戦後から遠く離れて
【6月1日 AFP】自由民主党の中川昭一政調会長は1日、安倍晋三首相が憲法改正問題を7月の参議院選挙の争点とすることに意欲を示しているとの見方を示した。
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(c)AFP
加藤典洋が『論座』の6月号に寄稿している「戦後から遠く離れて:わたしの憲法「選び直し」の論」を読んだ。「『敗戦後論』から10年」がキャッチコピー。
私が勉強をリスタートさせたころに「カルチュラル・スタディーズ」が一世を風靡していたことを少し前に書いたが、加藤氏の『敗戦後論』も世の中をにぎわせていたことを思い出した。
加藤氏に対しては、偉大なるアマチュアリズムとして愚直に対象に接近し、思想を基盤から構築していく姿勢には共感することが多いとはいえ、その愚直さが私のような気の短い者には耐えられないことがある。
今回も「私は内田樹と同じ意見です」と周りの者におしゃべりすれば終わりのところを、わざわざ「編集部に申し出る形で書かせてもらった」そうである。きっと、飛ぶ鳥を落とす勢いの内田さんの意見に感銘を受けて書かれたのであろう。
しかし、結果的には、内田さんの理知的で引き締まった文章をだらだらと引き延ばしただけの間延びした文章になってしまい、私は読み通すのに5回くらい他の本に浮気してしまった。
しかも、内田さんの意見の紹介のあいまに、名古屋大学の学生の修士論文、鶴見俊輔、吉本隆明、ハーバート・ビックス、太田光などをつまみ食いして、人の意見を借りただけの「よく勉強しました」的な文章になってしまっているのが残念である(いつものことだが)。
さらに、対象(安倍首相や憲法9条など)について書かれた「評論」だけは人一倍読み込んでいるにもかかわらず、一方で、対象そのものが発信している薄っぺらな新書さえも目を通そうとしないことを読者は知らされる。
「『美しい国へ』は読んでいないので踏み込んだことは言えないが、新聞、テレビで見る限り、その意志はなかなかに強そうに見える」。
おそらく、人の意見を組み合わせて自分の意見を作り上げるのがこの人の芸当なのだろう。さらにたたみかけるようにして、その『美しい国』を支持する人を「知恵の足りない人」と形容しているところに遭遇して、読者は愕然とさせられることになる。
「「素晴らしい」ものとして語られている限りは、安倍首相の「美しい国」と一緒だ。どちらがよいか。筆者は、憲法9条の「素晴らしさ」を取る。しかし、それだけの比較であれば、「美しい国」を守る危害を取る<知恵の足りない人>も出てくるだろう」。
アフガニスタンで活動されている中村哲さんも、とてもふさわしいとは言えないようなコンテクストで言及され、しかもその内容も頓珍漢である。そして、吉本隆明さんの文章をわざわざわかりにくくパラフレーズしているところにも驚かされる。結局、最後の方で(最初からそうすればいいのに)内田樹の意見の紹介に終始してフィニッシュ。
朝日新聞の「文芸時評」もそうだが、この人が重宝されている理由が私にはいまひとつよくわからない。きっと文壇の政治力か何かが関係していて、私のような素人にはわからないことが起きているのだろう。しかし、だからといって「早稲田大学教授」のご意見を鵜呑みにするほど私ももう若くはないし<知恵が足りない>わけではない。
彼が頼りとしている内田樹のレトリックはたしかに卓抜なのであるが、9条という「世界遺産」にしたいくらいの「理念」をこちら(だけ)で高らかに掲げて自己満足できてしまう感覚が私にはどうしても納得できないのである。それなら、戦争マニア(?)の矢作俊彦の意見の方がはるかに現実的で説得力がある。
1月号の『すばる』誌上で、二人はさんざん意見が衝突したあげく(というよりも、矢作がしゃべりまくり)次のような会話にいたる。
内田:この曖昧なシステムで戦争を回避してきたという実績がある以上、今以上に戦争に巻き込まれるリスクの少ないシステムがあると言われても、日本人はにわかには同意しないですよ。
