社員食堂の変遷

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弊社の社員食堂の運営は1月7日より外部の大手給食会社に委託された。

社員食堂はもともとは直営であり、人事厚生部門のひとつだった。その後1979年に厚生サービスを専門とする子会社が設立され、運営は移管された。しかし移管された当初より食堂利用者の数は四分の一以下になった。生産が国内や海外の子会社に移転したためである。このため子会社の経営が立ち行かなくなり、今回の外部委託となった。

これを社員食堂の調理や配膳をするおばちゃんの観点から見てみよう。おばちゃんは最初は正社員であり、工場の工員さんと同じ給料をもらっていた。これが子会社の社員になり、給与水準はさがった。そして今回は給食会社のパート社員であり、給与水準は更に大幅に下がった。

もちろん同一人物の給与がこのように変遷しているわけではないが、まったく同じ仕事をしている人の給与水準がこのように下がっている点に注目してもらいたい。社員食堂のおばちゃんの仕事内容になんら変化はないのだ。

これが今日本全体で起こっていることの本質である。グローバルな競争の中で、企業の生産性ではなく仕事の生産性によって給与が決まるようになってきたのだ。これを格差の拡大ということもできる。しかし世界で競争力のある製品を作る工員さんの給与水準と、食堂のおばちゃんの給与水準が同じというのも考えて見れば不自然だったともいえる。

企業がグローバルな競争に勝ち抜くために筋肉質になり、生産性を高めるために贅肉をそぎ落とせば、格差は拡大し、平均的な給与水準は下がらざるを得ない。

この給食会社が生産性を高め、パートのおばちゃんの給与が再び上がるかどうかはこれからの問題だ。企業が脱ぎ捨てた贅肉を集めて規模を拡大するとともに創意工夫で食堂のおばちゃんの生産性と付加価値を高めることができるかどうかにかかっている。

さて、外部委託になって変わったことといえば、サンプルを並べて白熱灯をあて、おいしそうに見せる工夫がされた程度だ。1月7日のメニューには「ころもはさくさく中はジューシーさぼてんのとんかつ」というのがあった。食べたおじさんたちが「サボテンのとんかつといっても中身は豚肉じゃないか」「衣にサボテンがまぶしてあるのか?」などと騒いでいる。

もちろんこれは植物のサボテンに衣をつけて揚げたのではなく「とんかつ専門店新宿さぼてんのとんかつを使用しています」という意味なのだが、我が町には新宿さぼてんの店舗がないため誰もわからなかったのだ。

カテゴリー[ 企業のこと ], コメント[4], トラックバック[0]
登録日:2008年 01月 08日 21:45:59

コメント

すばらしい例えです。自治体の現場でも、まさにこういったことが起こっているわけですが、疑問を投げかけておられるところ、感嘆しました。
「誰もが幸せ」といった考え方は終わり、職の内容にも格差がますます広がるでしょう。この傾向は、職の貴賎を生み、差別の概念をいっそうあらわにします。
人文科学(史学)を探求している友人がいます。彼は博士号をもっている私の高校時代の同級生です。彼は「私のやっている歴史など社会的には役に立たない道楽だ」といいながらも、論文を書きまくっていました。彼の行っている研究も社会的には直接貢献していないわけですから、切り捨てられるのかなぁと常々考えます。
なににとって有益かという尺度は時代により異なるはずです。給食のおばちゃんもかつて社員のなかで、安らぎやおいしい?食事を作ってくれ、みんなが満足した時代もあったかもしれません。
価値観の絶対化というのはないということをつくづく感じております。

yoshi @ 2008年 01月 09日 05:42:44

おばちゃんは現場での改善点、アイデアを会社に積極的に提言して時給を¥100上げてもらうよう常日頃から努力しなさい。と言うのはウソ。テキトーに時給分だけ労働すればよし。アイデアは会社に黙ってて自分であたためよ。そしてその時が来たならば「おばちゃんのおいしい手作り給食」会社を立ち上げよ。おばちゃんたちの逆襲じゃー!

B @ 2008年 01月 12日 14:19:04

yoshiさん、今年もよろしくお願いいたします。格差は広がるでしょうが格差が固定化しない社会にならなければなりませんね。
学問にしろ芸術にしろ、役に立つか立たないかではなく、需要があるかないか、そしてその需要を創造することができるかどうか、これがその道のプロだと思います。
私は大学入学時に史学科に行きたかったのですが、親の反対(つぶしがきかない)で断念しました。今でも行けばよかったと思っています。お友達は論文書きまくってうらやましいですね。
歴史学における需要創造とは、フランシス・フクヤマとか川勝平太先生とか古くはアーノルド・トインビーとか、地道な研究をベースに「壮大なホラ」を吹くと一気に需要が生まれますよ。みんな「壮大なホラ」を聞きたがっているのだと思います。

himori @ 2008年 01月 12日 17:40:22

Bさん、そう、その通りですよ。おばちゃんがひっくり返せばいいのです。その時にそれができるような仕組みがあれば、格差が固定しない。さらに、給食会社もアイディアを核に世界に出て行けばいい。

himori @ 2008年 01月 12日 17:46:10

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プロフィール
Ryuichi Himori
(男)
ryuichi.himori@gmail.com
団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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