カテゴリー [中山間・島嶼地域]
アートによる地域の活性化とは?
「アートによる地域の活性化」という言葉はアート関係者や行政からよく聞くことがあるが、筆者はこのような慣用句は人を思考停止に陥らせると思っている。
今回、筆者はゼミ合宿を愛知県西尾市一色町佐久島、三河湾に浮かぶ「癒しとアートの島」佐久島を訪れ、アートで地域を活性化するとはどういうことなのかを学生たちと考えてみた。
2001年に旧一色町と島の有志の人たち(今は島を美しくつくる会)が始めた「祭りとアート」をキーワードとした地域の活性化の取り組みは、10年の曲折を経て、島内各地に16の現代アート作品が常設展示され、また、年間を通して期間限定展示や学生によるアートイベントやアクティビティが開かれるまでになった。
http://www.m-mole.com/sakushima/index.html
アート作品はいずれも島の自然となじんだり、島の伝統的な生活を題材にした表現を意識して作られており、島に残る豊かな自然や、古い街並み、神社仏閣やそこで行われているお祭りと相まって島の不思議な魅力を創り出している、というように外から来た者には見える。
実態はどうなのだろうか。合宿では学生を5人づつ5班に分けてそれぞれが、観光客3人、島の人3人にインタビューし、その結果を持ち寄って検討する、ということを行った(写真は南川祐輝作「お昼寝ハウス」の前で観光客にインタビューする学生)。
学生が驚いていたのは、観光客は若い人(20代30代)が多く、ほとんどがアートをきっかけとして島を訪れている(中にはアートでなく自然観察が目的だからアートは邪魔という中高年グループもいた)のに対して、島の人たちはアートに対して懐疑的、あるいは否定的な人が多かったことだ。
ここ数年、観光客は大幅に増えているのだが、人口300人の島にとって、観光客はごみの増加、渡船のキャパオーバー、マナーの悪さなどのマイナス面をもたらしていて、増加は必ずしも歓迎されていない。これはそもそも観光産業の島ではないので当然だ。若い島民はアートが定着して様々な交流が生まれたことを歓迎しているが、それでも観光客の増加によるマイナス面には困惑しているようだ。
学生も指摘しているが、佐久島は人口が減っているため廃屋や廃墟が多く、廃車やドラム缶、使われなくなった漁具や資材などが島の至る所に放置されている。漂流物のごみも多い。撤去して島外に運び出すのにコストがかかるからだ。アートがあり自然はきれいだが、決して公園のように管理されている島ではない。島の人の中には、アートや自然だけでなく、島の文化や歴史、廃屋やごみも含めてありのままの姿を見てほしい、という意見もあった。
島の将来について島の人たちは、アートのおかげで島に来る観光客・若い人が増えたので活性化しているが、限界集落としてはそれで人口減少が止まるわけではないので、いずれ島は滅びて行くだろう(アートは残っても)と考える人が多い。「島全体がアート、というのは抵抗があるが、将来はアートの島になっていくのだろう(その時には自分達はいない)」というお年寄りの言葉が学生の印象に残ったようだ。
アートによる地域の活性化を考える時、中山間・島嶼地域ではそもそも活性化とは何か、ということを考える必要がある。佐久島の場合、10年かけて島に根付いたアートは観光客・若い人の来島者増加という成果を上げた。島で出会った西尾市の若手職員の方は、訪れる人が増え、島民との交流により島民が元気になってきたのが成果だ、と言っている。
しかし活性化が最終的には過疎を食い止め人口を増やすことにある、という意味だとすればそれは難しいと言わざるを得ない。島には小学生が14人、中学生が8人いるが、高校入学と同時に島外に出て、多くは二度と帰ってこないだろう。観光客が増えたのだから観光産業をやればいいじゃないか、というのは部外者の無責任な見方だ。そもそも島の人たちは観光産業にあまり魅力を感じていないし、自給自足+アサリ漁による現金収入という島の暮らしに観光産業という選択肢が加わったとしても、前途に夢を描く若者にとってはまったく不十分であることは、自分がその立場におかれればわかることだ。
一方でこの島はあまりに魅力的なために、3年に一人ぐらいは島外から移住してくる人がいる。田舎暮らしに憧れる人にとってはあらゆる条件が整った天国のような島だ(都会に近いことも含めて)。移り住んだ人たちは島の人たちに受け入れられて、伝統行事や畑、漁を習ったりして溶け込んでいる。島の伝統を引き継ぐのはこの人たちかもしれない。
佐久島は今後もアートの島でありつづけるだろう。そして島を担うのは島外からの移住者になっていくだろう。アートは移住者をひきつける魅力になるだろう。移住者の多くはレストランやカフェ、居酒屋などを経営していて、観光客が来ることに抵抗は無い。
さて、アートによって島の住民が入れ替わる。これを究極の活性化というのだろうか?
