Pan's Labyrinth

<第49回メキシコアカデミー賞>「パンズ・ラビリンス」が9部門を受賞 - メキシコ

【メキシコ/メキシコ 21日 AFP】今年で第49回を迎えるメキシコアカデミー賞(XLIX Annual Mexican Academy Awards)の授賞式が20日に開催された。12部門にノミネートされた映画「パンズ・ラビリンス(Pan’s Labyrinth、原題:El Laberinto del Fauno)」は最優秀作品賞など9部門の受賞を果たした。写真は、最優秀作品賞のトロフィーを掲げる主演女優のマリベル・ベルドゥ(Maribel Verdu)。(c)AFP/Luis ACOSTA

AFPBB News


監督・脚本・プロデューサー:ギレルモ・デル・トロと、プロデューサー:アルフォンソ・キュアロンのメキシコ人コンビによる新作『パンズ・ラビリンス』を、有楽町マリオンでの試写会で見た。会場に着いてみると大変なにぎわいで、人混みが嫌いな私は一瞬「帰ろうか」と思ったくらいである(帰らなくてよかった)。第79回のアカデミー賞で3部門(撮影賞、美術賞、メイクアップ賞)を受賞したとはいえ「ファンタジー」があまり好きではない(よくわからない)私はたいして期待していなかったというのが本当のところ。フランコ政権下の1944年のスペインという「現実の世界」と「不思議の国のアリスの(ような)世界」を「パン」という古代ギリシアの神によって結びつけるアクロバティックな試みがうまくいっているとはとても思えなかったからである。

この映画では冒頭から大量の血が流される。あらゆる場面でさまざまな理由によって血が流される。私たちは人間に宿る普遍的な「自然(血)」を媒介にして時間と空間を越え、そしてお互いに結びついていることを教えられる。映画を見ながらそんなことを考えさせられた。映画を見ながら「考える」なんて何年ぶりのことだろう。何度もグロいシーン(パン自体の形象が不気味だし、手に目玉がついている奴もグロすぎる)や、人が惨殺されるような残酷な映像が流れるのだが、それらは私たちを取り巻いている「自然」の一部としての残酷さであると不思議と納得してしまう。計算された論理と映像美に圧倒されながらそれらを受け入れてしまうのである。イギリスでは「R指定」だったこともたしかにうなずけるのだが、こういうグロさと残酷さが子どもたちの目にどのように映るのかにも興味がある。もしかしたら、こういうむき出しになった人間性と自然が備えている残酷さこそが芸術や文学の根底にあり、それらは子供のころにこそ接しておくべきものなのではないだろうか。子どもだけが幻想と現実のパラレルワールドを越境できることをこの映画も教えているではないか。

メキシコ人コンビだからこそこのような驚異的な映画が製作されたのだろうか。ハリウッド映画とはもちろん異なり、どんな映画とも何かが違っているこの映画を通して「メキシコ」の何たるかについて思いを馳せることができるかもしれない。だから、メキシコ研究者は必見の映画。デル・トロは『ミミック』『デビルズ・バックボーン』『ブレイド2・3』『ヘルボーイ』の監督として知られ、キュアロンは『天国の口、終りの楽園』『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』の監督である。『パンズ・ラビリンス』はスペイン内戦時代を描いているという点で『デビルズ・バックボーン』の続編とも言える。

なぜ内戦時代のスペインを舞台に選んだのか? パンフレットに掲載されているデル・トロの言葉。「ファシズムは究極の恐怖を象徴している。だから大人のためのおとぎ話を描きだすにはまさに理想的な題材だった。というのも、ファシズムというのは純血の曲解であり、子ども時代に繋がると考えているからだ」。「怪物」なのは、地底の奥深くに住む化け物ではなく、ファシズムにとりつかれた「大尉」の方なのであり、その一点において現実はファンタジーを凌駕する。通常は越えられない深淵に橋を架けることができるわけである。そうして、人間が生みだしてきた想像上の怪物が、人間性の過剰な露呈の化身として把捉される。

「闇」に包まれた「泥水」の映像を美しいと感じてしまうこの映画は、現実をラビリンスへと変えることに成功している。ラビリンスに迷い込んだ私は、なぜこのような映像と物語を見て自分が感動しているのかがわからなくなるのである。これが「ファンタジー」というものならば、私はファンタジーの大ファンだと自信をもって言うことができる。

今秋、恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー。
http://www.panslabyrinth.jp/main.html

コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2007年 04月 26日 21:07:13

コメントを追加

Trackback

この記事に対するトラックバックURL: