員にボランティアを義務づけるべきだ、という考え方だ(ボランティアを義務づける、というのが言語的に矛盾するのだが)。
皆さんのご意見をお聞かせください。
カテゴリー[ キャリア教育・生涯教育 ], コメント[7], トラックバック[0]
登録日:2007年 01月 17日 00:53:47
コメント
徴兵代わりに1年間職場体験させる。豊洲のキッザニアなんて甘ちょろいもんじゃなく、おとなにまじって本物の仕事をさせる。義務教育9年のうちの一年間なんて短いもんだ。
BDPマスタ- @ 2007年 01月 17日 07:57:35
そうやって強制的に集団活動やらせると、要領のよさを覚えるだけだね。子供の成長には逆効果。
himori @ 2007年 01月 17日 18:21:46
コミュニティーが自然発生的に「生成」された人類の長い歴史から見ると、都会も田舎もコミュニティーの本質は変わらないのではないかな。その自然発生的なコミュニティーを、官が行政や統制のために利用し始めたところから様相が変化してきたのではないだろうか。
典型的なのは地域の自治会ですよ。現状は行政からの補助金があり、首長や議会議員の票田にもなっている持ちつ持たれつの関係があるので、なおさら始末が悪いと思う。
審議会で、県がもし「再生」という言葉を使ったのだったら、行政にとって都合のよい形態のコミュニティーにしたいという意図が見え見えだから、これは桧森さんの言うように自立した市民による「構築」とするべきだろう。
しかし私は敢えてコミュニティーは自然発生的な「生成」でよいと考えていますよ。官はもちろん民間によってでさえ、人為的に構築された街(開発型住宅地)にコミュニティーが「生成」されにくいことは、桧森さんが生まれ育った都会に限らず、地方都市でも事情は同じですよ。
それは集まった人々にとって「完成された住環境=ハード」が存在するだけで、どうやって楽しく充実した人生を助け合って生きていくかという、住民同士で築き上げた「人間の知恵=ソフト」が不足しているということではないかな。
macchan @ 2007年 01月 17日 21:16:26
macchanさんのおっしゃるとおりです。これからコミュニティが生成されるといいですね。それについて行政がやれることはほとんどないと思います。
himori @ 2007年 01月 18日 23:15:29
「都会の住宅地」というのが、ポイントではないでしょうか?さらにいえば、「住宅地」「団地」がコミュニティを構築していかねばならない地域です。私は、「構築」といわず、「創生」という言葉を使ってきました。
都会でも、城下町や門前町などがあったような古い地域における「住居地」はコミュニティがあったとされます。農村地域は、いうまでもありません。
コミュニティができあがるためには、時間がかかります。また、コミュニティというものは、歴史的にみても、必要性に迫られなければ、形骸化してしまいます。それを復活させるのが、「再生」ということになります。檜森さんのおっしゃるように、地域の絆もないような地域では、コミュニティの「構築」(「創生」)が正確な言葉でしょう。
その構築のために(あるいは元来コミュニティがあったところでは「再生」のために)、子どもの社会参加はひとつの手段でもあると考えます。子どものうちから、地域活動に参加してもらい、地域に興味をもつように教育する。昔は、社寺の「祭り」がありました。岸和田市の「だんじり」のように、祭り組織があり、その組織が地域における年齢層別の明確なヒエラルキーを構成している。これも、かつての子どもにおける社会参加の手段であったような気がします。
重要なのは、現在、子どもが社会参加を行うルートがないことです。社会参加のリクルートメントを、大人がしてやるべきかと思います。このような場が、コミュニティであり、開放型にしておくことが肝要だと考えます。
yoshi @ 2007年 01月 22日 00:27:55
Yoshiさん、構築より創生の方がしっくりきますね。子どもの社会参加のルートを学校やNPOが連携してつくる動きがあります。昔の子ども会とちがって、地域の枠を超えて好きなテーマごとに集る、というイメージです。こういうものが重層的にできるといいのですが。
Yoshi @ 2007年 01月 23日 13:11:18
上のコメント、名前間違えました。私のコメントです。失礼しました。
himori @ 2007年 01月 23日 14:52:01
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- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
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