しかし考えてみれば、この島は縄文、弥生、平安、近世と各時代にこの島に移り住んだ人たちによって築かれたのだから、それで当然といえば当然かもしれない。
筆者がこの島を訪れたのは3回目だが、いつ来ても魅力の尽きない島である。皆様もぜひ足を運んでいただきたい。
書き方に誤解を与えるといけないので少し補足しておくと、このアートプロジェクトは当初から「交流人口の拡大」というはっきりした目標を持ってスタートしており、その面では日本でも稀有の成果を上げたプロジェクトであるといえる。派手さはないが10年間じわじわとやってきて、この数年間でやっと成果がでてきたのだ。その経緯はこちらをご覧いただきたい。
http://artscape.jp/study/npo/1222092_2186.html
にもかかわらず、「交流人口の拡大」イコール「地域の活性化」ではないのではないか、そこにはもっと深い問題が横たわっているのではないか、というのが筆者の問題意識である。
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登録日:2011年 09月 28日 12:06:23
日本一楽しい仕事
2ショット写真のお相手は新里碧さん。平成23年度緊急雇用創出事業基金事業・あいちの離島情報発信事業・あいちの離島80日間チャレンジ、別名「日本一楽しい仕事」に応募して採用されたお一人で、9月1日から佐久島に着任して精力的に活動している。
お仕事の期間は80日間(3か月)、給料は愛知県の臨時職員として月30万円、お仕事の内容は、島の魅力、生活やイベント・観光情報を取材してブログやツイッターで発信する、というもの。3ヶ月間島で生活する。
新里さんの場合は特技を活かして漫画のブログで情報発信をしている。おもしろいのでぜひご覧いただきたい。
http://aichi-rito.jp/sakushima/
ツイッターはこちら。
https://twitter.com/#!/a_sakushima
ご本人が発信するだけでなく、ユニークな試みとしてマスコミの取材も多く(この日は島のお祭りを取材する彼女を名古屋テレビが取材していた)、愛知県のもくろみとしてはまずは成功だろう。
歴史、文化、自然、アート、食、季節の変化、そして島の人の人情など、(西東京市出身の)新里さんなりにとらえた多様で奥深い佐久島の魅力を、12月までどんどん発信してほしい。
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登録日:2011年 09月 17日 00:46:26
美しい日本の原風景
ここは日本国静岡県菊川市上倉沢、千框(せんがまち)の棚田。炎天下だがよく手入れされた田んぼの上を渡る風がさわやかだ。
ここは東海道線の菊川と金谷の中間、昭和40年代にたくさんあった棚田が担い手もなく失われつつあるとのこと。それをNPO法人せんがまち倶楽部が復元に努めている。写真手前の水車は電気を起こし、いのしし防止の柵に供給している。
いつまでも伝え残したい日本の原風景だが、それには協働による意識的な努力(地域の人々+NPO+ボランティア+行政)が必要なようだ。
http://www.tanada1504.net/
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登録日:2011年 08月 15日 00:15:14
中山間地の真実
日曜日は市内のある中山間地域の活性化についてミーティング。
メンバーは地域活動に熱心な定年退職者、中山間地域のNPOの人、パリダカールラリー出場選手で田舎暮らしをしている人、自然教育の活動をしている人、市民派市会議員、とりまとめるNPOの人、そしてアドバイザー役の筆者。
配られたたたき台の資料には、過疎化・限界集落・高齢化・産業経済の弱体化・生活サービスの弱体化などの課題に対して地域資源の活用、高付加価値化、エコツアー、伝統芸能の活用などの文字が踊る。
しかしそこで筆者が発した一言。「ところで山の人たちは本当に困っているの?山の人たちは町のNPOがエコツアーなどを送り込んで山を活性化しようとしていることをどう思っているの?本当のところは?」
そこで山の人から語られた本音とは?