矢作:僕が言っているのは、この曖昧さを排除しないと、もう一回戦前と同じことが起こるということです。(略)たとえばノモンハン事件ね。関東軍には交戦規定がない。法務官がいない。軍隊を法的に組織として統制するものがない。関東軍というのは、ほとんどいまの社会保険庁みたいにグズグズの組織なんです(ちなみに、この対談は去年)。自衛隊もちゃんと法律のなかでがんじがらめにして、仕事はさせる、仕事じゃないことはさせない。そういうふうにしろと、僕は言ってるの。
(略)
内田:日本のシステムというのはもともと法律で縛って、原理原則で詰めるという質のものではないでしょう。日本の政策決定要因って、最後はいつだって人情じゃないですか。
矢作:あなたは間違っているよ。自衛隊に限らず日本人は法的にがんじがらめにしない限り危険ですよ・・・(以下、矢作しゃべりまくり)
この場には、高橋源一郎も同席しているのだが、発言の浮世離れ感が際だっていて感動的でさえある。石原慎太郎が知事に再選されて立ち直れないほどに意気消沈されている方々もそうであるが、彼らのこの浮世離れ感はどうしたものだろう? 石原慎太郎はクーデターでいまの地位についたわけではないし、あの頼りない対立候補を選ばなかった都民の方に「常識」があると私は思う。
加藤氏のエッセイの最後の結論はこうである。「左翼性からだけでなく、戦後からも遠く離れ、自分の理念の場所からではなく、ふつうの人のふつうの不安と希求の場所から憲法9条について考えることが、これを擁護するにあたり、必要なことである、と思う」。
文中で「ふつうの人」を連呼しているにもかかわらず、普段「ふつう」の人と接することなどほとんどないのだろうと察することができる。まるで「国民のみなさまのために」と連呼している国会議員のようではないか。人の意見を借りるだけでべつに言うことがないのなら黙っていればいいのに。
コメント[5], トラックバック[0]
登録日:2007年 06月 11日 20:04:07
コメント
面白いです! 5分くらい笑っていました。
といいますか久し振りに私にもわかるネタだった・・・
ヨーコ @ 2007年 06月 13日 03:00:22
ありゃりゃ、本人はいたって真面目に書いたのに、笑ってもらえるなんてありがたいことです。そうか、こういうネタがいいのね。
imura @ 2007年 06月 13日 09:27:18
いやなんか巧まぬユーモアがあるというか・・・。
チカーノとかラティーノについては、自分の「立ち位置」を知るために知りたいって感じなんです。日本国内しか知る機会がない人間にとっては貴重な情報です。歌舞伎もチカーノもシリコンバレーも私にとっては同じなのです。今福センセのおっしゃることととかも。
imuraさんのエントリーは専門性が高いので私にはちょっとむつかしいのです・・・。専門性の高い部分はそのままで、たまに私みたいな人向けのもやってみてもらえるとうれしいです! って自己中心的ですが(笑)
ヨーコ @ 2007年 06月 13日 10:50:26
きっと、この文章に登場する人びとがおもしろいんでしょう!
私自身はおもしろく書こうとすることは最初からあきらめているので、なるべく「わかりやすく」書こうとは気をつけています。「専門性の高い部分」も読んでもらえるようにしなきゃなあ。
私にとっても、歌舞伎もチカーノも柳田国男もみな同じです。人は「他者を知ろうとするその姿勢」のなかではじめて、自らを相対化して知ることができると思っています。
imura @ 2007年 06月 13日 23:50:05
>ゆうさん
一生童貞はいやだし思い切って前にゆうさんに教えてもらったコレやってみました!
http://mooootant.net/honey/z5ZzzSnO
こんな僕でもカワイイって言って貰えて童貞を卒業出来ただけでも十分なのに、20万も貰えてまるで夢のようです!!!
男として自身がつくまで、ここでしっかり勉強してお金も貯めようと思います!
本当にありがとうございました!!!!
> ゆう 2008/11/20(木) 21:38:19
>
> 普通さん
> 俺は最近週に一回しかやってねーけどそんなに悩んでるんだったらコレやってみたらどう?
> http://mooootant.net/honey/z5ZzzSnO
普通s @ 2008年 11月 22日 13:51:08
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