決勝戦を振り返って

<06サッカーW杯>決勝戦 イタリアvsフランス - ドイツ

【ベルリン/ドイツ 9日 AFP】06サッカーW杯・決勝、イタリアvsフランス。試合は1-1のまま延長戦でも決着はつかずPK戦までもつれ、イタリアが5-3で勝利を収めて24年ぶり4度目の優勝を飾った。(c)AFP/PATRIK STOLLARZ

AFPBB News


それにしても、なんと後味の悪い決勝戦なのでしょう。

その理由は言うまでもなく、ジダンが退場になってしまったことにあります。ジダンがマテラッツィの胸に頭突きを食らわす前に、一体何があったのでしょうか。

 
録画をみると、マテラッツィがジダンに対して何か一言を投げかけており、恐らくその一言がかなり屈辱的な意味合いを持っていたとしか考えられません。

それにしても、それにしても、一言でプッツンと切れてしまったジダン・・・。

「あの程度の頭突きで大げさに倒れるなよ!お前さえ倒れなければ、試合はぶち壊しにならなかったのに!!」とマテラッツィには言いたいけれども、だからといってジダンの行為は許されるものではありません。

試合の流れは、完全にフランスに傾き、例えPK戦になってもフランスが勝てるような気配さえ漂っていました。

ジダンよ、今大会あなたのために敷かれていた一本の長い赤い絨毯の先にはあの黄金のトロフィーがあったのです!!

それをあなたは、もう少しの所で花道の脇の客席から罵声を浴びせられたからといって、その客席に飛び込んで乱闘を始めてしまったのです。ああ、一体なんてことを・・・!!

短気は損気というけれども、そんな諺ひとつでは片付けて欲しくない後味の悪さ・・・。しかし、よく突き詰めるとその一言でしかないこのやるせなさ・・・。

確かにジダンは短気です。1998年大会のサウジアラビア戦でレッドカードを受けた理由も、かっとなって転倒している選手を故意に踏みつけたためであり、今大会でもグループリーグ2戦目で累積2枚目のカードを受けて次節出場停止が決まった韓国戦の終了後、控え室でロッカーの扉を蹴り壊しました。

要は短気なのです。一度頭に血が上ると制御不能に陥ってしまうのです。そのおかげで後世に語り継がれるはずだった最高の舞台、ワールドカップの決勝と引退試合がぶち壊しになってしまいました。

W杯の歴史を紐解けば、1982年大会ではマラドーナが報復で相手を蹴って一発退場、1998年のベッカムも報復行為で一発退場、そして今大会のルーニー然りと愚かな行為が繰り返されています。ジダンは、あんなに華麗なテクニックを誇るすごい選手なのに、W杯で2回も汚名を刻んでしまいました。

本当になんとまとめて良いのか、ジャーナリスト泣かせの夜、いや朝です。

ジダンの一件に関してはプロを目指す、才能豊かな若者達にあのジダンでさえ、短気を起こすとあんな惨めな目にあうことを教訓として胸に刻んで欲しいと言うことで収めるしかないようです。

さて、遅ればせながらではありますが、気を確かにもってとりあえずは決勝戦を振り返ってみましょう。

前半は、フランスがPKで先制するも、イタリアがコーナーキックからすぐ追いつき、一進一退の展開。後半はフランスが持ち前のテクニックと機動力で徐々にイタリアを劣勢へと追い込む展開。

それは延長戦に入っても変わらず、誰の目にもフランス有利の試合展開の中、あのジダンの退場劇が起きます。

ところが、10人になり、しかも、アンリもビエリもジダンもいないフランスの方がその後も優勢に試合を進め、結局は1対1のまま試合終了。

PK戦は、フランスのトレセゲのみが外して5対3でイタリアが4度目の栄冠を手にしました。

ここぞという大一番では、伝家の宝刀ともいうべきカテナチオで手堅く試合をものにしてきたイタリアのしたたかさ、そのスタイルは芸術的であり、褒め称えるべきであります。大会を通じての失点は僅かに2であり、一つはオウンゴール、もう一つは決勝戦で決められたPKですから、流れの中からゴールを破られたことは一度もありませんでした。これは特筆に価します。そして、その象徴がカンナバーロであり、ガットゥーゾということでしょう。

