指定管理者講演会
金曜日は朝東京を発って午前中は愛知県岡崎市の大学で授業。午後は岐阜県北方町で開催された岐阜県公立文化施設協議会総会で講演。
タイトルは「指定管理者制度による文化ホール運営組織の経営改革」
内容は以下の通り。
1.はじめに
2.自己紹介
3.指定管理者制度の現状
4.指定管理者制度の本質
5.びわ湖ホール問題を通して指定管理者制度を考える
6.指定管理者制度を超えて
7.公立文化施設の存続のためには?
8.財団が生き延びるためには?
写真は当日使用したパワーポイントの一部。
当日の顔ぶれを見て、かなり脱線していろいろしゃべったので後で録音をもらいたいものだ。
以下は当日の感想である。
1.公文協メンバーの多様化
なぜ脱線したかというと、出席していた県公文協の顔ぶれが直営館、指定管理者の外郭団体、指定管理者の民間企業にわかれていて面白かったからである。ここの公文協の副会長も指定管理者の民間人の館長だった。今回の講演の質疑では民間企業の指定管理者からも質疑、意見があった。どうも今まではこの手の会合ではやや違和感を感じていたらしいが、筆者の話に触発されて発言しやすくなったようだ。
2.運営主体の多様化の影響
同質集団だった公文協に異質の企業が入ってきた。これは面白い。お互いの暗黙の前提が通用しないのだから。いままでは公立文化ホールにとって何がいいことかは暗黙のうちに共有されていたと思う。
例えば、民間企業の指定管理者には、公文協の暗黙の前提としてあった「高尚な芸術文化を地域に啓蒙する」という「上から目線」はない。
「施設を通して地域の文化振興を図る」というミッションを与えられた指定管理者にとっては、「高尚な芸術文化の啓蒙」はイコールではないはずだ。(しかも高尚と目されているのは18世紀19世紀の西洋の芸術だ)。少なくとも民間企業はそれまで公文協で刷り込まれていないので、「地域の文化振興」については「高尚な芸術文化の啓蒙」だけではないさまざまな方法を考える。
これ以外の暗黙の前提がたくさんあったと思うが、暗黙は通用しなくなったのだからひとつひとつ客観的に検証する必要があるだろう。
3.梅棹“水道方式”からの脱却
指定管理者制度以前の公立文化ホールは「幽体離脱」のようなものだった。全国公文協や地域創造で研修を受け、高尚な芸術文化を地方に普及することをミッションだと教えられた。ホールの担当者は口を開けば「うちの地域は遅れているので」と言っていた。文化に遅れているも進んでいるもないのに。だからホールは地域から遊離してしまった。それがびわ湖ホール問題の本質だ。公立文化施設の目指すものは地域それぞれ別のはずだ。
かつて梅棹忠夫は「全国どこでも蛇口をひねれば文化が出てくるように」と言い、その考えにもとづいて全国つづ浦々に公立文化施設ができた。その蛇口から出てくる文化が全国一律に「高尚な芸術文化」というのはそろそろ脱却しなければならない。
4.指定管理者の先にあるもの
ところで筆者は講演で「指定管理者の先にあるもの」という話をした。このまま財政が悪化すれば、指定管理者どころか施設の廃止もあり得る、ということだ。更地にして売却する動きも出てくるだろう。その時に文化ホールの存続について説得力ある主張ができるだろうか。「地域経済と芸術・文化のスパイラルな関係」における文化ホールの重要性を確立し、説得するのはホール所管部門の役割である。
指定管理者に丸投げしたからと言って、文化施設所管部門の政策上の責任が軽くなるわけではない。
5.直営館の問題
今回の講演で気になったのは、直営館はややのんびりしていた、ということだ。財政に危機感を持つ自治体の企画部門では当然これからも指定管理者制度の導入やあるいは場合によっては施設の廃止、売却、用途転換などが検討されるはずだ。のんびりしていると直営館に配属されている職員やその所管部門は蚊帳の外に置かれてしまう。全体の政策の中で文化ホールをどのように位置づけるかは、自らが身を削ることも含めて担当者も一緒に考えねばならないだろう。
カテゴリー[ 指定管理者制度 ], コメント[6], トラックバック[0]
登録日:2008年 06月 29日 01:03:28
コメント
指定管理者で図書館をやってます。
「指定管理者の先にあるも」には、とても興味があります。
※できれば、その録音もお聞きしたいのですが...
