カテゴリー [文化ホールについて]

ホール設計コンペ

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10月30日(土)は文化ホールの設計コンペ公開プレゼンの見学のため、長野県上田市へ。

正式名称は「交流・文化施設等基本設計業務公募型プロポーザル」の「公開プレゼンテーション・2次審査」

詳しくは施設整備計画を見ていただきたいのだが、上田駅近くのJT上田工場跡地のうち45000㎡の敷地に1700席の大ホール、300席の小ホール、美術館、交流施設、市民緑地・広場、駐車場などを作る計画だ。

http://www.city.ueda.nagano.jp/files/seiki/0030/20100224113431059.pdf

個々の建物のデザインだけでなく、敷地全体の配置計画がポイントとなる。周辺の商業施設との関係や市内の回遊動線、景観など、都市計画的な要素も重要だ。

21社が応募し、書類選考で下記の5社が2次審査に進んだ。選考委員の前で1社20分の説明(パワーポイント使用)と25分の質疑応答。間に15分の休憩と採点を挟む。会場には一般席や報道席が設けられている。

(株)新居千秋都市建築設計
久米・第一設計 設計共同企業体
佐藤総合計画・エービーシー設計共同企業体
日本設計・アールアイエー設計共同企業体
柳澤孝彦+TAK建築研究所・梓設計共同企業体

終了後2時間ほどの審査タイムがあり、結果発表となる。

結果は柳澤孝彦グループが最優秀、次席が日本設計グループ。

ランダムに感想を述べると、

1.2次審査の5社は実績のある手堅い大手が選ばれている。その分、あっとおどろく奇抜な提案はない。
2.大ホールは5社とも常識的な可動式音響反射板を持つシューボックス型(バルコニー席あり)の多目的ホールを提案している。中には、概略を示し具体的には基本設計で市民と対話しながら詰める、としたところもある。
3.小ホールは可動席平土間型と固定席段床型にわかれた。固定席を提案したところは、平土間用途はリハーサル室や交流施設で代替できる、としていた。
4.佐藤総合案がすべての施設を建物内に納めているが、他の4案は各施設を平面的に配置し、屋根つきの回廊あるいは広場によって結ぶ案で比較的似通っている。小田原では敷地の関係でこのような方法はとれない。
5.選考経過によれば、総点数で2社が他をかなり引き離していたとのことで、2社のうちどちらにするかの議論になったようだ。個人的な1席は柳沢案ではないが、どのような観点で選ばれたのか興味がある。選考委員長は景観の問題を示唆していたが。

各社とも多少のずれは見られたが施設の目的を十分理解して解決策を提案しており、選考委員は選ぶのに苦労しただろう。しかしこれが通常の設計コンペだ。それにつけても小田原で施設の目的の理解が十分でない山本案がなぜ通ったのか、あらためて疑問に思った。

選考委員も大変だが、朝の10時から結果発表の19時まで硬い椅子の上に座っていた見ていた筆者も、物好きといえば物好きだ。

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登録日:2010年 11月 03日 14:02:53

小田原 市民との意見交換会

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9月1日は小田原市民ホール建設準備会の市民との意見交換会。

築40年超の市民会館大ホールの舞台上を会場に、建設準備会の委員が市民から意見を聞く会。

ここまで8回開催された建設準備会はすべて公開で行われていたが傍聴者は発言できなかったので、今回は来場者から意見を聞く。冒頭で筆者から「なぜ山本案が否定されたのか」という話をし、各委員から一言ずつ発言してもらったあとは、来場者に発言してもらう。

筆者が議長としてさばくが、冒頭「発言がなかったら私は大学の教員なので当てますよ」と言って笑いをとって本当に当ててしまった。行政職員ではこんな議事進行はできないだろう。この手の会は対決構図になりがちなので、和やかな雰囲気の中でできるだけたくさん意見が出るようにしたい、と思ったからだ。

