レクチャーコンサートはなぜ失敗するか?
ジャズウィークも本日のジャズフェスティバルで無事終了。
4日連続の打ち上げがこたえているが、その話はいずれ書くとして、今日は金曜日に行われたレクチャーコンサートについて。
タイトルは「佐山雅弘ジャズレクチャーコンサート“ビバップからモードへの変遷、その1 ビバップ探求”」。ピアノの名手にして理論派の佐山雅弘さん、人気最高のドラマー大坂昌彦さん、作曲も手掛けるベテランベーシスト小井政都志さんのトリオによる贅沢なレクチャーコンサートである。
内容は台本の一部を紹介しよう。
「このように既成曲のコードチェンジに八分音符主体の新しいメロディラインをつけて新曲にする、というのも随分とあります。一番有名なのは “How High The Moon" から “Ornithology" by Charlie Parker (ワンコーラスずつ弾く)。」
読むと固そうだが、これを佐山さん独特の柔らかな関西弁で、弾きながらわかりやすく説明する(当然関西人のぼけとつっこみがある)。それに大坂さんがリズムの変遷を実際にドラムをたたいて解説したり、実に説得力がある。
さて、このブログのタイトルは「レクチャーコンサートはなぜ失敗するか?」だが、その理由はこのレクチャーコンサートの逆をやっているからである。
その1:初心者を対象にするから失敗する。
そもそも、興味のない人はレクチャーを受けない。来る動機がない。別に教えてもらいたいと思っていない。レクチャーに来るのは興味のある人だ。興味のある人はそれなりに勉強もしている。だからそれ以上の知識がほしいのだ。それを超初心者向けにしたら不満が出る。
逆に言えば、初心者やあまり興味のない人を対象にレクチャーコンサートをやっても人はこないし効果はない、ということだ。好きな人を対象に、ますますマニアックな世界に引きずり込むのがレクチャーコンサートなのだ。だから主催者がレクチャーコンサートを地域への芸術文化の普及を目的にやると失敗する。
その2:レクチャーこそ超一流の演奏者を。
学者や評論家が解説して演奏者が実演しても何にもおもしろくない。演奏者が音楽の違いをどのように捉え、表現しているかが重要だ。われわれに聞こえるのは演奏なのだから。その違いを弾きながら語ってもらえば説得力がある。紙の上の知識としてのレクチャーはいらない。
ところが大坂さんも言っていたのだが、話しながら演奏するというのは演奏家にとってものすごく難しいことなのだ。何しろ頭の中できちんと組み立てておいて演奏するので、話すと崩れてしまうのだ。クラシックの演奏家が暗譜してさらにどう弾こうかあらかじめ考えておいて演奏を始めるのと同じで、その前になんかしゃべって解説せよと過酷な要求をしているのがレクチャーコンサートなのだ。よっぽど力量がなければできないことだ。だから超一流の演奏家が必要なのである。それに超一流の演奏家は音楽の歴史や理論の捉え方でも超一流である。なぜならそれを超えようと思っているから。
レクチャーなのだからその辺の地元の先生に弾いてもらおうと思うと失敗する。
その3:大切なのはユーモア。
レクチャーコンサートにとって最も大切なのはユーモアの要素だ。演奏が細切れになる以上、語りの部分でエンターテインメント性を発揮しなければ、どんなにお勉強になってもお客様は退屈してしまうし頭に残らない。そのためにどうするか。
写真は佐山雅弘トリオの入念なリハーサル。ここでレクチャーで伝えたい内容とそれを表現する演奏をきちんと組み立てるからこそ、本番における佐山さんの軽妙なトークが可能になるのだ。左側の五線譜白板には解説用の譜面をあらかじめ書き込んで準備している。ぶっつけ本番からユーモアは生まれない。人を笑わせるにはそれなりの準備が必要だ。
準備を怠ると失敗する。
よく公共ホールの人からレクチャーコンサートの相談を受けるが、普通のコンサートより安易に考えている人が多い。以上述べてきたように、普通のコンサートより難しいのだということを理解してほしい。レクチャーコンサートでは、「話はいいからもっと演奏を聴きたかった」というお客様が必ず現れる。その人たちをも黙らせる内容にしなければならないのだから。
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どうすればいいのかわからない方は筆者にご相談ください。
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登録日:2007年 06月 17日 23:16:40
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- ryuichi.himori@gmail.com
- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
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