建築家のギミックとホールの現実 その3

4.ついに実現
筆者はこの博覧会で12回のコンサートを企画し、実施した。
筆者のそれまでの仕事は、主催者である公共ホールからの依頼に基づいてコンサートを企画することであり、その場合筆者としてはそのホール独自の機能があれば、一度はそれを徹底的に使ってみることを自らに課していた。6月29日の記事に書いたグランシップでも、実は筆者の企画したイベントでコーンに照明やレーザーをあてる演出を試みている。
自分が企画するコンサートでは、一度は背面開放を使おうと考えていたが、博覧会も終盤に差し掛かった9月30日にチャンスが巡ってきた。この日は筆者が企画したエレクトーンとボーカルのコンサートで1日2回公演。他に出し物は入っていなかった。
筆者はコンサートの途中で背面を開放する演出を考えたのだが、大手広告代理店側の舞台監督は強硬に反対した。安全に責任がもてない、と言うのだ。これには主催者である県(博覧会協会)の担当者も同調した。
設計段階では賛成していたはずの発注者(県)が反対するのも変な話だが、当然建設と運営では担当者が違うので、良くあることなのだ。
なんとか説得してやることになり、黒ホリをはずして土嚢をどけ、ロックをはずす。ところが、1回目の公演は風が強くてやむなく断念。そして2回目の公演。何かあれば全て筆者が責任を負うということで最終的に主催者や大手広告代理店側に納得してもらい、いよいよ実現へ。
エレクトーンのイントロが流れると、するすると舞台背面の扉が開き、運河の景色を背景に、シルエットになった女性歌手がチャップリンの名曲、スマイルを歌いながら入ってくる。どよめく観客。それがやがて拍手と歓声に変る。
結局189日間の会期中、背面が開けられたのはこの1回だけ。たった1回のどよめきと歓声のためだけに造られた、扉の開閉機構だった。
もし、筆者がホールを計画するのであれば、このようなギミックにはお金を使わない。ホールの基本的な機能を高めるために、他にいくらでもお金をかけるところはある。建築家が考えるような、建物に付随した演出のための機構は、ほとんど使われないのが現実だ。
ホールを建てるときは、この事例をひとつの参考にしてほしい。
カテゴリー[ 文化ホールについて ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2007年 07月 12日 14:39:55
コメント
そうですか。花博野外ホールのイベントにも関わっていたんですか?
私事ながら、このホールで会期中催された数々のイベントの一つである、「三遠南信音楽祭」に浜松男声合唱団で出演しました。もちろん背面は閉じていましたが、素通しの運河を背景に「森の歌声」なんか歌いたかったですね。もっとも背面がないとアカペラの合唱曲なんか、場所によってはほとんど聞こえなかったかもしれませんね。檜森さんの言いたかった趣旨がはずれて、能天気発言ですみません。
macchan @ 2007年 07月 12日 21:23:14
macchanさん
背面を開けたらアカペラの合唱は返しのモニタースピーカーを使わないとご自分たちの歌声が聞こえなかったと思います。
でも見ている人たちには景色がよくて歌にぴったりで良かったかもしれませんね。
himori @ 2007年 07月 13日 00:20:51
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