ただし、前回優勝の時に、活躍したロッシのような攻撃の旗手がいなかったのは至極、残念。

一方のフランスですが、アルゼンチンと並び、若年層の育成が最も成功している国らしく、しっかりとしたテクニックとオートマチズム、そして戦術眼であの王者ブラジルを撃破。そして、決定戦でも戦前の予想を覆し、イタリアを苦しめました。フットボールに判定制度があれば、3対0でフランスが制していたでしょう。

ビエリ、マケレレの守備力と展開力、そしてジダンを軸にアンリやリベリーが繰り広げる華麗な攻撃は決勝戦でも輝きを放っていました。攻守のバランスが取れた今大会No.1のチームと言っても過言ではありません。

守備に重きが置かれる近代フットボールにあって、フランスとアルゼンチンにはその攻撃重視のスタイルを崩さず、今後もアタッキング・フットボールを標榜し続けてもらいたいものです。

ところで、わが日本代表チーム、そして日本のフットボールそのものを総括せねばなりません。フットボールの本場、欧州で開催された大会ということもあって、本来の実力が試合に反映され、日本国民が日本のフットボールはまだまだ世界では大したことはないという現実を知ったのは収穫でしょう。

決勝ラウンドのレベルを見れば、日本代表には場違いの舞台であることがよくわかったはずです。

タレントは揃っていたので、優秀な指揮官の下、4年間準備をすれば決勝ラウンドも夢ではありませんでしたが、後の祭りです。

そして、サポーター、選手、協会、マスコミという括りでそれぞれのレベルをチェックした場合に、一番世界基準に近いのがサポーター。次が選手。そして世界基準から独裁者のおかげで大きく離れてしまったのが協会。最後に世界基準からもともとかけ離れている上、今大会も間抜けだったのがマスコミ、ということになるでしょうか。

W杯は、その国のフットボールの総合力が問われる大会です。その総合力の象徴である日本代表は監督任せでは勝てるはずもなく、まずは協会がビジョンと具体策を打ち出し、マスコミが批評、批判を展開する過程で、成熟していくものです。そしてサポーターが選手とチームを鼓舞することで結束力が高まり、チーム力プラスアルファーが生まれるのです。

そしてダメな協会には、何故タレント揃いのチームが惨敗を喫せねばならなかったのかを徹底的に究明し、責任の所在を明記したテクニカルレポートの提出と今後の日本フットボール界の進むべき道を示したマニフェストの提出を求めます。

川淵会長の唱えた2050年単独開催、そして初優勝を獲得するための方針と、具体策を打ち出すのです。

もっとダメなマスコミには、日本が勝てる勝てると騒ぎたてた過去の紙面やVTRを直視し、フットボールの本場の報道が何を伝えていたのかを比較し、猛省を促したいと思います。ジャーナリストとして恥を知れと言いたい!日本のフットボールは大手新聞社とその傘下のスポーツ紙、そしてテレビ局がきちっとした批評が出来ないから成長しないと言っても過言ではないと私は思っています。

選手には、韓国代表の見せた1対1の強さと根性を見習っていただきたい!イマジネーションなどなくても、フィジカルの強さと根性で勝ち点4は獲得できるのです!!

サポーターには、今大会で失望せず、また鋭気を養って日本フットボール界を支えていただきたいと心よりお願いいたします。

結果オーライではありますが、日本代表はオシムという最高の指揮官を得ました。
したがって2年後には、胸のすくような活躍をする日本代表の試合が観戦できると私はここに断言いたします。

そしてたとえ、アジア枠が3に減っても、4年後には世界をアッと言わせる日本代表イレブンが南アフリカのピッチに立っていることも間違いありません。(その理由は、今後徐々にこのブログで説明させていただきたいと存じます。)

その日を信じて、今まで以上に熱い声援をよろしくお願いします。

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登録日:2006年 07月 10日 16:44:06

コメント

マテラッツィのマリーシアの類程度に頭にきたジダンが負け。
おそらく人種差別的なことや、フランスチームへの口汚いことを言われなきゃ、あそこまでジダンもキレないでしょうが・・・。


