ポストモダンを越えて
【6月29日 AFP】「人類による土地開発で、もはや地球上には未開の地はほとんど残っていない」とする米自然保護団体Nature Conservancyの研究結果が、米科学雑誌「サイエンス(Science)」に発表された。
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(c)AFP
『文学界』(10月号)に掲載されていた田中和生の「ポストモダンを越えて:高橋源一郎氏に答える」を読んだ。私よりも10歳も若い田中氏が、2年前に出版した処女作『あの戦場を越えて』を、とてもおもしろく読んだ記憶があったからである(いま、本棚の奥から引っ張り出してみたら、やはり無数の傍線が引いてある)。
その本は、チカーノ文学の読解においても、とても参考になった。たとえば、作品の「舞台」と「固有名詞」を変えただけでエキゾチックな気分に浸っている人たちに対して「それは違うだろう!」と思っていた私を元気づけてくれたのである。
つまり、チカーノ文学とは、ローライダーやニューメキシコやホセが出てくればいいわけではなくて、むしろそのようなチカーノを表現する「記号」がなくても、チカーノ的な状況を浮き上がらせなければならない。エキゾチックに惑溺するだけではダメなのである。とはいえ、エキゾチックに感応する感性がなければ何も始まらないが。
さて、その著書でも「ポストモダン」と「高橋源一郎」はキーワードだった。高橋源一郎の小説を読んだことのなかった私は「この人は読まなければいけない作家なのか・・」と思い知らされたことをよく覚えている(が、いまだに読んでない)。
蛇足だがつけ加えておくと「若くして」という発想は私にはない。10代でピークを迎えるボクサーがいれば、30代で全盛期を迎えるボクサーがいるように、年齢を重ねて習熟する面と喪失する面が、ある。「書く」という行為においてもあると思う。
田中さんという人は「お若いのに」妙に器用な人で、(いやらしいくらいに)幅広く文献に目を通し(いやらしいくらいに)それらを咀嚼していることに驚嘆させられる。きっと読んだテクストは端から、頭のなかのきらびやかなマップに次々とバシッと布置されていくのだろう。
ただ、過剰に「器用」なところがあって、評論を読むというよりも「評論分野の芸術作品」を読んでいるような気分にさせられる。もちろんこれはほめ言葉で、内容よりも読むこと自体が楽しいなどという評論家はそれほど多くない(いや、ほとんどいない)。小説家なら「原りょう」みたいなものである
今回読ませてもらった文章も「あこがれの高橋源一郎」と戯れることができた喜びで、「論争」というよりも田中節全開の「器用さ」が前面に出ていて気持ちがよかった。これはもう一種の「芸」である。
ここまで書いてからちょっと気になったので、田中氏が『三田文学』の新人賞をとったときの選考座談会(荻野アンナ、室井光弘、巽孝之、武藤康史)を覗いてみた(これは押し入れの奥にあった)。いまから7年前の『三田文学』。ちなみに受賞作のタイトルは「欠落を生きる:江藤淳論」。
そこで荻野アンナがやはり彼の「器用さ」についてすでに述べていた。「この人は、自分のうまさをいかにして抑制していくかというところも今後の課題かなと思います・・スラッときまるはずの一行がまとまらずに苦しんで何十枚も書くというふうな苦しみ方を今後されると、さらに伸びていかれるだろうなと思います」。
もちろん、これだけ最初から完成度が高いものを読まされたら、このくらいのことしか言うことは残ってないんだろうけど。
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登録日:2007年 10月 05日 02:06:34
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