ゲリラの後に テロリストが来た

ハマス、ラマラ市で選挙戦勝利の祝祭開催 - パレスチナ自治区

【ラマラ/パレスチナ自治区 1日 AFP】30日、イスラム原理主義組織ハマス(Hamas)はヨルダン川西岸のラマラで、1月25日に実施されたパレスチナ評議会選挙で与党ファタハ(Fatah)に勝利したことを祝う祝祭を開催した。写真は手を叩き歓呼の声をあげるハマス支持者の女性たち。(c)AFP/JAMAL ARURI

AFPBB News


<「テロ組織」とは何か>
1月25日のパレスチナ評議会総選挙で、イスラム原理主義組織「ハマス」が圧勝しました。評議会は、いわば「パレスチナ国民議会」です。ハマスと「戦争」をしているイスラエルが「ハマスはテロ組織だ」というのは、分らないでもありませんが、欧米諸国の政府にも、「テロ組織」のハマスは交渉相手として認められない、という考え方が強いと聞いて、ハタと立ち止まってしまいました。そもそも「テロリスト」とは何ものか。ぼくは基本的な疑問に突き当たっているのです。

<オリーブと銃をかざして>
1974年11月13日、PLO(パレスチナ解放機構)のヤセル・アラファト議長が初めて、国連総会の演壇から世界に語りかけました。「きょう私は、オリーブの枝と自由の戦士の銃を持ってやってきた。私の手からオリーブの枝を落とさせないでほしいToday I have come bearing an olive branch and a freedom fighter's gun. Do not let the olive branch fall from my hand」。頭に波紋様のカフィーヤ(アラブ男性の被り布)を巻いた「自由の戦士」の登場には、和平への期待を抱かせるに十分なインパクトがありました。その後アラファト議長のトレードマークになったカフィーヤと国連総会場のミスマッチが、ドラマティックで、美しい光景ではありました。それだけにリアリティが希薄なようにも思い、<かくてカリスマ幻想は作られた>などと、余計なことを考えたりしました。

<相次いだハイジャック>
国連総会でパレスチナ人民の代表と認められたPLOでしたが、イスラエルに言わせれば、空港襲撃、ハイジャック、大使館占拠などの無法をほしいままにする「テロリスト集団」に変りはありませんでした。PLOは世界各国に100か所を超える代表部と事務所を置き、国連中心の外交戦略を展開しようと努力していましたが、テロは相次ぎました。主流派ファタハの穏健路線にあきたらない過激派が、日本赤軍と組んでクアラルンプールの米大使館を占拠(1975年)する、JAL機をハイジャック(1977年)する、西独のテロ組織「バーダー=マインホフ」と組んでルフトハンザ機をハイジャック(1977年)する、といった具合にテロ事件が頻発したのです。そのころ国際報道の駆け出し記者だったぼくは、デスクに怒鳴られながらキリキリ舞いしたものです。いま考えると不思議ですが、当時は「テロリスト」という言葉は使わっていなかったと思います。「パレスチナ・ゲリラ」とか「アラブ・ゲリラ」と言っていました。フランスの新聞なども、アラビア語でパレスチナ・ゲリラを意味す「Feddayinフェダイーン」という言葉を使っていたと記憶しています。

<「テロリスト」と言われた男>
どういう経緯で「ゲリラ」が「テロリスト」に変ったんだろうか。ぼくの頭にこびりついている拙い疑問です。当時でも、テロリストと呼ばれる男たちはいました。ウィーンのOPEC総会を襲って、産油国要人を人質にした事件(1975年)の中心人物、イリッチ・ラミレス・サンチェス・カルロスは「国際的テロリスト」でした。「ファタハ革命評議会」のアブ・ニダルは「世界でもっとも危険なテロリスト」ということになっています。カルロスはベネズエラ出身で、キューバのテロリスト養成所で訓練を受けたマルクス・レーニン主義者でした。当時のメディアは「ジャッカル・カルロス」という異名で呼んでいました。フレデリック.フォーサイスのベストセラー小説「ジャッカルの日」の暗殺者ジャッカルのように、冷酷で凄腕のプロフェッショナル、といいたかったのでしょう。しかし、アブ・ニダルはPLOに属するパレスチナ・ゲリラなのに、「テロリスト」にされました。彼に比べたら、1970年9月、イスラエル・エルアル機の乗っ取りに失敗して捕えられたライラ・ハリドさんは幸せです。当時の新聞は「女性ゲリラ」と書いていました。やがて彼女は「パレスチナのジャンヌ・ダルク」になります。この違いは何なのか。「ライラ・ハリド」には、女性ゆえのカリスマ性があった、ということでしょうか。

