2006年 03月 29日
「アメリカ人になる」ということ
【ロサンゼルス/米国 27日 AFP】26日、ハリウッドフリーウェイ(Hollywood Freeway)に人々が集まり、不法入国者に対する恩赦と米国内への移民を大幅に制限する法案の取り下げを要求した。この法案は不法入国者すべてを摘発することを目的としており、米国内で働く人すべてに対し身分証明を義務付け、また米国とメキシコの国境沿いに壁を構築する内容も記載されている。写真は、法案に抗議する人々。(c)AFP/RICH SCHMITT
<HR4437(下院4437号議案)>
ロサンゼルスの大通りを埋めて行進している彼らが反対している「HR4437(下院4437号議案)」は、簡単に言うと「出入国管理」がさまざまな面において大幅に強化されるという内容を含んでいる。国外退去者の定義の拡大と、強制勾留措置の拡大、そして、市民権取得のための条件の制限などであり、くわえて、州や地方の警察に対して移民法に基づく法的な行使力の権限を付与し、移民局に対する法的な調査権限を強化させるとしている。さらに、メキシコとアメリカの国境のフェンス設置をより多くの場所で認めるという項目も含まれている。つまり、この議案は「これ以上は新たなメキシコ人(などの不法移民)を入国させず、いま不法に入国しているメキシコ人を国外退去させる」という強い意志に支えられていることがわかる。
<移民とアメリカの活力>
実際、東京の人口に匹敵する人々(約1100万人)が不法移民で、その半数がメキシコ系だと言われているアメリカにおいて、この問題はいつまでもうやむやにできるものではないだろう。しかも、「不法」というからには法律に違反しており、取り締まるべき対象であることは間違いない。しかし、アメリカという国家がかつての帝国主義的な政策のなかで、最後にメキシコからの広大な領土割譲によって成立したことを考えると、物事の可否はそう簡単に決めることもできない。先住民を暴力的に駆逐した北アメリカの土地に、おもにヨーロッパからの移民が少しずつ流入し「アメリカ人」へと推移してゆく過程そのものが、アメリカ国家が成立する過程であったからだ。すなわち、アメリカはつねに新たな移民を吸収しつつ変化し続けてきたのであって、「出入国管理」を必要以上に厳しくすることはアメリカから活力を奪うことになるのではないだろうか。
<そこはもともと誰の土地だったのか?>
メキシコアメリカ戦争(1846-48)は帝国主義国家アメリカの総仕上げとも言える戦争だった。そのため、メキシコ人は、この写真でプラカードを掲げているように「私たちが国境を越えたのではない。国境が私たちを越えたのだ」という意識をもち続けることによって、アメリカの南西部を「精神的な故郷」と位置づけようとしている。しかしまた「そこはもともと私たちの土地だった」という主張が無条件に認められるならば、フセインのクウェート侵攻も正当化されるどころか、世界中のほとんどの土地が終わりのない議論の俎上にあげられることになるだろう。パレスチナ問題も「もともとはここは誰の土地なのか?」という同じ問題を抱えており、島国である日本でさえも、領土問題は隣国との友好関係を築くうえにおいて頭の痛い問題となっている。だからといって、南北アメリカ大陸はネイティウ゛アメリカンのものだった、と言っても何も解決はしない。したがって「もともとはある時代において私たちの土地だった」ことがたとえ事実であったとしても、それが理由で「不法」に国境を越えたり占拠したりしてもいいという理由にはならない、ということになるだろう。
<「アメリカ人になる」こと>
ブッシュ大統領は「会話程度」にせよスペイン語を話す最初の大統領であり、それによってヒスパニックの共感を得て、多くの票を獲得してきた。22世紀には逆に「会話程度」にせよ英語もできるメキシコ系の大統領が選出されることになるだろう。ただ、たとえそうだとしても、「現在のアメリカにおいて」英語をまったく話せないことは、やはり問題があると私は考えている。「アメリカ人になる」という意志を持たずにアメリカに住むこと、つまり「不法に入国したうえで英語を話す意志もなく自らの文化を守り続けることにだけ関心を持ちながらアメリカに住むこと」は問題があるということだ。アメリカが新たな移民を抱え続ける特殊な国家であるとしても、アメリカとしての国家の主体の在処をどこに求めるかはますます重要な問題となってきている。
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登録日:2006年 03月 29日 17:38:37
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