2006年 06月 15日
ドイツに学ぶ「ワークシェアリング」
【ウォルフスブルク/ドイツ 14日 AFP】独自動車大手フォルクスワーゲン(Volkswagen)は12日、同社が採用してきた短時間労働を廃止し、週35時間の標準労働に戻す意向を発表した。経営状態を回復するために、時間変更に伴う昇給はしないという。写真は、ウォルフスブルク(Wolfsburg)にある本社工場の製造ラインで「Golf」のボンネット内を点検する作業員(2005年9月21日撮影)。(c)AFP/JOHN MACDOUGALL
■ワークシェアリングまた失敗?
「短時間労働廃止」。この記事を見て、最初に感じたのは、ワークシェアリングが「また失敗したのか」ということだ。なぜなら、ドイツのフォルクスワーゲン社と言えば、2001年、リストラを回避するために、従業員の労働時間を短縮、つまりワークシャアリングを実施し、月額賃金5,000マルク、5,000人の追加雇用「5000*5000プロジェクト」をしたことで、あまりにも有名だからだ。
■欧州各国で導入
そもそもワークシェアリングの歴史は古い。雇用政策の一環として、19世紀初頭から欧州を中心に導入されてきたが、目的はもっぱら、若者の失業率を改善するため。具体的には、高齢者の早期退職を促し、その代わりとして、若者を新規に雇用していくといった、「世代間型」、「早期完全引退型」ワークシェアリングが中心だった。
■政策失敗の過去
ドイツも早期完全引退型を導入したが、政府の狙いは、高齢者のもつ技術を若者に伝授し、国際競争力を高めようというものだった。だが早期退職の見返りに、手当を支払うことで政策を推し進めようとするあまり、かえって高齢者の労働力低下と、公的資金の過大な負担を招き、政府の狙いは失敗に終る。結果、これまでとは逆の政策、つまり高齢者の雇用を促進する政策に転換せざるを得なくなった、という苦い経験がある。
■導入検討てみませんか?
では、日本におけるワークシェアリングの現状はどうか。東京をはじめ、各都道府県労働局のホームページには、「ワークシェアリングの導入を検討してみませんか?」というキヤッチコピーが並び、導入のメリットや、用語説明、留意点などが列挙されてはいる。しかし実際の導入は大企業が多く、しかも期間限定適用となっているなど、宣伝ほど浸透していないのが実状だ。
■日本的事情
そもそも日本のワークシェアリングの考え方は、欧州のそれとはやや赴きが異なる。もちろん、景気後退から失業率が上昇したことをきっかけに、議論が高まったのたが、失業者を救済するというより、働き過ぎ、過労死、残業改善といった、日本人特有の働き蜂的要因を是正するための策といった意味合いが強い。そして、これが発展して、多様な働き方の策として今日に至っている。
■日本には馴染まないか
しかし、現状では、どうしても日本には馴染まないと思わざるを得ない。なぜなら、欧州と比べ雇用状況が違うためだ。欧州は一般的に職種別賃金であるのに対し、日本はいわゆる総合職賃金だ。この職務に対して、これだけの賃金を支払うという環境とは違い、会社に存在する業務を、会社の指揮・命令に従って、こなさなければならず、どこまでをシェアすればいいか、切り分けが極めて困難だ。よって、適用となるのは、必然的に育児休職等の女性に限定されがちになる。
■団塊退職が転機となるか
では日本では全く根付かないか。転機があるとすれば、2007年以降、すなわち団塊世代の退職からではないだろうか。団塊は今日の企業を支えたいわば立役者であり、高度な技術も持ち合わせている。賃金についても牽引的存在であり、退職金もほぼ満額もらえることから、どうしても働かなければならないという状況ではない。
団塊の大量退職を機に、若者に対して、雇用と同時に技術の継承をできれば、かつてドイツが失敗した政策を、成功に変えることができるかも知れない。
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登録日:2006年 06月 15日 21:58:20
- プロフィール
- 如月 薫
- 東京都在住。外資系メーカーの営業職を経て、某サービス系企業の人事部に在籍。人事・労務業務の他、企業の倒産・再生の取材活動も実施。現在は社員教育、採用に注力する傍ら、フリーで教育・ビジネス関連(ビジネス文書書式集本、中小企業向採用・教育等冊子)の執筆も行っている。
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