市民の意見は「もの申す」や「いかがなものか」といったニュアンスではなく「自分が責任をもってやる」というような前向きのものが多かった。新たな文化ホールは市民が担わなければならない。市民にその覚悟が必要なのだが、少しずつその方向に向かっているようだ。今までの小田原市のホール建設計画に足りなかったのがこれだ。

組織活性化の極意は「オレがやる、協力する、明るくする」(by故・猿谷雅治氏)だが、これは市全体にとっても言えることである。

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登録日:2010年 09月 05日 14:40:48

おしゃれな安普請

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昨日は小田原の人たちと座・高円寺を見学。
http://za-koenji.jp/

とても大事だと思ったことを4点。

1.こんなにおしゃれで安普請のホールは見たことがない。壁はコンクリートと鉄板にペンキ塗り。ただのシナベニヤが壁に使われている部屋まである。徹底的に安い材料を使いながら、落ち着いた赤と茶色を基調とした統一感ある内装や随所に見られる水玉のモチーフがおしゃれだ。設計はあの城下町ホールの審査委員長、伊東豊雄氏。建設費32億というのはこの規模の劇場としては破格の安さだ。

2.演劇中心のホールは機能的で良く考えられている。プロ向けの平土間とアマチュア向けの固定席の二つの劇場を持ち、衣装や道具の制作室、練習室などいたれりつくせりだが、狭い敷地を効果的に使うためにトイレを劇場ごとではなく地下のフロア一か所にまとめるなど思い切った割り切りも見られる。コンセプトがはっきりしているからこそ、優先順位がつけられるのだろう。

3.杉並在住の演劇人を中心としたNPOが完成の3年前には指定管理者に決まり、設計・建設のプロセスでかなり注文を付けたとのこと。当初の設計とはかなり違ったものになったようだ。やはり使う側が設計段階から当事者として入ることの重要性は、このブログでも書いた昭和音大のホールとも共通している。

4.文化ホールは施設ではなく機関である。指定管理者のNPOはホールを活用して地域の商店街の活性化など様々な地域活動に取り組んでいる。NPOの持つ企画力やネットワークが生かされているが、それは指定管理者の業務の一部としてやっているのだ。一方NPOの独自事業としては、ここで制作した芝居の全国ツアーを手がけている。これからの地域の公共ホールと指定管理者の、ひとつのモデルとして興味深い。

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登録日:2010年 08月 03日 12:41:51

文化政策と文化施設

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毎週金曜日はこの大学で文化政策の授業。

先週から文化政策の手段としての文化施設の問題を議論している。
そこで今週は小田原市仮称城下町ホールの問題を事例として取り上げた。

(なお、この問題についてはこのブログのカテゴリー「文化ホールについて」をお読みください。よろしくお願いいたします。授業でもブログの記事の内容17回分を口頭で解説しています。)

■文化政策と文化施設の事例
1.小田原市城下町ホール問題 ~経緯
・1962年に建設された市民会館の老朽化
・1992年別の敷地に新たなホールを建設する計画(仮称城下町ホール)が具体化(小田原市民会館整備検討委員会)
・2003年「仮称城下町ホール建設市民委員会報告(小林真理氏、伊藤裕夫氏も委員として参加)
・2005年6月、「仮称城下町ホール基本構想」完成(受託:佐藤総合計画)1200席~1300席のシューボックス型ホールを想定
・2005年12月、エスキースコンペ実施(選考委員:藤森照信、伊東豊雄、本杉省三、市助役、市部長他)、応募総数238件、一次審査通過7件の公開ヒアリングを経て山本理顕案を選ぶ
・山本氏のコンセプトは「都市の中の広場」、これを審査員が評価

