考えることは抽象化することではない
【5月25日 AFP】病気療養中のキューバのフィデル・カストロ(Fidel Castro)国家評議会議長(80)は、24日付の共産党機関紙グランマ(Granma)に寄稿し、順調な回復ぶりをアピールした。
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(c)AFP/Isabel Sanchez
ある用事で急遽、品川を往復することになり、うちの本棚にあった本をとりあえず手にとって出かけたので、普段読まないような本を読むことができた。変に時間があると、チカーノ関係の洋書を読まなければという強迫観念に襲われてしまうので、たまにこうやって気ままに本を読むのはいいことだ。
というよりも、そういう本のなかにこそ、私にとってもっとも重要な示唆が含まれているはずである。趣味で買った本を積んでおき、そのなかから無意識に手にとった本との出会いから新しい発想は生まれる。
そもそも「チカーノ」は私のいわゆる「専門」ではない。大好きなサウスウエストに出かけるための言い訳であり趣味である(言い切りすぎか)。私は基本的には「外国趣味」だけから勉強することが嫌いなのである。「西洋への憧れ」のようなものを引きずって勉強をしたくはない。
傍観者の立場からくる脳天気さと無責任さは、個人的には「趣味」の範疇だと考えている。私がチカーノについて知りたいと思う理由の一つは、私たち自身をよく知るための発想を得るためにある。泉鏡花の小説を読むこととあまり変わらない。
出かける際に手に取った一冊目は、中村昇『小林秀雄とウィトゲンシュタイン』で、もう一冊は、田中宏和『丸山真男の思想がわかる本』である。内田隆三『国土論』は分厚いのであきらめた。2冊とも読了することはできなかったが、大変おもしろかった。
この日は、帰りがけにユーロスペースで、オリバー・ストーン監督の『コマンダンテ』(フィデル・カストロのインタビュー)を見ようかと思っていたが、どうでもよくなってしまった。
やはり、本屋で見かけて少しでも気になったら、とりあえず買っておくのがよさそうだ。ネットを通して買う本の傾向と、リアル書店で買う本の種類は若干違うので、定期的に本屋へと足を運ぶ必要がある。本屋の方がアトランダムな出会いからくる「ぶれ」が大きく趣味に走りがちなところがいい。それでも、金額的には、前者と後者では9:1くらいの割合で、ネットの方が断然多いだろう。
小林秀雄については「初めてひとり暮らしをしたときに『小林秀雄全集』だけ持っていった」と以前書いたことがある。よく理解できないながらも直感的に10代の頃の私を引きつける「何か」があった理由は、この歳になってみるとよくわかる。
先述の『小林秀雄と〜』はそういう本である。小林秀雄の得も言われぬ「すごさ」を、こなれた読みやすい文体に載せて読者に知的興奮とともに届けてくれる。私が中学生のときに小林秀雄の文章をひたすら原稿用紙に書き写していたことの意味が少しわかったような気がした。
「大切な事は、真理に頼って現実を限定する事ではない、在るがままの現実体験の純化である。見るところを、考える事によって抽象化するのではない。見る事が考える事と同じになるまで、視力を純化するのが問題なのである」(小林秀雄)
これは大変な労力をともなう作業である。
考えることは抽象化することではない!
自らへの戒めの言葉としたい。
そういえば、小林秀雄の講演を収めたCDを聞いていたら「ハイカラなものばっかり読んでいてはダメです。柳田さんの本を読みなさい」と述べていたところがあって、私が柳田国男(それとベルクソン)を読むようになったのはほんの最近(それでも10年前か)のことだけれども、結局、小林秀雄が言及していたような人びとに戻ってくるところもなんだかおかしい。
もう一冊の『丸山真男〜』の方は、冒頭から「流行のものを追って勉強することの弊害」を指摘し「劣化しているのは大学生ではなくて教師の方ではないのか」というアピールから始まる熱い本である。私が10年ぶりにアカデミックな世界に戻ってきたときは「カルチュラル・スタディーズ」がはやり始めの頃で、著者の言わんとしていることは納得できる。
最後に掲げられている参考文献に対するコメントにも「ずらり並んだ駄論文集」などと書いてしまうのだが、逆に著者の誠実さを映し出していて清々しい。
「左翼」や「右翼」のような「ものいい」自体もそうだし、世の中がどちら寄りなのかも含めて、象牙の塔の内部と外部は別世界である、と私も思う。著者(1957年生)に言わせれば当時のキャンパスは一歩足を踏み入れれば「ソ連」だったというが、いまも状況はたいして変わっていない。大学教員の言葉にピンときている人びとは、世の中にそれほど多くいるわけではないことを知るべきだろう。もちろん、自戒を込めての言葉である。
しかし、無性に丸山真男が読みたくなる本だなあ。
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登録日:2007年 06月 05日 01:04:09
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