六本木のライブハウスでアートとお金について考える

ここは六本木のジャズのライブハウス。
今日は昨年秋にCDを出したばかりの新人女性ジャズ歌手の初ライブ。
ライブは客の反応がダイレクトに伝わり、失敗もできないので歌手の緊張感は録音とはまったく別物だ。まずまず無難にこなし、客の受けもいいようだ。なんといっても美人歌手なのでお客のおじさまたちも暖かい拍手と声援を送っている。
ジャズ系のミュージシャンのマネージメントは大きく分けると音楽事務所系(自分の事務所を含む)、セルフマネージメント系、タレント事務所系、の3種類に分かれる。
今日の歌手は3番目。事務所がこの子はジャズシンガーをきっかけに売ろう、と決めて作りこんでいる。プロについた1年間の厳しいレッスン、編曲・レコーディングやライブのバックには一流のミュージシャン、ライブでのトークや立ち居振る舞いも練習の跡がうかがえる。
途中で飲むペットボトルの水のラベルをはがしてあるなどはプロとして当然の配慮だ。どこでスポンサーがつくかわからないのだから。事務所の戦略は阿川泰子路線のようだ。つまりジャズシンガーで売り出してCMやTV出演などタレント活動に広げたいらしい。
今日のライブハウスにやけに背広にネクタイのおじさんが目立つのも、事務所の社長が広告代理店やレコード会社、マスコミ関係を目一杯呼んでいるからだ。ライブハウスの飲み食いもすべて事務所持ち。さてこの中の何人がこの子を使って見ようと思うだろうか。自分たちもプロなのだから見る目は厳しい。
いずれにしても、お金をかければここまで来ることはできる。しかし露出が進んだとき、本当に人々の心を捉えてブレークするかどうかは本人の才能と努力次第だ。人々を感動させたり癒したりすることができるかだ。それが欠けていればどんなにお金をかけて売り込んでも先へは進まない。マーケティングは大切だが、お客の大衆は最もシビアな批評家であり、長い目で見れば、仕掛けに乗ってだまされることはない。
アートの価値はお金では測れない。しかし現代の資本主義市場社会におけるアートの世界は、もし人々が感動したり癒されたりすれば、お金が後からついてくる。もしアーティストが食えないとすれば人々に与える感動や癒しが足りないのだ。シビアな言い方をすれば、アーティストとしての実力がない、ということだ。アーティストも、誰かが売り出してくれるチャンスさえあればすべてうまく行く、というものではない。
孤高の世界で自己満足のアートを極める、というのなら話しは別だが、アーティストは自分のアート(技)を人々に受け入れてもらいたいはずだ。一人でも感動すればアートかも知れないが、アーティストはもっと多くの人を感動させたがっている。そしてそれはマスメディアの仕掛けなどによって実現するような単純なものではない。仕掛ける側がそこを勘違いして失敗した例は推挙にいとまがない。
それにしても、今日の歌手は美人で花がある。応援しよう。とつい芸能界モードになってしまうおじさんなのである。
カテゴリー[ アートマネージメント ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2007年 02月 27日 01:43:15
コメント
世の中には芸術家、芸能人、芸人とよばれる一芸に秀でた人たちがいるように認識していました。ジャズシンガーは芸術家か芸能人かわかりませんがプロモーションの舞台裏がよく取材解説されていて、興味深かったです。
これが限りなく芸能人の発掘となると、もっとドロドロした人間模様が繰り広げられるのかな?想像ですが。
多くはルックス(美人か美男か、華があるかなど?)で決められ、芸はあとで仕込むということになるケースが多いと思われますが、ルックスは好き嫌いの問題があるけど、この芸の部分がどうしようもなく、なんでこれがと思われるものも結構いますよね。
一回売れてしまうと芸のないまま何年もTV画面にたびたび現れ、本人も人気があって金がついてくるものだから、若くて勘違いしている人のなんと多いことよ。視聴者も人気芸人だと批判的に見聴きしないのでますます野放図状態になる。
今日は得意分野ではないのでこれくらいにしときますが、前回のコメントが表にあらわれないので、これで押し出されてくるといいんだけどーー
macchan @ 2007年 02月 27日 20:13:34
macchanさん、ジャズシンガーで売り出そうと思うとそうとう練習しなければならないし、アイドルの20倍くらいレパートリーを持たなければならないので大変です。でもその分長持ちさせよう、という戦略のようです。テレビはごまかせてもライブはごまかせませんから。ただ、今回の場合最初から本人が志したわけではないところが普通のジャズミュージシャンとはちがいますが。
himori @ 2007年 02月 27日 23:54:22
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- ryuichi.himori@gmail.com
- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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