2.その後の経過①~市民による反対運動
・2006年1月基本設計契約(5月完了)、9月実施設計契約
・2006年10回の市民及び文化団体対象の設計案説明会開催。反対の声が上がる
・2007年3月実施設計完了、年度内の着工を目指し、7回の設計案説明会を実施。反対の声高まり、運動となる
・反対運動を推進する市民団体できる。井上ひさしさん、阿藤快さん、妹尾河童さん等専門家から反対の声が上がる
・2007年6月、桧森、自身のブログで山本案を批判 (その後数回にわたり反対論を展開、大きな反響)
・反対運動の署名36,435通集まる。市に提出
・神奈川県企業庁、工事監理契約業務を中断
・2008年4月、小田原市民会館で反対派によるシンポジウムが開催される。井上ひさしさん、橋本英治さん(前進座)、桧森隆一がパネラーとして出席

3.その後の経過②~建設計画の見直し
・2008年5月、仮称城下町ホールの見直しをマニュフェストに掲げた現市長が当選(前市長は出馬せず)。得票は44,108票
・この間山本理顕氏に設計料1億5千750万円が支払われる
・新市長により計画凍結、2008年11月「小田原駅・小田原城周辺まちづくり検討委員会」発足、反対運動市民も委員として参加
・2009年3月同委員会終了、2009年12月「市民ホール建設準備会」発足、桧森、市来氏(世田谷パブリックシアター)、桑谷氏(杉並芸術会館)等専門家委員、文化団体、市民委員(従来の反対運動市民)で構成、あらためて基本構想の策定に入る
・2010年2月、山本理顕氏と市長の公開対話実施
・2010年4月、桧森、建設準備会委員長に就任
・2010年5月、桧森と市長の会談

このような経過を説明し、文化政策の不在とガバナンスの欠陥について論じた。

この授業には12人の学部2年の学生と2人の聴講生(上級生と社会人)がいる。

聴講生の一人からは、優れたデザインの建築が建つことで、ホールの機能・利便性が悪いことを上回るメリットがある、ということを市側が市民に説得する必要があったのではないか、という意見が出た。

なるほど、鋭い意見だ。我々はホールを利用する立場から反対したわけだが、建築の与えるインパクトがより広範にあるかも知れない、ということは考えられる(もっとも今回は建築家も含めて誰もそれを主張していないが)。

もう一人の聴講生からはこの計画が止まったということに時代の変化を感じる。今までであればまずなかっただろう、という意見が出た。その通りで今までは市民の反対があっても見直されることはまずなかった。選挙が市民の意思表明の手段となり、その意思が実現した、ということもそうあることではない。

学部の学生からは「いいホールができるために先生ががんばってほしい」という意見が出た。

はい、がんばります。

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登録日:2010年 05月 29日 13:11:07

建築ジャーナル5月号

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建築ジャーナル5月号に、「公立文化ホールを設計する建築家にお願いしたいこと」という拙文が掲載されました。
今まで、アートマネジメント側からホール設計ににもの申したことはほとんどないので、建築家にはあまり知らなかったことが多いと思います。ぜひお読みください。

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登録日:2010年 05月 11日 11:27:17

建築ジャーナル4月号

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昨年11月号で城下町ホールを特集した建築ジャーナル誌の4月号に「山本案が市民に否定される理由」という拙文が掲載されたのでお読みください。

同号には「山本理顕氏と小田原市長の公開対話は平行線」という記事も載っていますので合わせてお読みいただくとわかりやすいかと思います。

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登録日:2010年 03月 29日 11:48:27

劇場コンサル

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先日、新規ホール建設を計画しているある市役所の方がお見えになった。

どのように計画を進めればいいのか意見を聞かせてほしいとのこと(小田原の二の舞は踏みたくないので)。

その中で、どのように劇場コンサルを選んだらいいのか?という質問が出た。
世の中には劇場コンサルタントという職種があり、自治体があたらしくホールを建てる場合、一定規模以上であれば設計・建設についてコンサルティングを依頼するのが一般的である。

筆者の回答は以下の3項目。

1.完全に施主の立場に立てること。
設計事務所やゼネコンと施主の間には利益相反が発生する(本来設計事務所が分離の場合施主との間に利益相反は発生しないはずだが、山本理顕氏のケースを見るとそうもいえない)が、そのときコンサルが完全に施主の立場に立てるかどうか。普段のお仕事をゼネコンや設計事務所経由でもらってるとなるとこれは難しい。

