知事のモラルハザード
筆者の住む県では、平成21年3月の開港を目指して空港の建設が進んでいる。
福島空港、松本空港など何かと話題の地方空港だが、バブルのころの計画が20年たってやっと目処がついたということで、既に時期を逸している感がしないでもない。なぜ、まだ完成していないことを幸いに、20年間の経済情勢の変化を反映して計画を見直すことができないのだろうか。(当然県民にも責任がある)
先日テレビを見ていたら、知事も出演して空港問題の討論会をやっていた。
その中で知事が次のような発言をしていた。「建設費の500億円はインフラだから回収しなくていい。採算は建設後の維持費の問題だ」(本当は周辺整備も含め17年間で1900億円)。
それに対して討論者の慶応大学の中条教授が「その考えは困る。500億円の建設費は県民だけではなく全国の納税者が負担した。全国の納税者は、過疎の離島なら空港建設負担もやむを得ないが、豊な県の空港をなぜ自分達が負担しなければならないのか、と考えるだろう。空港が充分に活用されない場合、維持費の赤字だけでなく建設費も含めて県民が負担するくらいの覚悟が必要だ。その覚悟は県民にあるのか」と噛み付いていた。それに対して知事は要領の得ない答えをしていた。
起債して元利償還金を交付税でもらったり、補助金をもらったりで知事の念頭からは建設費を全国の納税者がまかなっているという観念が完全に欠落している。空港はとりあえず国から与えられたとしか思っていなかったらしい。それをモラルハザードと呼ぶ。
知事はさらに「年間維持費は5億円で県の大型複合文化施設より安い。赤字になっても大したことはない」と言って「いや5億円は大したことないとは言えないでしょう」と中条教授にたしなめられている。
ある地方新聞に載った航空会社幹部の話を引用する。
「開港時は国交省や自治体から圧力がかかるから、何とか飛ばすが、半年もすれば(客数)のメッキがはがれ、便は切ることになるだろう。神戸空港がその典型だ。離島なら使命として守るが、恵まれた所は赤字補償されてもお断り。せっかく新調する機材をそんなことに使う余裕はない。うちがつぶれてしまう」。
このような姿勢の民間の航空会社と知事と、どちらが公共性を考えていると言えるだろうか。
カテゴリー[ 行政経営 ], コメント[4], トラックバック[0]
登録日:2007年 02月 22日 17:02:39
コメント
桧森さんと同様、我が県の航空行政の将来性には???です。現県知事は前任者から引き継いだという使命感と、一族の建設業界に配慮して推進派に回っていると思われますが、桧森さんの書いている通り何度も見直し機会があったはず。
今回の空港建設推進も積極的賛成より、ここまで進んだら引き返すのにも金がかかるからしょうがないか?のスタンスが多いのではないか。
そもそもこの国には、航空行政に限らずあらゆる行政に国のグランドデザインがなさすぎではないか。主たる国際空港をどうするか、それにつながる地方空港をどうするかなど、空港のグレードだけはつけるものの相互関連のネットワーク構想など無きに等しい。
首都圏の拠点である、あの成田空港と羽田空港の位置づけでさえ未だ明確でないように見える。それをとりまく地方空港など補助金は出すけど、どういう位置づけで開港させるのか国のポリシーはまったく見えない。
結果松本空港、福島空港、神戸空港など犠牲者ぞろぞろではないか。わが静岡空港も国の政策が見えないまま、民営にすればなんとかなるというトレンドに流されて付けが住人に回ってくるような気がしてしょうがない。
macchan @ 2007年 02月 22日 19:48:55
macchanさん、やっとコメントが見れるようになりました。
国のポリシーは、平成14年の交通政策審議会の航空分科会の答申に出てますよ。ところがその概要は、
1.地方空港の整備は進んだが、大都市圏の整備が遅れ、地方から大都市への路線拡充ニーズに対応できていない。これからは大都市圏に重点を置く。
2.広域的な航空ネットワークの形成と関連のない地方空港についての国庫補助負担金の廃止・縮減。
3.過大な需要予測を廃し、制度の高い科学的な需要予測にもとづく政策を進める。
ということで、国はとっくに舵を切っているのにだらだら続けた責任者出て来い!という感じです。
himori @ 2007年 02月 27日 23:42:55
昨日、滞っている投稿分コメントが表に現れるように、冗談で 「押し出されるように」と願ったところ、見事に?開通しました。めでたし?、めでたし!
桧森さんお勧めの、「平成14年の交通政策審議会の航空分科会の答申」 を見てみました。真面目な?官僚は実直に研究調査してそれなりに正論を?まとめているのですね。
すると、調査研究を命じた政治家(首相、閣僚、議員、知事など)が有機的な議論をせずに国益にかなった結論を未だに出していないということ。
そういえば、当時の扇国土交通大臣が 「羽田を拡張して首都圏国際空港にすればいい」 という意味の発言をぶらさがり記者に話していましたね。唐突感があって、そのときは理解できませんでしたがーー。
ことほど左様に政治家の誰もが、国を憂いて大局から物言い祖国の将来政策につながる働きをしてこなかった、ということですか。また大局観で時勢をとらえキャンペーンをうつマスコミもない、ということですかね。
要人発言の揚げ足をとって政局にする政治屋や聞屋(ぶんや)、それに拍手喝采を送る国民は多いんだけどね。
macchan @ 2007年 02月 28日 22:53:06
macchanさんがコメントしてくれているはずですが、アップされませんね。
himori @ 2007年 03月 01日 22:32:14
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- ryuichi.himori@gmail.com
- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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