ジャパン・クールの源流をさぐる:その3

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画像は大友克洋作「AKIRA」

ブレードランナーが公開されて5ヵ月後、ジャパン・クールの旗手と言われる漫画家で映像作家の大友克洋によるコミック「AKIRA」の連載が始まった。両方を同時代にリアルタイムで見た筆者には、「AKIRA」はブレードランナーの影響が色濃く感じられた。

その後シド・ミードは80年代の東京で様々な仕事をし、日本のクリエーターに更に影響を与えることになる。六本木にあり、シャンデリアの落下という不幸な事故を起こしたディスコ「トゥーリア」のデザインもシド・ミードだった。
ジャパン・クールとの直接の関係では、機動戦士ガンダムシリーズのひとつ、ターンAガンダムのキャラクターデザインも有名である。

このように、ジャパン・クールは、日本の社会とテクノロジーの影響を受けた欧米のSF・映像作家の普遍性のある作品に影響を受けた日本人のクリエーターによって生み出されたのである。それは、そのような日本社会にどっぷり浸かりながら欧米の作家の影響を受ける優位性である。

欧米の作家に見出された日本の驚異とは、単にテクノロジーと伝統的社会の並存だけではない。テクノロジーが生活の隅々にまで行き渡っていることが驚異だったのだ。
ハイテクがまず軍事に応用される欧米と異なり、日本ではハイテクはすぐに民生用に使われ、大量生産でコストが下がってさらに普及する。
しゃべる自動販売機など日本人にとって当たり前のものが、驚異なのだ。例えばパチンコは高度なハイテク機器である(弊社の音源半導体も使われている)。そこに欧米人は未来社会の姿を見る。

だから、ジャパン・クールのクールとは決してスマートで洗練されたものではない。いかがわしさ、猥雑さを含むアジア的混沌と、日常生活に浸透する高度なテクノロジーが、欧米の文化にないクールなのだ。

例えば、もし秋葉原の再開発がこぎれいなオフィスビルが生まれただけだったら、海外から見向きもされなくなっていただろう。そこに生まれたメイド喫茶こそが、秋葉原の救世主なのだ。

このような欧米の価値観を土台として生まれてくる日本人の作品が重要だ。だから本日の日本経済新聞「今を読み解く」欄の記事「自由が生んだジャパン・クール」と「停滞の突破口は交流」はとても重要な指摘だ。

もし、政府が文化政策としてジャパン・クールを振興したい、あるいはファンドビジネスがジャパン・クールに投資して利益を得たいのなら、この記事の指摘にある「表現や規範の自由」が重要なコンセプトである。リュック・ベッソン監督のSF映画「フィフス・エレメント」(1995年)に登場する、ちょうちんをぶらさげ自在に空中を飛び回るうどん屋の屋台のような自由さが、私たちの社会に必要だ。

この日経の記事では「日本の作り手の独創性は停滞期に入った」と指摘されているが、そのような自由で融通無碍な社会が持続すれば、欧米の作家を再び刺激し、そこから生まれた作品が日本人クリエーターに影響を与えて、元祖ジャパン・クールを再び生み出すだろう。

そのような社会は、誰かの言う「美しい国」の対極をなすものであると筆者には思われる。
・・・・・・・・

蛇足ながら、確かに韓国、中国では近代的な高層ビルとアジア的混沌が並存している。しかしまだまだ庶民の日常生活の中に欧米を凌ぐハイテクが浸透していない。文化創造の世界では、まだ日本に一日の長があると思われる。

カテゴリー[ 文化政策 ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2007年 07月 22日 21:56:41

コメント

通りがかりの者ですが、「ジャパンクール」についての3回の連載、とても面白く拝見しました。なかでも最終回の最後の一文にはしびれました。まったくその通りですね。ありがとうございました。

田中信彦 @ 2007年 07月 22日 22:23:57

田中信彦さん
コメントありがとうございます。
同じ人の口から「美しい日本」と「ジャパン・クール」という言葉が両方でると、とても違和感を感じます。
これからもぜひお越しください。

himori @ 2007年 07月 23日 22:56:03

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Ryuichi Himori
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ryuichi.himori@gmail.com
団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
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