2006年 06月 22日
カリスマの引退と幹部育成土壌
マイクロソフトのビル・ゲイツ会長、経営の一線から退く - 米国
【ワシントン/米国 16日 AFP】マイクロソフト(Microsoft)のビル・ゲイツ(Bill Gates)会長が、2008年7月付けで同社通常経営業務から離れると発表した。以降はビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(Bill & Melinda Gates Foundation)を通じ、世界の健康・教育のための事業に多くの時間を費やしたい考え。ただし重要な開発計画については、引き続き会長兼相談役として助言を与えるという。写真は15日、ワシントン州レドモンド(Redmond、WA)のマイクロソフト本社で記者会見に臨むゲイツ会長。(c)AFP/Robert SORBO
■ 見事な引き際
この記事を見て、率直に感じたのは「見事な引き際」だということだ。
ゲイツ会長といえば、1975年、友人のポール・アレン氏とともに創業。基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」でパソコン市場をほぼ独占し、IT業界の技術動向や収益構造に多大な影響を与える、いわばカリスマ中のカリスマだ。
発表によれば、会長兼相談役にとどまるというが、これまで兼務していた、チーフ・ソフトウエア・アーキテクトの肩書も、同日付でレイ・オジー最高技術責任者(CTO)に引き継ぐという。完全に第一線からの引退だ。
■本田宗一郎の引き際
日本でカリスマの引退といえば、やはり本田宗一郎だろう。同氏の引退の直接的要因は、技術的な課題、特にエンジンの空冷式を押す同氏と、水冷式を押す若手技術者との相違が定説だ。言うまでもなく同氏はバリバリの技術者だ。その技術者が、結果として水冷式が正しかったことを受け、限界を感じたのだろう。45歳の若手に会社を任せ、65歳で驚くほどアッサリと引退を宣言した。見事な引き際だ。
■早期引退の重要性
そもそもカリマスの早期引退が、なぜ賞賛されるかといえば、後継者の問題からだ。カリスマの元では、幹部は育成しにくいという特性がある。いや、「育成しようとしない」という表現が正しいかも知れない。特にあらゆる決定事項がカリスマに集中している場合、幹部以下従業員は、イエスマンであることをだけが求められる。これではカリスマに事故が生じた場合、全く対応できない。
■後継者育成の責務
したがって、上記のような事態に陥らないためには、幹部を育成しておかなければならない。カリスマの最終的な仕事は、優秀な幹部を育成することといっていい。本田宗一郎は優秀な技術者が、ゲイツ氏は優秀なCTOが育成されたからこそ、引退を宣言したに他ならない。この過程を誤ると、分権化が顕著となり、経営者の交代と同時に、会社が分解する危険性もあるのだ。
■ 「交流型」と「変革型」リーダーシップ
では、どうしたら優秀な幹部を育成することができるか。非常に難しい問題だが、「交流型リーダーシップ」と「変革型リーダーシップ」の二つをうまく活用する方法で、問題を解決することができる場合が多い。
前者は、周囲の者と交流を持ちながら、実績ある方法で、効率よく安定的に課題を遂行する働きかけを指す。 一方後者は、「これでいいのか」と課題そのものを問い直し、遂行方法を改革しながら課 題を遂行する働きかけをいう。この二つを車の両輪のこどく使い分けることができれば、スムーズに解決できるといわれている。
しかし、最も重要なのは、こうしたリーダーシップを発揮できる「場」を用意できるかにある。交流も変革も、自由闊達な組織風土があり、情報の共有化と、活発なディスカッションが行える場がなければ、残念ながらどうにもならない。
後継者育成、幹部・リーダー育成の土壌。あなたの会社にはありますか?
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登録日:2006年 06月 22日 15:11:36
- プロフィール
- 如月 薫
- 東京都在住。外資系メーカーの営業職を経て、某サービス系企業の人事部に在籍。人事・労務業務の他、企業の倒産・再生の取材活動も実施。現在は社員教育、採用に注力する傍ら、フリーで教育・ビジネス関連(ビジネス文書書式集本、中小企業向採用・教育等冊子)の執筆も行っている。
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