惜しかった。。高橋大輔・・・母の気持ち。

<トリノ五輪・フィギュアスケート男子>フリースケーティング

【トリノ/イタリア 16日 AFP】トリノ五輪、フィギュアスケート男子シングル・フリースケーティング。ショートプログラムで21位につけた中国のチェンジャン・リー(Chengjiang Li)は、この種目で13位となる121.98点を記録し、合計182.21点で16位に終わった。(c)AFP FRANCK FIFE

AFPBB News


2月16日の岡山県倉敷市の倉敷翠松高校。そこにはトリノ五輪男子フィギュアスケートフリーにのぞむ高橋大輔選手の姿を見守る、上品な淡いピンク色のスーツ姿の母・清登さんの姿がありました。
高橋選手が五輪出場を決めた直後に清登さんはそのスーツを買ったそうですが、清登さんが自分の洋服にお金を費やしたのは実に10年ぶりとのことです。一流のスケート選手を育て上げるのにかかる費用は決して安くありません。高橋選手の両親は生活費を節約して息子のスケート教室の費用を捻出したそうです。そんな中、ついに息子が五輪の切符を手に入れる日が来ました。そして清登さんは自分へのご褒美として、そのスーツを買ったことと思います。

財布にいつもより少し多めにお金を入れて洋服店に向かう時の清登さんの姿を思うとき、その弾むような気持ちが伝わってくるようです。そしてきっと、その新調した洋服を洋服箪笥にはしまわず、ずっと目に留まるところに掛けて、息子の出場する日を待ち続けたことでしょう。そしてついに、16日の朝を迎えました。そのピンク色のスーツを着て一通りの身だしなみを整え、鏡の前で出発前の最後のチェックをする清登の姿、それは緊張感の漂う凛とした美しさを放っていたことでしょう。

10年ぶりに洋服を買う決意をしたのは、きっと「息子もたくさんテレビに映ることだしそうなると自分にも取材がくるだろうから、お洒落しなきゃ」といったような気持ちもあったことと思いますが、もうひとつ、「世界の晴れ舞台で舞う息子の姿を、自らも身を正し、正装して見守りたい」という厳かな思いもあったにちがいありません。清登さんに備わっている高い品格の一端を垣間見たような気がします。

何年か前に一度だけ、高橋選手から清登さんに「もうスケートをやめたい」と泣いて電話があったそうです。そんな息子に対し清登さんは、「これまで世話になった人たちに申し訳ない」と言ってその言葉を退けたそうです。素晴らしいお母様だなあと思います。この日を期に高橋選手は、「自分の為」にスケートをすることから、「自分の為もそうだけど+皆の為」にスケートすることを知ったのでしょう。
 
オリンピックを題材にした「炎のランナー」という映画の主人公のユダヤ人ランナー・エイブラハムもそうでした。彼は初め、「ユダヤ人であるという理由で自分を蔑んできた人を見返してやるのだ」という個人的で内的な動機で、ランナーとして戦い始めるのですが、やがて、「愛する人を喜ばせるため」というもうひとつの動機を見出します。そして彼はランナーとしてもう一回り強くなりました。そもそも、アスリートのパフォーマンス能力は、そのモチベーションを外的要因に見出したほうが高まると一般的に言われているそうですが、高橋選手もエイブラハムも、我々にアスリートとしての成長と、人間としての成長を見せてくれた愛すべきキャラクターです。

2月16日、高橋選手は見せ場の4回転ジャンプで転倒し、惜しくもメダルを逃しました。そして我々は早くも、4年後に高橋選手がメダルを取ることを期待し始めめています。それにしても途方もなく重いものを高橋選手は背負い込んだものだなあと思います。時期冬季五輪大会でのメダル獲得を目指して、4年間努力をし続けることを強いられるわけですから。でもきっと彼なら、その為すしべき努力を見事にやってのけることでしょう。なぜなら、すでに人のためにスケートすることを知っているし、それに何よりも、あんなに素晴らしいお母さんがいるからです。

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登録日:2006年 02月 20日 12:04:35

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プロフィール
小林浩隆
(男)
■肩書き:映像ディレクター
■プロフィール:早稲田大学卒業後、サラリーマンを経て映像ディレクターに。主な作品に、「初恋のふる里」、「夏の疼き」、「野村不動産PROUD」など。
■得意ジャンル:ワイドショー的社会論。
■一言:例えばライブドアに地検が入った当夜、パパエモンは地元派出所に駆け込み息子の安否を問いただしたそうです。愛ですよねえ。そういうのを取り上げます。
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