業務日報
このブログについてある方から、「仕事の動静がおもしろい」という感想をいただいた。
そこで今日一日の仕事を日報風に振り返ってみることにしよう。
10:00~
地元の私立高校音楽科の先生来社。来年の音楽科の定期演奏会企画についての相談。
彼は若くて熱心な教師だが、才能ある作曲家・演奏家でもあり、以前一緒に仕事をしたことがある。このような卓越した才能・技術を持った人が情熱を持って教えるのだから生徒は幸せだ。若いのに、「靴のかかとを踏むな」というような生徒指導もきちんとやっている。
創作活動と教師としての仕事の間で悩むこともあったようだが、以前、やはり一緒に仕事をした現代美術家の椿昇さんが彼に対して「教えることで創作のインスピレーションを得ることができる。がんばって両方続けることがプラスになる」とアドバイスしているのを聞いたことがある。椿さん自身現代美術の世界で国際的に高い評価を受けながら、長年ある私立中・高校の美術教師をしていた。経験に基づく説得力あるアドバイスだ。
11:00~
地元の県立公園を会場に開催されるアートアンドクラフトフェアの企画制作を担当しているマスコミ系イベント会社の社員が来社。弊社の協賛内容について打ち合わせ。
この社員は最初弊社広報部に持ち込んだが、けんもほろろに断わられた。それは当たり前で、全世界でマーケティング、広告宣伝を展開している弊社にとっては、本社所在地とはいえ一ローカルマーケットに過ぎない当地で、ブランドや商品イメージの向上のために協賛しろといわれても、何の意味もない。
この件は別ルートで筆者のところに回ってきた。筆者が言ったのは「もし、このフェアに協賛することが、社会貢献の一環としての地域文化貢献になるのなら、協賛にやぶさかではない。しかしそのためには、弊社が協賛することによりフェアの内容が充実するような企画が用意されねばならない」そして具体的に、弊社提供ということで会場内に野外ステージを造って、アートアンドクラフトにふさわしい音楽をやったらどうか、という知恵をつけた。
今日はそれに対する回答(コンサートの内容)を持ってやってきた。企業に協賛を依頼するときは、なぜその企業が協賛しなければならないのか、その理由をよくよく考えて提案してもらいたいものだ。
13:30~
市の文化施設の会議室で行われた市文化振興ビジョン策定委員会に出席。
県の文化政策審議会と比べると、市の方がより具体的で市民にとっても身近な内容を議論することになる。今日のテーマは「市の音楽文化の展開について」 1981年に市がはじめて基本計画に「音楽のまちづくり」を掲げて以来、それがいまどうなっているかの確認からスタート。座長からは「豊かな市民生活実現の視点」と「都市間競争を勝ち抜く視点」というふたつの議論の枠組みが示される。
率直に言えば、議論の内容は委員のレベルによって二極化している。豊富な知識を元にビジョンや戦略を語る委員もいれば、素朴な感想めいた意見を言う委員もいる。学識経験者や経営者もいれば公募市民もいる、若い人もいれば現役を退いた年配の人もいるのでこれはしかたがない。効率は悪いが、独りよがりにならずにわかりやすいものを創るためにはかえっていいのかもしれない、という感想を持った。
18:30~
前回の記事で書いた絵本カーニバルの実行委員会。場所は委員の一人の大学の先生の研究室。
大学生や院生がてきぱきと実務を進める発言もあれば、アーティストが思いや人生を語る場面もあってなかなかおもしろい。「大人の学園祭」の乗りである。企業の仕事と比べればいらいらするが、これもこのような活動には必要なプロセスなのだ。
さまざまな思いを持った人が任意に集まってひとつのイベントを作り上げようとしている。売り上げや利益という絶対の目標がないし、組織の指揮命令系統もないのだから、参加者の納得とやる気をひとつひとつ束ねていかなければ進まない。
団塊の世代の企業退職者は、このような物事の進め方に果たして耐えられるだろうか?