「この地域の山の人は生活に困っていない。もともと豊かだった過去の蓄積があるので自分の親の世代まではまともに働いた経験のある人はいないほどだ。今でもこの地域から信用金庫が撤退していない。個人預金があるからだ。生活ができるので危機感はない。確かにコンビニなどないので不便だが、便利さを知らないので不便を感じていない。だから年寄りに何か不便はありませんか?と聞いても無いと答える。若い人は皆町を出ていくがそれが当然だと思っているのでさみしいとは思っていない。自分の高校生の子供も高校から市中心部の高校に通っている(下宿)。本人も将来山に帰るとは思っていない。ここは将来なくなることは小さい頃からの前提だ。車で2時間で市中心部に行けるので、町と山の両方に家を持っていて行ったり来たり二重生活している人が多い。仕事や学業は町で、お祭りのときだけ山に帰る。
だから、山の人は山に来る町のNPOなどの人たち(エコツアーや間伐材の伐採などに来るひとたちなど)を、いろいろやってくれてありがたい人たちだが、自分たちの楽しみのためにやっている人たちだと見ている」
筆者がたぶんそうではないかと思っていた本音が語られた。だから中山間地の振興というのは、実は町の人が山の資源を自分たちのために使わせてもらう、そのために山の人たちにも協力してもらい、そのことで山の人たちにも変化のある生活をしてもらうためのものだと考えればよい。町の人はいろいろな意味で山を必要とし、山が荒れれば困るのは町の人なのであって、山の人たちは困らないのだから。山を助けようなどと上から目線で行くとピントがはずれることになる。
ただしこれは東海地方など地理的にも経済的にもめぐまれた中山間地域の話であり、東北地方や四国地方などではまったく状況は異なる。意外と見過ごされているが、中山間地域にも格差があるのだ。
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登録日:2009年 01月 20日 01:01:25
近場の中山間地域④竹炭
くんまは天竜川の支流阿多古川沿いにある。そこからまた車がすれ違うのも困難な林道をたどって峠を越えると浜松市北区引佐町に出る。ここも2005年に浜松市と合併したところだ。
このあたりまで来るとだいぶ町に近く、山といっても里山だ。山あいの農家の庭先をちょっと入ると、うちの奥さんが参加している竹炭を焼くグループの炭焼き窯がある(写真)。時々集まって近くの竹林から刈ってきた竹を焼いて炭を作っている。炭を焼くかたわらバーベキューをしたりちょっとした畑をやったり、中高年が楽しんでいるらしい。この場所は近所の農家が提供してくれている。
地方都市は、町からちょっと離れると都会人が野遊びができる場所がいくらでもある。いままで紹介してきた「近場の中山間地域」はすべて政令指定都市の中にある。せっかく合併したのだから、町と山の交流を盛んにすることによって中山間地を活性化するこがいろいろ考えられるだろう。
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登録日:2008年 11月 18日 23:17:37
近場の中山間地域③蕎麦
くんま水車の里・かあさんの店名物舞茸の天ぷらそば。
そばは細打ちと太打ちが選べるが、写真は太打ち。舞茸も地元くんま産だ。
かみごたえのある太打ちはしっかりそばの味がする。
往々にして田舎はそばがおいしくても汁がまずいことがあるが、ここはしっかりだしがきいていておいしい。洗練されている。相当研究したのではないかと思わせる。
小鉢のこんにゃくも自家製だがこれがまたおいしい。スーパーで売っているものとは別物で、こんにゃくとはこういうものだったのかと思わせる。帰りに売店で買って帰ったが、つくりたてで温かかった。
村興しで食材を扱う場合に大切なことは、客が(めずらしいと思うだけでなく)おいしいと思うかどうかだ、という単純な事実を考えさせられる。
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登録日:2008年 11月 18日 17:43:39
近場の中山間地域②くんま水車の里
白倉峡から車のすれ違いにも苦労するような細い林道をたどり、峠を越えるとそこは浜松市天竜区熊(くんま)、有名な「道の駅くんま水車の里・かあさんの店」がある。名物の蕎麦や五平餅をはじめ、地元の食材や物産を売る店は、たくさんの観光客を集め、繁盛している。
過疎化の進行に危機感を持ったくんまのかあさんたちが20年前に始め、いまでは全国的に有名な村興しの事例になっている。運営するかあさんたちは2000年にNPO法人夢未来くんまを設立し、施設の運営にとどまらずさまざまな地域活動に取り組んでいる。
http://www8.ocn.ne.jp/~kunma/
過疎化はその後もじわじわと進み、中学校も小学校も廃校になり、子供たちは毎日スクールバスで天竜区中心部の学校に通っている。しかしかあさんたちのがんばりで、水車の里には多くのお客さんが来るようになり、売上は7000万円を超えるという。現金収入の少ない中山間地域で、かあさんたちの稼ぎは貴重だ。
