ニューヨークのオープンマイクはジャズの修行になるか?

今日は新年最初の出勤日。年末から年始にかけてニューヨークに出張して今年のジャズフェスティバルに出演するランディ・ブレッカーと打ち合わせをしてきた部下の報告を聞く。
話の中で面白かったのが、ニューヨークに大量にいる日本人女性ジャズボーカリスト志願者の話。だいたい20代後半くらいの女性で、お金をためてジャズの勉強にくる。
彼女たちのほとんどは、ニューヨークで音楽学校に通っているわけではない。それは専門学校だと半年で100万円くらいの学費がかかってしまうからだ。では何をしているのかというと、バイトしながら語学学校に通っている。
では音楽の勉強はどこでしているのか?ニューヨークのジャズクラブにはオープンマイクというのをやっているところがある。曜日や時間によって素人が申し込めば自由にマイクを使って歌ったり演奏したりできる。ステージにはピアノトリオがいて伴奏してくれる。いわゆるジャム・セッションだ。ここでお客さんの反応に鍛えられて度胸がついたり、バックのミュージシャンからアドバイスを受けることもある。個人レッスンをしているボーカルの先生が弟子を引き連れて繰り込むこともある。
写真のクレオパトラス・ニードルもそんな店。何しろミニマムチャージが10ドルと安いので腕試しの人たちで盛況だ。だから世界中から集まってくる(最近は圧倒的に日本人が多いが)。http://www.cleopatrasneedleny.com/
しかしこれで本当に実力がつき、プロになれるのかといえばそれは疑問だ。もちろんジャズクラブには大物ミュージシャンも来るし気が向けばジャム・セッションに参加することもあるので、そこで見初められることも無いとはいえない。が、音楽の世界は夜な夜なニューヨークの本場の雰囲気に浸っていれば実力がつくほど甘いものではない。
まあ彼女たちにとってはモラトリウムというか現代版花嫁修業ということなのだろう。ニューヨークでジャズボーカルの勉強をしてきたと言えば、ちょっと格好いいではないか。ダンスや演劇の勉強もそうだが、お金にゆとりのあるニッポンならではの風俗で、いいお客さんである(アジアの他の国の人たちは「自分探し」ではなく食うためにやっているので「好きなことを真剣にやる」というのとはまた違うガツガツ感がある)。
ここで世の親御さん方に申し上げたい。もし娘がニューヨークにジャズボーカルを勉強しに行きたい、と言い出したらなんと言うか?ちょっと長期で観光に行くついでにかじる、という程度ならYES(お互い観光と割り切る)。本格的に勉強してその道を究めたいという希望ならNO。その代わりダラス郊外のノーステキサス大学の音楽学部か、ボストンのバークリー音楽大学へ正規の留学をさせる(いずれも日本人は多いが)。
アメリカでは大学・大学院レベルのジャズ教育のメソッドが発達しており、体系的に学べる。もちろん才能の問題があるのでプロになれるのは一握りだが、将来のキャリアを考えた場合、少なくともいろいろつぶしが利くだけの幅広い知識と学位が身につく。それにニューヨークは遊ぶところが多すぎるが、少なくとも大学ではある程度隔離され、強制的に課題を与えられる。1000万円程度の学費は覚悟しなければならないが。
それにしても、パフォーミングアーツの修行や創造活動に世界中から人が集まるニューヨークはやはり創造都市の本家だ。それに比べれば、誰もこない(単に見せて稼ぎに来るだけの)東京は単なる田舎の消費都市なのか?それともパフォーミングアーツの代わりにOTAKUを惹きつける創造都市なのか?
後藤和子先生は「文化と都市の公共政策」(有斐閣、2005)の中でエーベルトの論文を引用し「創造都市においては、人々がオーケストラというよりジャム・セッションのように振舞うインプロビゼーションの過程やジャム・セッションのようなネットワークが重要である」と述べている。期せずしてジャズの用語が使われているが、これに近いのはニューヨークか東京か・・・・・・
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登録日:2008年 01月 08日 00:45:45
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