2.ホールについて特別な思いと見識を持っていること。
劇場コンサルは建築畑の出身である。普通の建設コンサルならそれだけでいいが、ホールの場合は専門性やこだわり、何よりもいいホールを作りたいという情熱、そして動機が必要である。建築にもいりいろ分野がある中で、なぜ劇場コンサルになったのか、そこが重要だ。

3.自分が知らない分野、不得意な分野に対して謙虚であること。
建築系の人たちの欠点は「よく知らない」と言わないことだ。どんなホールにすべきかについて一番必要な知見はそこでリスクをとって公演を行う人が持っている。しかし劇場コンサルはリスクをとって公演を主催した経験はない。せいぜい愛好家として見ているだけだ。主催者と観客は180度異なる。そのことを自覚しているコンサルタントがいいコンサルタントだ。
施主もコンサルは何でも知ってると思って丸投げ思考停止に陥ってはならない(まして建築家は何にも知らない人たちだと思わねばならない)。

さて、それは誰ですかと聞かれたが言えませんと答えた。施主との相性もあるのでこればかりはいろいろな人と話して以上の三つの条件を念頭に施主が選ぶしかない。

(写真は手土産にいただいたラスク)

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登録日:2010年 03月 04日 20:18:42

城下町ホール問題:山本理顕案はなぜ市民に否定されたのか

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小田原市城下町ホール問題について、昨年の12月に書いた文章をここに収録する。

タイトルは「なぜ山本理顕案は否定されたのか」

「1. ガバナンスの問題

山本氏が建築ジャーナル誌で述べているように、設計案が発表後に反対の声があがり、説明会でも山本氏の言う「反対派」は説明に納得しませんでした。そして納得しなかった人々は3万余の署名を集め、この人々の意を呈した市長が当選しました。
民主主義のガバナンスでは、市長は自分を支持してくれた人々の望みをかなえる政策の実現を目指します。ましてや今回はホールの見直しが公約に掲げられています。市役所の職員は市長の掲げる政策をいかに実現するかが仕事です。それが政治主導であり公務員の中立性ということです。
山本氏はこのような民主主義のガバナンスの原理を理解していないのではないでしょうか。

もちろん、契約が結ばれていれば、中止のためにさらに違約金が発生したかもしれません。その場合でも違約金を払っても中止するか、それとも契約を続行するか、選択肢を市民に示した上でその意を汲んで市長が決めることになるでしょう。しかし今回の場合、建築ジャーナルで木村草太東京都市大学準教授が指摘しているように契約は履行されており、自治体側に契約違反はありません。

今回の場合、説明会など市民との対話でも納得しなかった人々の支持のもとに新市長が当選したので、山本氏の設計案がお蔵入りするのは、そしてそのように市の職員が取り扱うのは当然のことなのです。ガバナンスを理解するならばこれ以上の説明は必要ない、とも言えます。

2. 山本案のコンセプトの問題

それでも、なぜ山本案が否定されているのかと言えば、それは山本案の「都市の中の自由広場」というコンセプトが否定されているからです。長い時間をかけてつくられた基本構想にはこのようなコンセプトはありません。多くの人々は「広場」でなく「劇場・ホール」を望んでいたのです。山本案は「広場」を前提に「劇場・ホールもできます」という設計になっていますが、そのために「劇場・ホール」の機能は不十分でした。「広場はいらない、劇場・ホールの機能を高めてほしい」というのが多くの人々の意見であり、「広場」に固執する山本氏とはかみ合いません。

そもそも劇場・ホールは最初に使い方を考え、その使い方のために最適な劇場・ホールとしてのサイズ、形状、機能が考えられます。それが基本構想です。建築家はそれを前提に設計します。しかし、今回の山本氏は、「広場」というコンセプトを考え、そのために基本構想にはなかった使い方を持ち込んだようです。