かあさんたちのいつも変わらぬホスピタリティあふれる接客と、メニューや物産に施された創意工夫が、どこかへ抜ける街道に面しているわけでもない「どんづまり」のこの集落に、リピーターを引き寄せる。
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登録日:2008年 11月 18日 17:19:27
近場の中山間地域①白倉峡
ここ白倉峡は遠州(静岡県西部)随一の紅葉の名所といわれている。
天竜美林とよぶ杉、ヒノキの人工林の中を流れる一筋の清流。この渓谷沿いの5kmほどだけもみじをはじめ広葉樹が植わり、赤や黄と緑のコントラストが鮮やかだ。このあたりの広葉樹は紅葉の名所をつくるために植えられたそうだ。
ここは浜松市中心部から車で一時間半、旧磐田郡龍山村だったが2005年に浜松市と合併し、現在は浜松市天竜区龍山町。政令市の中にある手近な中山間地域である。
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登録日:2008年 11月 15日 23:21:10
お祭り
土、日は水窪祭り。
この時ばかりは町に下りた若い衆も戻ってきて友達と再会を楽しむ。どこにこんなに若い人がいたのかと思うほどのにぎわいだ。みんなそれほど遠くにいるわけではないので集まりやすいのだろう。
このお祭りの呼び物は50年ほど前から続いている仮装コンテストで、見物のために周辺の地域や浜松市中心部からも人が来るほど盛況だ。このときばかりは町のメインストリートも賑わうが、それでも10年前に比べれば人出は少なくなっているとのこと。
伝統芸能や観光行事ではなく、地域の人たちが自分たちで楽しみ町の活力を示すお祭りだけにいつまでも続いてほしいものだ。
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登録日:2008年 09月 16日 00:24:24
中山間地域
昨日は浜松市北部にある旧水窪町に行った。
静岡県磐田郡水窪町は2005年に浜松市と合併し、2007年の政令指定都市移行に伴い浜松市天竜区水窪町になった。政令指定都市といっても中心部から75km、長野県と接し、かつては林業で栄え町には芸者置屋まであったが、今は過疎化が進む人口3000人の静かな山村である。
云った目的の一つは4年前に廃校となった旧水窪町立西浦小学校(写真)の活用を考えることである。天竜美林と言われる見事な杉やヒノキの森に囲まれた丘の上にあり、国指定重要無形民俗文化財西浦田楽が行われる西浦集落に隣接する。129年前に開講したこの小学校は廃校(正確には休校らしい)時には12人が学んでいたが、現在では地元のNPOが無償で管理している。耐震補強も施され、電気、ガス、水道もあり、携帯電話もインターネット(ADSL)もつながる。内部はきれいに保たれ、教室も廊下も木の床でいかにも山の学校らしい雰囲気である。
さて、中山間地がなぜ人口が減るかといえば稼ぎ場所がないからである。水窪町もかつて栄えた林業は見る影もなく、お茶の栽培も価格下落で厳しく、公共事業(土木建築)も減る一方だ。もちろん生活するだけなら都会ほど収入が必要なわけではないが、子供の教育などに必要な現金収入を得られる産業がないので、みんな山を下り町で働くようになる。人口を維持する稼ぎ場所がないのだから(もう少し町に近い地域では車で通勤しているが)人口が減っていくのはやむを得ない。
もし人口をある程度維持することが必要ならば、ここに住んでいても稼げる人を連れてくるほかない、というのが筆者の考えである。たとえばアーティストなどもろもろのクリエーターやプログラマーはここに住んで創作し、成果物を都会で売ることができる。どこにいても稼げるこのような人たちを連れてきて入れ替えるのである。情報通信インフラはあるし、車で1時間走れば第二東名のインターもある。
小学校の活用もこのへんにヒントがあるのだが、問題は今後インフラを維持する費用をどうするかである。この費用負担問題を考えたとき、中山間地に住む人を連れてくる政策が正解かどうかはわからない。
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登録日:2008年 09月 14日 23:45:24
- プロフィール
- Ryuichi Himori
- (男)
- 詳細プロフィールはこちら
- 団塊世代の会社員から、定年を1年半後にひかえ、大学教授に転職しました。肩書きは日本文化政策学会理事、市民フォーラム21・NPOセンター常務理事、(社)指定管理者協会理事長などいろいろ。公共経営・行政経営(NPM)、文化政策、アートマネージメント、NPO論などを研究しています。
というような立場を離れて、勝手なことを書かせていただきます。
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