kokomo
【エルパソ/テキサス州 18日 AFP】メキシコ側国境の都市シウダフアレス(Ciudad Juarez)で女性が殺される事件が相次いで起こり、これまでに数百人が犠牲になっているが、事件は現在、未解決のままである。3月に行われたメキシコ法務省の調査では、シウダフアレス市は1人当たりの暴力件数が最も多い都市であるとされている。写真は15日、テキサス(Texas)州の国境の町エルパソ(El Paso)で、シウダフアレス市で起きた女性殺害事件を伝える巨大な壁の絵と、その前を通り過ぎる女性。(c)AFP/HECTOR MATA
いままでの海外への行き先を考えてみると、アメリカ西海岸が3割、東海岸が3割、メキシコから南が2割、東南アジアが2割といったところだろうか。東海岸から入ってエルパソまでたどり着いたり、あるいは逆に西海岸からはほとんどの場合エルパソまで車で行くので、これは「訪れた地域」というよりも最初に飛行機でどこに入るかの割合である。いずれにしても、アメリカ国内ではほとんどの場合、車に乗ることになる。誰かと一緒の場合もあるし、一人の場合も多い。そういうときに、日本では聞かないラジオの声に耳を傾ける。FM雑誌を買い「エアチェック」をしていた時代ももはや昔語りになってしまった時代に、アメリカとラジオは私のなかではとても近い。「アメリカにいる」という感覚と「車内からの風景」や「ラジオの響き」は密接に結びつき、訪れた場所とその時に流行っていた音楽は私の記憶のなかで一緒くたになる。マイアミから車で訪れたキーウエストと、ビーチボーイズの「ココモ」(1988年!)は私の記憶の貯蔵庫ではいまでも同じ場所に居座っている。しかし、ラジオで流されるのはもちろん音楽だけではない。さまざまな出自を抱えたさまざまな考えをもった人間の言葉も、電波を通して不特定多数の人びとに届けられる。その言葉は誰によって語られているのか。そんなことはほとんど誰も意識しない。いまの日本にいるとなかなか気づかないが、ラジオはかつてプロパガンダの最大のツールとして利用されてきた。視覚からの情報がない分、視聴者は洗脳を受けやすい。しかも、テレビに比べてもはるかに雑多で大量の言説が、軽い気持ちで(つまり本音で)日夜放たれている。しかし、大半のマスメディアは支配層によって牛耳られているから、ラジオが自然と(意図的に?)まといがちな負の影響力を、メキシコ系アメリカ人は監視の対象とせざるを得ない。耳を疑うような人種差別的な言説が横行していることを彼らは弾劾し、それらがヘイトクライムの温床となっていることに警鐘を鳴らす。現実に、黒人たちが大量にリンチされた時代と同じように、メキシコ系アメリカ人はいまでもいわれなき殺害の対象となっている。残虐にそして大量に殺され、さらにはその数は急速に増している。それらの実態をラジオが報じることはほとんどない(ヘイトクライムを助長しているのだから当たり前だが)。一方で、洗脳を受けやすい若者たちは相対化の作業をすることもなく、大した理由もないのにメキシコ系の人びとを嫌悪し続ける。インディアンへの嫌悪感を醸成した「いにしえの精神構造」とじつは何も変わってはいない。要職についたメキシコ系の人びとが殺人の予告を受けた例はいとまがなく、いまではアントニオ・ビリャライゴーサもその対象となっている。たとえば「KABC 790-AM」はこのメキシコ系の市長を口さがなく罵倒し、少しの敬意を表することもなくネガティブキャンペーンを展開している。いうまでもなく、市長だけではなく、その他のメキシコ系の有名人から一般市民までもが「嫌悪するべき対象」として日々人びとにすり込まれている。これらの放送局によるネガティブイメージのたれ流しは、今年、市民権を持つメキシコ系女性への病院の診察拒否という形となって事件となった。彼女はメキシコ系であることから不法移民であると病院側から勝手に捉えられ、何の処置も施されることなく出血多量で亡くなった。メディアが誰の手の中にあり、どのような思惑で使用されて人びとの無意識を形成しているのかを、今まで以上に注視しなければならない。そう考えさせる事件であった。私たちは得てして、何のチェックもされずに垂れ流されている(じつは巧妙に操作されている)情報をもとに意見や感情を形成している。どのような情報であろうともつねに相対化し、できるだけ現実そのものの近くにいようと努力しなければ、自然と「強いもの」に巻き込まれてしまう。そのことに対してさらに意識的になる必要があるだろう。
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登録日:2007年 08月 24日 13:00:48
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