<パレスチナの選択>
PLO主流のファタハに圧勝したハマスは、イスラエルの存在を認めないイスラム過激派組織で、自爆テロの企画立案者だそうです。ハマスは「パレスチナ・ゲリラ」ではなく、あくまで「テロリスト」なんです。ファタハの大義は「パレスチナ民族の解放」でした。ハマスの大義は「イスラム教国家の建設」です。パレスチナ人の戦いは、初め民族解放闘争あるいは革命闘争でしたが、いつしかイスラム原理主義の「ジハド」に変っていました。「ゲリラ」という表現には、民族解放闘争とか、マルクス・レーニン主義革命に対するポエティックな心情というか、なんとない共感が働いている。「ジハド」には、一歩退いてしまうような怖さを感じてしまう。ぼくの勝手な語感でいえば、「ゲリラ」と「テロリスト」の違いは。そういうことみたいです。しかし、ハマスはキチンとした民主的選挙を経て、「パレスチナ国民議会」の多数派になったのです。この事実は、ハマスを選択したパレスチナの人たちと同じ目線で、見すえていきたい。そう自分に言い聞かせています。

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登録日:2006年 02月 01日 19:43:32

コメント

テロリストとは、目的のためには手段を選ばず、無差別殺人を行なうものたちのことだと思います。アラブ寄りのメディアは、あえてテロリストという言葉を使わないようにしています。

Hiro @ 2006年 07月 17日 23:03:31

テロリストとは、目的のためには手段を選ばず、無差別殺人を行なうものたちのことだと思います。アラブ寄りのメディアは、あえてテロリストという言葉を使わないようにしています。

Hiro @ 2006年 07月 17日 23:03:49

terror つまり、恐怖をもたらせることそれ自体が目的。恐怖による自我連鎖崩壊を誘導する手法、それがterrorism。実行役がテロリスト。アラブ系だとか難民であるとかは関係ない。ムスリムであることさえ関係ない。背後の悪魔的天才集団の単なる駒=独楽。かく同様に世界の主導者たちも踊らされている。おそらく今年中に稚拙な陰謀論が再び世を覆うだろう。そして、今回は「陰謀論には根拠がある。」ということが広く一般に認識されるようになるだろう。

anjuna @ 2006年 07月 23日 06:10:51

terror つまり、恐怖をもたらせることそれ自体が目的。恐怖による自我連鎖崩壊を誘導する手法、それがterrorism。実行役がテロリスト。アラブ系だとか難民であるとかは関係ない。ムスリムであることさえ関係ない。背後の悪魔的天才集団の単なる駒=独楽。かく同様に世界の主導者たちも踊らされている。おそらく今年中に稚拙な陰謀論が再び世を覆うだろう。そして、今回は「陰謀論には根拠がある。」ということが広く一般に認識されるようになるだろう。

anjuna @ 2006年 07月 23日 06:11:08

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プロフィール
伊藤 延司
(男)
長野県生まれ。京都大学卒。
毎日新聞社ジュネーブ支局長、パリ支局長、学芸部長、出版局次長、英文毎日局長などを歴任。
主な訳書: 『アメリカの鏡・日本』(角川書店)、『壁の向こう側』(毎日新聞社)、『ブッシュ・ベイビーズ』(マーガレット・プライスとの共訳、毎日新聞社)、『犬たちをめぐる小さな物語』(日本放送出版協会)、『ダーティー・ハンズ』(都市出版)など。
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