建築家のギミックとホールの現実 その1

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建築家が考えたホール運営と現実のホール運営の違いを実例で紹介する。

その事例とは、2004年4月8日から10月11日まで静岡県浜松市で開催された、しずおか国際園芸博覧会、通称「浜名湖花博」での出来事である。会場は浜名湖畔に整備された「浜名湖ガーデンパーク」で、博覧会の仮設パビリオンだけでなく、公園としての恒久施設も整備された。そのひとつが、1000席の野外劇場「水辺の劇場」であった。

1.設計段階

この劇場は屋根付きの舞台とテント屋根に覆われたベンチシートの客席を持ち、劇場の背後には運河が流れている。劇場の背面は4枚のスライディングドアで開放できるようになっている。開放すると、舞台と同じつらで運河側に屋根のない舞台が張り出している。

設計段階の打ち合わせで、設計者は筆者に対して、劇場のコンセプトは開かれた劇場、周囲の花と緑、水の環境と一体になった劇場であり、舞台背面を開放することにより「客席からも運河側からも、ステージの出し物を見ることができる」「開いた状態で運河の景色を借景とする出し物ができる」「閉じた状態で、客席側と違う出し物を実施し、運河を通る遊覧ボートや対岸の広場から見ることができる」などと説明した。施主である県はこの設計を非常に気に入っているということだった。

2.試奏会

筆者はこのホールの完成後、試奏会及び音響テストを依頼された。半野外の劇場として、音響テストでは背面の開閉による音への影響はそれほどなかった。試奏会は地元のアマチュア吹奏楽団を起用し、関係者やその家族800人ほどに観客になってもらい、観客、指揮者及び演奏者、専門家の3グループで音を評価してもらった。ここでも背面の開閉による音の影響はほとんどなかった。むしろ背後の景色が見えることによる視覚的な解放感を評価する声が多かった。

ただし、吹奏楽団の演奏方向を180度回転して、運河及び対岸に向けて演奏した時には、「BGMとしては聞けるけれども鑑賞に値するほどは聞こえない」という観客の声が大半だった。また、持込の簡易PAスピーカーを運河側に向けて司会者が話す実験では、対岸では声はほとんど聞き取れなかった。

なお、試奏会の実施時期はオープンの9ヶ月前であり、バトンや照明器具は設置されていなかった。この時判明した設計上の問題は、客席両横の上部から雨が舞台上に吹き込む、というもので、その後テント屋根形状の改善が図られた。

続く・・

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登録日:2007年 07月 12日 10:54:55

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プロフィール
Ryuichi Himori
(男)
ryuichi.himori@gmail.com
団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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