これは基本構想の無視であり、建築家としては極めて僭越であり、しかも先に空間形状から考えるという劇場・ホールの設計では致命的なミスを犯しています。なぜそう言えるかというと山本氏の同時期の他の建築でもこの形状のモチーフが見られるからです。

確かに基本構想には「広場」が出てくる部分があります。しかしそこに示されている広場とは、劇場・ホールで行われる実演を通してそこに集う人々が交流することにより、概念としての広場ができあがる、ということであり、物理的に広場を作ることではありません。山本氏は基本構想にある広場という言葉を拾い上げて牽強付会をしてしまったのです。

3. 多目的ホールについて

 山本氏は建築ジャーナルで多目的ホールという考え方が批判されているかのように述べていますが、それは間違いです。基本構想では小田原市のホールは音楽と演劇が高次元で両立する多目的ホールを目指しています。それは専用ホールをたくさん建てることはできない小田原市の現状としては当然のことです。また現代の技術ではそれは(完全ではないまでも)可能です。しかしその多目的の目的の中に広場あるいは広場を使用する演目、山本氏の言うサーカス、プロレスなどは入っていません。そのような目的は望まれていないし、山本氏が(建築家が)勝手に盛り込んでいいものではありません。

4. 市の瑕疵

 もし、今回の一連の過程の中で市に瑕疵があるとすれば、それは基本構想に示された「構想」を審査員にも応募する建築家にも徹底することができなかったことでしょう。基本構想で示されたシューボックス型の形状は(キャパシティやサイズも)、小田原市での使い方を考えた上で煮詰められたもであり、それはコンペの与件であり、変えることはできないものです。与件を踏まえた案以外は本来は落選のはずです。それが当選してしまったのは、審査員の人選も含めて市のコンペ運営の失敗と言えるでしょう。

 しかしそれは市の山本氏に対する瑕疵ではありません。冒頭で述べたように、山本氏の案が否定されたのは反対する市民の意を呈した市長が当選してその政策を実行に移したからであり、山本氏に対しては契約は履行しているため、市としての瑕疵はありません。今後は市長が職員にこのような間違い(構想はどこまで守らねばならないか、どこまでは建築家の裁量か、に関して)を二度と起こさないように指示すればいいだけの話です。」

以上が昨年書いた文章だが、昨日の公開対話を見て、やはりそうだったのか、と思った次第だ。

さて、市民の反対意見には様々なものがある。その一つが、「歴史的景観に配慮」していない、というもの。建設予定地が小田原城に隣接しており、昨年復元された写真の馬出門の反対側にあるからだ。かといってまがい物のお城風建物にすればよい、というわけではないので、近代建築と歴史的景観をどう調和させるか、建築家の力量が問われるテーマだ。

山本理顕氏はつい最近スイスチューリヒ国際空港プロジェクトで国際コンペ最優秀賞を受賞した。2012年に着工されるとのこと。
http://www.thecircle.ch/en/medienmitteilung3.html
このような国際的に評価される建築家の建築ができるチャンスを小田原市は逃した。残念に思う市民もいるかもしれないが、筆者はこれでよかったのだと思っている。

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登録日:2010年 02月 19日 13:31:44

山本理顕氏と加藤小田原市長の公開対話

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昨日小田原市役所で「市長と山本理顕氏との公開対話」というのが開催されたので傍聴した。

多くの読者の方はこのブログで3年越しで取り上げている城下町ホール問題についてご存じだろう。この問題についてお蔵入りになった設計者の山本理顕氏から公開質問状が出され、諸々の経緯を経て今回の公開対話が開催された。

詳しくは議事録が発表されると思うので、ツイッターでもつぶやいた筆者の感想を記す。

1. 山本氏は「自分の設計思想が市民に十分伝わっていない。伝われば理解してくれるはずだ」と主張するが、それは間違っている。市民は山本氏の設計思想を理解したからこそそれを否定したのだ。主張に専門家の傲慢さが見て取れる。市民は山本案の本質をよく理解している。