20:30~
参加者のうち大学の先生と市職員の3人で食事しながら意見交換。このような時間が実は大切なことは言うまでもない。
以上日報終わり。
(なお、勤務時間は8時15分から17時である。管理職のため、残業代はつかない。)
カテゴリー[ 今日のお仕事 ], コメント[4], トラックバック[0]
登録日:2007年 08月 29日 23:48:44
コメント
桧森さんを、絵本カーニバルのいらいらする実行委員会の席に座らせてしまいました。誰もが腰を浮かせているような数回をすぎ、それでもこのプロセスが大切だとおっしゃってくれて「流石、桧森さん!」と。この現場を作れたのが絵本カーニバルの見えない力、効果だと思えてなりません。
アートの現場でよくある「好きなもの同志でやればいい」「分かったもの同志でやればいい」の発想で開催もできましたが、それでは私は動けないです。
企業でプロジェクトで仕事をする経験をしました。社内から全く別の職種の社員が集められ(どちらかというと、その部署で良い意味でツマハジキにされたメンバーだっと後に聞きました)事業を創り実施しました。すべて成功はしませんでしたが、この思考回路が異なる人たちの集まった発想力は凄かった。
その現場は、柔らかく言えばしんどくて、泣いて、笑って・・でしたが。
絵本カーニバルの実行委員も思考回路は異なり、実力もバラバラです。デコボコ状態、つまり多様、多様性を受け入れる現場になっていると。
グローバル化、多様性を受け入れる社会とか上滑りのように世間で言われていますが、本当は忍耐と謙虚さと理解と想像力がないと実現できないわけです。幸い実行委員の方々はその辺りをわかっていらっしやいますので、この多様性から新しい発想がきてきて、面白い「絵本カーニバル」になりますね。よろしくおねがいします。
団塊の世代の退職者が、このような場で活躍きるかどうかは、今までの価値観から離れられるかどうかだと思います。それが分からなければ自分の経験と知識のみで活躍してくださるでしょうし。ただ生意気ですが、先に豊かに生きること、死ぬことを考えると、団塊の世代に限らず中年からの第二の思春期を向かえる人たち、共通の課題だろうと思います。長寿の時代を生きる現代人は生き方、死に方も大変です。
それと、文化政策振興ビジョン・・・委員会で出ていた「都市間競争に勝つ」
とは、どのような競争で、勝つとは何をもって勝ちになるのですか?世界に名前が知れ渡るとか、観光客が押し寄せるとか経済的なことですか。文化政策を進める上での戦略として必要なことですか。
あここ @ 2007年 09月 01日 13:15:59
あここさん、コメントありがとうございます。
絵本カーニバルは、絵本、デザイン、会場の登録有形文化財旧銀行協会と三拍子そろっていますから、参加している委員の誰にとっても面白いと思いますよ。メンバーも多様性があって面白いし、若い人たちには学びの場にもなっていると思います。もちろんこちらは対等に考えているので何か教えようとは毛頭思っていませんが。
中年になればなるほど自分がとらわれている価値観を自覚しなければなりませんね。
都市間競争については、近々本文に書きます。都市が競争によって衰退するのを防ぎたい、という考えのようです。衰退する、というのは昔人口6万5千人いた旧天竜市のようなことを指していますが、果たして都市は競争で衰退するものでしょうか?
himori @ 2007年 09月 03日 23:25:27
あここさん、桧森さん、こんにちは。
絵本カーニバルは、本当に面白い感じになってきましたね。
今後は、この面白さをもっと多くの人たちに伝染させる方法を考えましょう♪
都市間競争と言う言葉、古くないですかぁ?
都市間協奏ならわかるけど。
元々、全市長のお気に入りで、H市の○○計画などあちこちに出てきますけどね。
言わんとするところはわからないでもないけど、一人勝ちすればいいというか
勝ち組、負け組の発想と近いような気がします。
姑息な感じがしますね。
フラニー @ 2007年 09月 05日 00:11:14
フラニーさん、コメントありがとうございます。
都市の衰退を人口の減少とするなら、その原因は競争でもなんでもなく、その都市の人口の多くを養っている産業の動向によるものです。それを競争ととらえてがんばれば何とかなるように思うのは幻想だと思います。詳しくは記事で書きます。
いずれにしろ、行政の言う都市間競争は市民にも、文化芸術にも関係ないのでほっとけばいいと思います。絵本カーニバルがんばりましょう。
himori @ 2007年 09月 06日 11:33:45
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- Ryuichi Himori
- (男)
- ryuichi.himori@gmail.com
- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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