「洗練による普遍性」地方再生のキーワード
佐渡からお酒が送られてきた。
どちらも「金鶴」の蔵元、有限会社加藤酒造店のお酒。
左側が金鶴純米酒「風和」。佐渡産五百万石使用、精米率55%。
右側が純米酒「拓」。たかね錦使用、精米率60%で「第77回関東信越国税局酒類鑑評会燗審査の部優秀賞」とある。
先日ここで紹介した「真野鶴」は、日本酒の進化を改めて認識させられるほどおいしかった。軽くフルーティーな吟醸酒ではなくこくのあるしっかりした味なのに、舌につきささるようなところがなく、飲みやすかった。
今度の「金鶴」も大いに期待できそうだ。
佐渡には昨年まで6つの酒蔵があったが、1つがやめてしまい、今は先日紹介した5つが残っている。それぞれ競争してお互いに切磋琢磨し、ネット販売や酒蔵見学ツアー、海外への販路開拓など努力している姿がたくましい。それも基本はうまい酒づくりへの真摯な取り組みだろう。
筆者は佐渡の酒蔵に文化による地方再生のキーワードを見る。それは「洗練による普遍性」の獲得だ。
地酒はもともとローカルに消費されていた。昔は2級酒に分類され、おいしいお酒とは思われていなかった。酒臭くべたべたと甘く重い味を覚えている方も多いと思う。一方大手酒造メーカーは設備を近代化して低コストで大量生産し、TVCMなどで売上を伸ばした。
取り残された地方の酒蔵は、ある時期から、原理的には昔からの製法を守りながら、米や酵母など素材を研究し、造り方を工夫し、どんどん味を改良していった。その結果それぞれの個性を出しながら昔とは似ても似つかない洗練された日本酒になった。日本の歴史上現代の日本酒がもっともおいしいと言われている。
日本酒の地酒はいまやそのおいしさが世界に知られるようになり、海外にもファンが多い。
洗練されて普遍性を獲得するのは文化・芸術に共通する現象だ。洗練とはその場所その時代にしか通用しないコンテクストをそぎ落とし、ひたすら本質を追求する作業だと筆者は考えている。その結果現れる本質は、時代・文化の違いを超えて理解できるものだ。
優れた芸術家の作品は本質を突いているから文化の違いを超えて理解される。しかし決して天才ではない平凡な人々に担われるローカルな芸能や工芸も、多くの人々の努力によって洗練され、普遍性を獲得する。料理や酒も同じだ。
地方にある芸能や工芸、料理、食材、酒はそのままでは単にその地方の人にしか理解されないローカルなものだ。しかしそこに人々の長い時間をかけた本質追求の努力・改善が積み重なることによって洗練され、普遍性を獲得し、世界の人々に理解され求められるようになる。地域に眠る素材を引き出し、それに磨きをかけるのが「洗練による普遍性の獲得」による地方の再生だ。
伝統をただ守るだけでなくそれに磨きをかける、つまりひたすら本質を追求し改良することが大切だということを、佐渡の酒蔵が教えてくれる。素材はまだまだたくさんあるはずだ。
・・・・・・・・・・・
インドネシアの民俗芸能「ケチャ」がドイツ人によって洗練の方向を示され、芸術になっていったように、洗練には外部の目や外の世界との交流や勉強も大切なのだということを、芸術・文化の歴史は教えてくれる。それは決して模倣や表面的な飾りではなく、本質を追求する上での刺激ではないだろうか。
カテゴリー[ 文化を考える ], コメント[1], トラックバック[0]
登録日:2007年 02月 07日 22:56:34
コメント
美味しそうな佐渡の地酒紹介に涎がごっくんですよ。
>洗練されて普遍性を獲得するのは文化・芸術に共通する現象だ。
という桧森さんの説に納得しながらも、日本酒ファンとしてはそうなってほしくない一面もあり。
この20~30年の商業ベースにのっかり普遍性を目指そうとしてきた日本酒メーカーは、蔵買いしてまで量産した灘や伏見の酒、ファンを増やそうと飲みやすさに迎合して水のようにして値段だけを高くしてしまった商売上手な酒蔵など、なんだかなーと思っていた。
ケチャがドイツ人に見出されて、よりファンを増やすために芸風を変えたか?
我が日本の能や歌舞伎が国立劇場で上演されることがあっても、芸風を変えたか?
フランスやイタリアのワインメーカーが、より多くのファンに受け入れられるために酵母や水まで変えたか?
日本酒が生き残るために、皆同じテーストになびくことはまずい。情報が発達しTQC活動で生き残ってきた日本メーカーが陥りやすい落とし穴だ。
でも7万人にも満たない人口で5メーカーが生き残ろうとしている佐渡の酒蔵については別格だろう。杞憂だろう。
ブログコメントで講釈たれているよりは現地に行って自分の舌で味わい、うまいものはうまいと評価して継続してファンになることが文化の下支えになるのだろう。
macchan @ 2007年 02月 08日 22:49:45
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