 試合が不利な状況の時、ああいう罠を誘うのもプロのサッカーのやり方なのかもしれません。Jリーグでも、短気な選手に、ワザとゴツゴツ削っていったり、相手国の言葉でボソっと言ったりはありますよ。

それが巧いマテラッツィのような選手を日本がどんどん輩出できるほど、日本にサッカー文化が根付き、プロサッカーが血や肉となれば、日本のW杯での活躍も夢ではありませんよね。

 ここで用語集をあげてますよ!http://plaza.rakuten.co.jp/foot001/004008

foot001 @ 2006年 07月 10日 21:08:00

foot001さん
優勢だったフランスのエースを退場させ、結果的にイタリアが優勝したのですから、マテラッツィの勝ち、そしてジダンの負けということなのでしょうが、私はマリーシアはフットボールの敵と位置づけている人間で、マテラッツィの行為は許せません。
イタリアとフランスのどちらが勝ってもよかったのですが、マテラッツイさえジダンに汚い言葉を投げかけなければあんなに後味の悪い試合にならなかったのです。間違いなく彼は試合をぶち壊しにするきっかけを作りました。
それはフランスのサポーターのみみならず、あのスタジアムにいたイタリアのサポーター以外の観客全ての総意であり、だからこそPK戦まで激しいブーイングが鳴り止まなかったのです。
ワールドカップの決勝戦でのあんなブーイングは二度と聞きたくありません。
私がブラッター会長だったら、マテラッツイから事情を聴取して、厳重に処罰いたします。それは言うまでもなくマテラッツイの行為がフェアープレー精神に大きく反するからです。
飾りだけのFAIRPLAY  PLEASE旗であれば、そんなものは無いほうがましです。口先だけの人種差別反対運動など吐き気をもよおします。
ま、オシムは心から平和とフットボールを愛する人格者だから、代表チームをそういう点も含めて良い方向に導いてくれると思えることが今の救いです。

小谷泰介 @ 2006年 07月 11日 05:06:35

マテラッツイの侮辱行為は許せませんが、それに暴力で応酬するジダンの行為は到底許せるものではありません。

そこはジョークが得意のフランス、日本流なら「お前の母ちゃんデベソ!」やベロベロべーのお尻ペンンペンなど、笑いを含んだ切り替えしで反撃して欲しかったですね~。そうした余裕が、大人の対応というものではないでしょうか。

ミック @ 2006年 07月 11日 07:11:22

代表監督に就任してからのオムシ監督の言動に注目をしていました。一部を見聞きしただけですが、日本のサッカーや代表に対する分析や今後の考え方など、さすがですね。期待が持てます。

オムシ監督の第一声はまず、日本のサッカーや代表はトップチームではない、ということをしっかりと認識することである、と発言しました。これはランチェスター戦略では、今回優勝のイタリア以外は全て弱者ということにも当てはまります。つまり、強者には強者の、弱者には弱者の戦略と戦術があり、それに沿って考え練習をしなければ、強くはなれないということです。また、トルシェは取り入れていたそうですが、戦略や戦術、体力各差を無くすとともに、実力の底上げを図るために、日本代表の練習メニューを各クラブにも導入するとのことです。

日本代表は、海外組以外はJリーガーで構成されている訳ですから、これはとても短・中・長期的にとても大切な施策です。

はじめだけを見聞きしてもやはり、今までの監督とは違うな、との印象を受けました。2年後にはアジア予選が始まります。その時点で、予選を突破できるチームがある程度はできていなくてはなりません。以外と早いですよね、2年は。

