「日本的創造都市論」批判その5

生活文化創造都市拡充プロジェクトCreative Japan 全国大会2007in 浜松に参加して(その5)
このシリーズはまだまだ続くのだが、ここで一度まとめてみよう。
筆者が「日本的創造都市論」として批判しているのは、それを多くの都市が政策として掲げている点にある。創造都市の概念はいい。しかしそれを政策として掲げた場合、実現する手段はあるのだろうか、というのが筆者の批判の根本である。
以下いままでの議論を振りかえってみたい。
1.創造都市を目指すためには、その姿を指標化する必用がある。そこで最初に各都市の文化力を指標化しようとした。しかしそのための文化基盤(文化施設数など)や人材などの指標化はうまくいかなかった(有意な差が見出せなかった)。
2.そこで創造産業力を比較しようとした。イギリスの創造産業の定義はデザイン、ファッション、娯楽、出版、放送などサービス産業が中心のため、創造都市を目指している都市が重点産業としている地場産業などを指標化した。それでも不十分だったので各都市のヒアリングなど訂正評価を付け加えた。
3.筆者から見ると、この議論はおかしい。まず第一に、「創造都市を目指す」ということと「創造都市である」ということが混同されている。「目指す」のなら創造産業の種類や蓄積はまだ不十分なはずだし、「である」というのなら創造産業が定着して付加価値の高い事業を行っているはずだ。前者の場合まだなっていないものを指標化しても意味はない(にわとりか玉子か)し、後者の場合、本当に自信をもって創造都市「である」と宣言できるところはないのではないか(創造産業としての存在が顕著な都市はない)。
4.この議論の根底には付加価値への無理解がある。繰り返すが付加価値とは売価―原材料費だ。創造都市には創造産業があり、創造産業は高付加価値である、とするならば、現代日本の創造産業は輸出型製造業ということになる。しかし創造都市を目指すとする各都市に、そのような産業が集積しているだろうか?
5.第二の問題だが、創造都市を担うのはリチャード・フロリダの言うクリエイティブ・クラスの人たちだという話があった。日本ではそのような人たちはどこにいるかと言えば(東京は別として)輸出型製造業に抱え込まれている。彼等は「市民の創造活動の自由な発揮」に携わる環境にあるのだろうか?
6.現状では彼等は郊外のテクノポリスなどに「隔離」され、都市の創造活動の担い手にはなりにくい。もし浜松市のように輸出型製造業が立地する都市が創造都市を目指すとするならば、郊外のテクノポリスや頭脳センター開発など創造都市の実現とは逆のことをやっていたことになる。
ここまでが今までのまとめである。
この後に続くのがお待ちかねの、輸出型製造業がないところで創造都市を目指すとすればどんな手段があるのか、ということである。
そのために次回は「プラダを着た悪魔」を手がかりに?考えてみたい。
(続く)
なお、写真は創造都市のお手本ボローニャである。実は創造都市実現の手段はあるか?という問いに答えてくれるのもボローニャである。この点も後述する。
カテゴリー[ 都市政策 ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2007年 12月 26日 09:05:21
コメント
中々気を持たせますね。早く続きを読みたいです。
さて
桧森さんのいう創造産業は高付加価値であることが条件ですが
高付加価値であることに異論はありませんが
その高付加価値である源泉が、標準規格化、大量生産であるという場合も
ないでしょうか?
すると創造的という視点とは違和感があるのですが
なかの @ 2007年 12月 26日 18:42:47
なかのさん、いいご質問ありがとうございます。
100円ライターの例を引くまでもなく、大量生産品は高付加価値です。二束三文の原材料に高度な技術による加工を施して付加価値を高めているからです。
半導体も液晶も原材料はありふれたシリコンやガラスにすぎません。
このようなありふれたモノに高度な技術を施して付加価値を高めるのは、極めて創造的な仕事です。
高価であるにもかかわらず付加価値が低いのが、紫檀や花梨の家具、絹やアルパカの繊維製品です。原価のかなりの部分を希少な原材料が占めているからです。もちろんそのような高価な原材料に、職人が高度な技すなわち付加価値を施しています。しかしながらその付加価値の比率は工業製品ほどではありません。
原材料があまりにも高いのと、産地における職人の人件費が安いからです。
私たち先進国の人間は、二束三文で買い叩いた資源国からの原材料に、高度な科学技術に基づく加工を施し、それを大量生産して、生み出した高付加価値(付加価値の絶対額)によって現在の生活水準を維持しているのです。
これ自体極めて創造的な営みだと思いませんか?
himori @ 2007年 12月 26日 22:14:39
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- (男)
- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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