アートマネージメントについて考える(その1)

今日は会社にアートマネージメントを学んでいる二つの大学の学生さんと先生が合同でお見えになったので、工場見学のあとで「企業と地域文化」についてお話しした。
長い年月の間に企業がどのように地域文化の形成にかかわってきたか、という内容だが、中身は筆者が文化経済学会の学会誌「文化経済学」第4巻第4号(2005年9月)に書いた論文の通りなので、興味ある方はそちらをご覧いただきたい。
さて、今年はアートマネージメントについて本を書くつもりなので、いろいろ考えているのだが、どうもこの言葉に一番無縁なのはアーティスト自身のような気がする。
一流のアーティストになればなるほど、言葉すら知らないだろう。1回のギャラが5千万円のパバロッティ(写真の人)や、自分をマネージメントする会社を日本に持っているヨーヨーマからすれば、「何それ?自分のマネージメントやってくれる人のこと?」と思うのがおちだろう。
アートマネージメントという言葉を知っているアーティストでも、その言葉に対するイメージは「奇特な人たちがいろいろやってくれること」という程度だろう。プロのアーティストから見ると、「それで食ってるわけではないアマチュアの人たちのやっていること」ということになる。
アートを創造するためには、アーティストの周辺に様々な職能の専門家がいる。プロデユーサーやディレクター、ステージマネージャーや音響・照明技術者、マネージメント事務所のマネージャーなどそれで食っている専門家だ。しかしアートマネージメントはそのような職能としてアーティスト側から認知されていない。
それはなぜかと考えると、ほとんどのプロのアーティストは自分自身の創造・表現と成功(金銭的も名声も)にしか興味がないので、芸術の社会的意義などはよっぽど功成り名を遂げなければ考えないからだろう。自分たちのまったく私的な営みに公共性があると言われても本人は困ってしまう。
だから「芸術と社会を結ぶアートマネージメント」と言われている概念は視野に入ってこないのだ。芸術はアーティスト本人にとっては(その動機は別として)個人事業主としての営利事業だ。(村上隆さんのように会社を持っている人もいるが)
それでは、アートマネージメントを志す人はアーティストとは無縁の存在として活動し、おせっかいな奇特な人と思われていればいいのか?それともアートマネージメントの概念とは異なる個別の専門家として食えるようになればいいのか?
コンサートや音楽イベントの企画制作・プロデュースを仕事とする筆者にとって、この問題についてのわかり易いスタンスは、フィリップ・コトラーとジョアンヌ・シフの著書『Standing Room Only』(HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)に示されている。
「Strategies for Marketing the Performing Arts」 という副題のついたこの本は、「A complete and up-to-date sourcebook of marketing strategies and techniques for music,dance,opera,and theater organizations,Stannding Room Only is an indispensable tool for performing arts managers,marketers,fund-raisers,educators,donors,corporate sponsors,and consultants.」ということだそうだが、内容は早い話、どうやってチケットを売るか、ということだ。本の題を意訳すれば『完売御礼』ということか。
日々集客やチケットの販売に苦労している筆者としては、「アートマネージメントの本質はこれだろう、つべこべ言わずにチケットを売れ!客を集めろ!」と思うのだが、この分野を研究している方々はどのように思われるだろうか。ひょっとしたら「それを言っちゃーおしまいよ」ということなのか?
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登録日:2007年 02月 15日 00:52:19
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- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
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