ある日の授業

(写真は国連ボランティア計画より)
筆者の授業はこんな感じ。
「教科書のここ読んで」
「・・・外部支援者本位のやり方に陥るのを避け、コミュニティの住民のやり方を尊重し、持続可能な開発をめざすコミュニティに根ざした参加型開発は今日の開発援助では非常に重視されている。住民の組織化、協議、合意形成を図る地道な取り組みを通して、NGOが撤退しても生活改善を住民自身で進めていける力をつけるような援助のあり方が求められている。・・・」
「これってどういうこと?参加型開発ってなに?」
「あ~わかりません」
「君の家どこ?」
「え?安城ですけど」
「安城の都会?田舎?」
「田舎です。周りは田んぼばっかり」
「だったら、となり近所に、たくましくて生活力旺盛で学歴はないけど知恵のあるおばちゃんがたくさんいるだろう」
「いますいます」
「知識はないけど、どうしたらみんなで一緒に農作業をうまくやれるか、というような知恵はたくさんあるしたたかな田舎のおばちゃんたち。こういうおばちゃんたちは世界中どこの田舎にいってもいるんだよ」
「そうなんですか?」
「そうさ、タンザニアの山奥でもラオスの農村でも、どこに行ってもいる。で、そこへ、ハーバードやスタンフォードの大学院で開発援助学みたいなのをぎっしり頭に詰め込んだ青年が、NGOの看板と資金をもって山奥の村にやってきて、「皆さんを援助するためにやってきました。皆さんが豊かになる方法を教えます」と言ったら、おばちゃんたちはどう思う?」
「ばかにすると思います。自分たちのことを何にも知らないくせにって」
「そう、ばかにするだろうね。そしてしたたかだから言うこときくふりしてお金と資材をふんだくろうとするかも知れない。そうしたらせっかく来てもNGOが帰ったらもとの黙阿弥になってしまう」
「どうすればいいんですか?」
「大事なのはこのおばちゃんたちの知恵を借りることさ。「自分たちはお手伝いしたいけどどうすればいいでしょう?」と謙虚におばちゃんたちに聞く。おばちゃんたちもどうしたら自分たちが貧しさからぬけだせるか、内心わかっている。長年の生活で培った知恵があるからね。ないのはお金と具体的な知識だけだ。一緒に話し合って解決策を考え、おばちゃんたちが仲間をつくって始める。それをNGOが資金と知識でサポートする。村の誰に話したらうまく根回しできるか、どうしたら皆でいっしょにできるか、こういうことにはおばちゃんたちは知恵が働くからね。井戸端会議で情報通だし。外から来たNGOがいくら知識を振り回しても誰もついていかない。村の人たちがその気にならなければ開発なんてできない。その鍵を握っているのがおばちゃんたちだ。君の近所のおばちゃんたち見てもわかるだろう。これが参加型開発ということだ。わかった?」
「よくわかりました。ところでなぜおばちゃんじゃなきゃいけないんですか?男じゃだめなんですか?」
「男はだめだ。見栄っ張りだから。えらそうなこと言ってもちっとも動かない。あるいは夢ばかり見ている。その点おばちゃんたちは子供を抱えているから話が具体的で行動力もある。だから前にも話したようにグラミン銀行も男じゃなく女に貸す。97%が女への貸し付けだったよね。女のほうがまじめで返済もきちんとしているし。田舎のおっさんはちょっと金が入ったら酒飲むかギャンブルする。これも世界共通だ」
「なるほど」
あるとき学長に「私、難しい言葉で説明できないんですがいいんでしょうか?」と聞いたら学長が「それでいいんです。学生の前で難しい言葉を並べるのは学者の自己満足です。やさしい言葉を使っておもしろくやればいいんです。一時間半笑わせていればいいんです」とおっしゃったので意を強くしている次第である。
カテゴリー[ 大学にて ], コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2008年 05月 14日 00:30:22
コメント
私の場合、センターまでは数学が強かった。。
でも今は数学ができない1人です。
学会に参加しても数式の世界は理解できません。
言葉ほど便利な手段はないと思っている私です。
情熱が伝わればいい・・・そう思っています。
TOMO @ 2008年 05月 14日 21:07:18
TOMOさん、このブログを読んだ私の友人によれば、経験を論理的に整理して普遍的に語るのがわたしの得意技だということです。帰納法なので間違っていることもあるでしょうが、まあ仮説ということでお許しいただきましょう。TOMOさんは数学を使わなくてももっと論理的にやっていただければいいのではないでしょうか。
himori @ 2008年 05月 18日 01:14:03
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というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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