2.山本氏は「多目的は無目的」という井上ひさし氏の言葉を取り上げ、「自分は小田原市では多目的の機能が必要だと思ったからこういう設計にした」と主張する。たしかに市民は多目的(音楽と演劇の両方ができる)を望んでいる。しかし市民の多目的の中に山本氏のいう「都市の広場」は入っていないのだ。市民の望む多目的にアリーナは入っていない。それが市民がこの案を否定した最大の理由だ。

3. 山本氏は市長が市民から付託されたことと、設計者(自分を含めコンペに参加した)と市役所との信頼関係は同じく重要だ、というがそれは違う。市民からの付託の方がはるかに重い。山本氏は民主主義下のガバナンスを理解していない。ハコモノ行政の時代はそれで済んでいたのだろう。

4.山本氏はコンペの審査員の一人だった伊東豊雄氏を連れてきて発言させろと要求し、市長は拒否した。建築家どうし仲間内でつるんでいる、ということを露呈してしまった。伊東氏は審査で通した案がなぜ市民に拒否されたかを反省すべきだ。

5.結局山本氏の主張は手続き論に終始した。山本案否定の民意を受けた市長が当選した後、なぜもっと早く詳しい説明をさせてくれなかったのか。説明すれば理解され、そのまま案が通っただろう、と考えているようだが、たとえ市長が説得されたとしても、市長がそんなことできるはずがないではないか。

6.山本氏は設計思想は提案だ。場所が代わっても思想は生きている。やらせろと言っているのではない、1億7千万もかけたのだから素材として活かすべきだ、と主張する。それに対して市長は思想を否定するものではない、と返事をしたが、筆者はここで市長は山本氏の思想を完全否定すべきだったと思う。

7.城下町ホールの問題は、これからの公共建築の在り方やそれが誕生するプロセスにとって示唆に富んだ教訓がたくさんある。ひとことで言えば、市民は成熟していて自ら判断する力を持っている、ということだ。

今回、山本氏が動員したと思われる建築ジャーナリズムの記者がたくさん来ていた。終了後山本氏と伊東氏にむらがって取材していた。恐らく小田原市はひどい、という記事がたくさんでるだろう。
しかしそれに惑わされることはない。小田原市のことは小田原市民が決める、という姿勢が大切だ。市の職員にそのように伝えて会場を後にした。

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登録日:2010年 02月 19日 01:05:02

小田原市 城下町ホールその後

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以前ここで小田原市の城下町ホールのことについて何回か書いた。

http://www.actiblog.com/himori/38123

その後市長選挙があり、ホール見直しを公約に掲げた市長が当選した。様々な曲折の後新たなホールの在り方を考えるための市民ホール建設準備会が市役所内に発足し、筆者は委員の一人になった(写真)。山本理顕氏の案は完全に葬り去られ、新たな計画が始まる。

http://www.city.odawara.kanagawa.jp/field/lifelong/citizens_hall/jyunbikai/about_jyunbikai.html

http://www.city.odawara.kanagawa.jp/__filemst__/8448/dai-1-kai-gijiroku.pdf

以前の記事にも書いたがこの問題はガバナンスの問題でもある。山本理顕氏の設計に反対する市民の署名運動には36,346人が署名した。その後行われた市長選挙で当選した市長の得票数は44,108票である。もちろん署名がすべて有権者ではないが、市長が何を付託されているかははっきりしている。

山本氏との契約は既に履行されており、支払いも済んでいる。設計は完成したがそれが建設されることはない。なぜそうなったのか関係者皆が考えるべきだ。その上に立って市民のための新たなホールの計画を進めよう。

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登録日:2010年 01月 17日 22:26:57

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Ryuichi Himori
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団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事、(社)指定管理者協会理事長などいろいろ。公共経営・行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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