ミック @ 2006年 07月 11日 07:57:25

ミックさん
ジダンの行為が許されるものではないのは当然で、だからあんな大事な場面で退場を余儀なくされたのです。
私が言いたいのは、マテラッツィの卑劣な行為に対して何のお咎めもないことはおかしいということです。
ジダンの切れやすい性格を知ってわざと侮辱的な言葉を二度も投げかけ、貶めるやり口はフェアープレー精神への冒涜です。
それとジダンの頭突きを暴力といいますが、本当に相手を傷つけたければ拳で思い切り殴っていたでしょう。あの頭突きはジズーの精一杯bの抗議だったわけで、大げさに倒れたマテラッツイの反応も許せません。
それが証拠にジダンを退場に追い込んだと知るや、何事もなかったようにピンピンしていました。その後胸を押さえるマテラッツイの姿をついぞ見ることはありませんでした。
彼の卑怯な行為をこのまま放置していてはいけないのです。

小谷泰介 @ 2006年 07月 11日 20:06:20

マテラッツィの卑怯な行為は断じて許されることではなく、糾弾されなければなりません。でもリーダーは、危機や問題に直面した時こそ、常に沈着冷静に判断し、考え、行動するからこそ、リーダーたるゆえんです。ジダンはそれまでは自他ともに認めるリーダーでしたが、その時は何か、たがが外れてしまったのでしょう。でも言葉には言葉で対抗できる訳ですからね。自分の置かれた状況を把握できなかったジダン。彼はリーダーの器ではなかったことを最後の最後に自らの頭で証明してしまった訳です。

ミック @ 2006年 07月 11日 22:58:43

おっしゃる それは マランダラージですね。

http://plaza.rakuten.co.jp/foot001/004010
より
   マランダラージ  ポルトガル語
マリーシアが反則行為(法)を犯さない「ずる賢さ」なのに対し「マランダラージ」は、いわゆる「汚い行為」。ブラジル人でも怒る尊敬されないプレーではある。
 審判に見えないところで見えないように相手を突いたり、体を抱え込んだり、わき腹を殴ったり、肘を当てたり、ボールに行くふりをしてくるぶしやかかとにスパイクを入れてタックしたり・・・。また、セットプレーの時に相手選手の足を踏んだり、GKの顔の前に手を入れたり・・・。
 ※マランダラージとマリーシアは似て非なるもの。
---

 もともとのマリーシアは、貧乏な民の中の賢人が、役人や金持ちの横暴に、知恵を使って対処・懲らしめるというブラジル文化が根底にあると思います。

 日本で言えば、マリーシアは一休さんの頓智であり、宮本武蔵の決闘勝負の狡賢さ・兵法です。マリーシアの無い選手はスパイスの無いピザ、さわび抜きの握り寿司のようなものかもしれない。

 現実世界にある、不誠実さ、狡猾さ、不純さ、腹黒さはプロサッカーの世界にも起こりえます。特にW杯のように全てが凝縮された大会には光と影も凝縮されています。でもだからこそピュアなもの、番狂わせ、フェアプレーなどがサッカーにおいて人々を感動、共感させる。子どもたちには現実社会・プロ世界には汚いことが多々あるんだ、でも、だからこそ純粋さ・美徳などが重要なのだと教えたい。それが本当の意味のサッカーによって紳士淑女を育てることではないでしょうか。強さとは正義とはなんでしょう。若いうちに弱さや悪の存在を知らなければ現実社会で急に誘惑や悪意が現われた時に対処できません。それが今日本社会に起こっていることのように思えます。人生そのものがプロ世界です。私は商売をしています。マリーシアの美しさもフェアプレーの滑稽さも知っています。でも、だからこそマリーシアに苦く辛い思いをし、フェアプレーを求めてやみません。

foot001 @ 2006年 07月 12日 21:37:47

foot001さん
マランダラージという言葉の存在をわたしは知りませんでしたが、悪質なファウルと考えればよいのでしょうか?
いずれにしても、「フェアープレーを求めてやみません。」という結論に大いに共感致します。
本当に優秀な監督は常に選手にフェアープレーを要求します。例えば、JEF 千葉・市原の選手達はマリーシアやマランダラージとは無縁のパフォーマンスをするわけですが、それは監督の要求が高く、余計なことをしている暇を与えないのです。常に集中し、体を動かしながら考えなければならず、だからこそチームも激変します。そしてそういったパフォーマンスが人々の心を打ち、共感を呼ぶのでしょう。

小谷泰介 @ 2006年 07月 13日 05:55:25

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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