企業のIT事情

あるメーリングリストに企業のIT事情について書いたのでここに転載する。

ITが浸透した企業の日常とはどのようなものか、企業人にとっては自明のことでもそうでない人にはなかなかうかがい知ることができないと思うので、その一端を紹介する。

「私が現在勤めているコンシューマーグッズのメーカーでは、ITは概ね4つのグループに別れていると思います。

第一グループはそのものずばりコンピューターのハード、ソフトの開発です。

これは半導体の設計からシンセサイザーの開発、「初音ミク」の音声合成エンジンまで商品開発そのものです。初音ミクには「周波数ドメイン歌唱アーティキュレーション接続法」という技術が使われていますが、その大元は信号を送って発音素子を発音させる、という楽器の技術です。例えば弊社が第一興商の通信カラオケDAMを開発したのは、楽曲データを送って音源を鳴らすという技術を持っていたからですが、そこで一番苦労したのが、「長崎は今日も雨だった」のバックコーラスのワワワをどうやって自然に聞こえるように音を出すかでした。こんなことが「初音ミク」の原点です。これはIT技術そのものです。

第二グループは従来からの情報システム部門です。

生産管理や会計のシステムですが、現在弊社はSAPを基幹システムとして採用しています。基幹システムに様々なアプリケーションシステムがくっついていますが、その目指すところは、例えばニューヨークの小売店で入力された商品発注が瞬時に日本や中国の工場の生産管理システムに反映され、在庫管理さらには部品や原材料の調達まで一貫して行われることです。
一方でその情報は会計システムに反映され、毎日決算を行うと共に、その中から経営者の意思決定にとって重要な情報が抽出され、報告されることが肝要です。
これらのシステムの開発や維持のために大量のSEやプログラマーが動員されていますが、その多くは外注の社員や派遣社員です。ヘルプデスクもここの担当です。

第三グループはいわゆるeコマースのグループです。

弊社のホームページはeコマースの部門及び広報で一元管理されていますが、その中にはダイレクト通販から掲示板やSNSの運営、投資家へのIR情報提供まで含まれます。最近ではYouTubeでの情報提供も行っていますが、ここで最も重要なのはネットによる音楽レッスンやユーザーがDTMで作った楽曲をアップして人気投票などを行うサイトです。ここからプロデビューできるアーティストも発掘しようとしています。また携帯電話の着メロや着ウタのサイトもこのグループに含まれます。
私も2002年に簡易作曲ソフトをネット上で動かせるようにして、博覧会のテーマソングのメロディーモチーフを公募する仕事をしたことがあります。

第四グループは一般社員グループです。

例えば管理職である私が朝出社してPCを開けると、大量のメールに電子決済が混じっています。派遣社員の勤務承認や事務用品の購入、ホームページ公開の申請などすべてPC上で行います。次に出張清算や立替経費の精算もネット上の電子伝票システムで行います。出張の交通や宿泊の手配はネットから子会社の旅行会社のページにアクセスして行います。
定例部会の資料をパワーポイントで作成してあらかじめ担当者にファイル添付で送っておき、会議に臨むとそれは北海道から九州までの電話会議です。影像と音声は別々にネット回線で送られ、発表資料はパソコンで同期しています(会議机の上は配線でスパゲッティ状態ですが)。弊社はロータスノーツを使っているので、グループワークや会議召集などもその環境を利用して行われます。
一方、中期計画や四半期ごとの予算決算数字の入力も行わねばなりません。その合間にメールによる連絡や根回し、ネットによる情報収集とPCを閉じる暇がありません」

企業のITについて語られるとき、往々にしてこの4つのグループの混同が見られる。例えばグループ2とグループ3は本来似て非なるものである。

以上ご参考まで。

カテゴリー[ 企業のこと ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2008年 03月 04日 23:41:51

コメント

しかしコンピューター用語とはルー語と同じですな。なんとかならんのかね。

BDPマスター @ 2008年 03月 05日 19:51:39

私のインマイオピニオンでは、ITのワールドではルー語はヴェリーマッチネセサリーなランゲージということができるでしょう。

himori @ 2008年 03月 06日 10:23:30

コメントを追加

Trackback

この記事に対するトラックバックURL:

カレンダー
< 2008年 03月 >






1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31




プロフィール
Ryuichi Himori
(男)
ryuichi.himori@gmail.com
団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
(なお、mixiもやってます。)
最近のコメント
[07/22] 地産地消 himori
[07/20] 地産地消 Macchan
[07/13] 何のための税金か? himori
[07/13] 指定管理者講演会 himori
[07/05] 何のための税金か? メープル
[07/03] 指定管理者講演会
[07/02] 指定管理者講演会 himori
[07/01] 指定管理者講演会 handa
[07/01] お金は銀行に預けるな!? himori
[07/01] 何のための税金か? himori
最近のトラックバック
お気に入りリンク
検索