まる3 @ 2008年 06月 29日 11:20:57
まる3さん、ご訪問ありがとうございます。録音はありませんが、よろしければ当日の資料をお送りしましょうか?山中湖の方ですよね?
himori @ 2008年 07月 01日 23:18:03
指定管理者という単語と、ガバナンスの一翼という言葉と…かけあわせて本制度を考えた場合、
指定管理者に丸投げしたからと言って、文化施設所管部門の政策上の責任が軽くなるわけではない。
↓
私はむしろ重くなるのではと思っています。どこの自治体も似たようなものかもしれませんが…そもそも論である「設置目的」を深く掘り下げることをあまりしていない気がします。掘り下げない以上、責任の重みがわからないから、実は責任が重くなるか軽くなるかの意識「すら」ないのではないか?…ここが正直怖いなぁと感じ始めています。
handa @ 2008年 07月 01日 23:59:26
handaさんのおっしゃる通りでむしろ責任は重くなるのです。設置目的があいまいなために指定管理者に対して成果を求めることもできない。指定管理者側も何を評価されるのかよくわからない、という状態ですが、少しずつ変わり始めている兆しもあります。
himori @ 2008年 07月 02日 19:02:24
民間企業として指定管理者に取り組んでいる者です。
初期の頃、弊社グループの提案に桧森様からご意見をいただいたことがあるんじゃないかと思います。
※当時、私は担当ではありませんでしたが・・・
「指定管理者の先にあるも」には、まる3様と同様に非常に興味があります。
もし資料だけでも拝見できるようでしたら、是非お願いしたいと思っています。
輪 @ 2008年 07月 03日 09:09:18
輪さん、こんにちは。よろしければ資料お送りしますよ。プロフィールのところにメールアドレスが書いてありますのでメールください。
himori @ 2008年 07月 13日 14:03:30
コメントを追加
Trackback
この記事に対するトラックバックURL:
- プロフィール
- Ryuichi Himori
- (男)
- ryuichi.himori@gmail.com
- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、行政経営フォーラム副代表、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事などいろいろ。行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論、都市政策などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
(なお、mixiもやってます。)
- 最近のエントリー
- [10/14] 季節はめぐる
- [10/09] ストレンジャーズ・イン・ザ・ナイト
- [10/05] 秋学期の授業
- [10/05] 本日のディナー
- [10/04] 何にもしない日
- [10/01] 景気対策?はぁ?
- [09/30] いや~困りましたな
- [09/29] キムタクも・・・
- [09/29] イケアに見る日本社会の成熟3
- [09/25] 改革の方法
- 最近のコメント
- [10/15] 季節はめぐる nebu
- [10/14] 団塊の世代への誤解を解くシリーズ第一弾「学生運動」 革命21事務局
- [10/14] ストレンジャーズ・イン・ザ・ナイト himori
- [10/14] 秋学期の授業 himori
- [10/10] ストレンジャーズ・イン・ザ・ナイト Macchan
- [10/10] 琉球王国復活! 革命21事務局
- [10/10] 秋学期の授業 handa
- [10/09] 改心は本物か? 革命21事務局
- [10/01] 行政の解体と再生 himori
- [10/01] 行政の解体と再生 nebu
- 最近のトラックバック
- 月別アーカイブ
- 2008年 10月 [6]
- 2008年 09月 [15]
- 2008年 08月 [15]
- 2008年 07月 [14]
- 2008年 06月 [14]
- 2008年 05月 [10]
- 2008年 04月 [13]
- 2008年 03月 [18]
- 2008年 02月 [19]
- 2008年 01月 [19]
- 2007年 12月 [22]
- 2007年 11月 [25]
- 2007年 10月 [18]
- 2007年 09月 [17]
- 2007年 08月 [15]
- 2007年 07月 [18]
- 2007年 06月 [14]
- 2007年 05月 [20]
- 2007年 04月 [12]
- 2007年 03月 [16]
- 2007年 02月 [16]
- 2007年 01月 [18]
- 2006年 12月 [16]
- 2006年 11月 [16]
- 2006年 10月 [16]
- 2006年 09月 [23]
- 2006年 08月 [19]
- お気に入りリンク
- 検索