日本人鍼灸師、欧州を刺す!PARTⅢプレシーズンキャンプ編⑤
【6月30日 AFP】サッカーU-21欧州選手権2009(UEFA European Under-21 Championship 2009)決勝、ドイツ対イングランド。
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(c)AFP
ヴェルダー・ブレーメン期待の若手新戦力であるマルコ・マリン選手は、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身ながら、両親とともに移り住んだドイツ育ちで、同じブンデスリーガのボルシア・メンヒェングラッドバッハでプロデビューを果たしています。
170cmに満たない華奢で小柄な体格ながら、抜群のテクニックとスピード、そして得点感覚とパスセンスを持ち合わせた逸材で、ブレーメンはジエゴの抜けた穴を埋めるべく約11億円をつぎ込んで獲得しました。
特にマリン選手の高速ドリブルは圧巻です。縦に早く、切り返しやフェイントも実に巧みであり、さりとて手荒いタックル等もろともしない逞しさも持ち合わせています。セルティックが1967年に欧州の頂点に立った頃の黄金期を支えたドリブラー、ジミー・ジョンストン氏も非常に華奢で小さかった選手ですが、その彼にターボエンジンを積んだような感じで、そのプレーは、体力的に恵まれない日本人選手の良いお手本と言えるでしょう。
そしてまだ20歳と若いので、チームメイトのオジル選手と共に明日のドイツ代表を背負って立つ期待の若手として注目を集めている選手なのです。
そんなマリン選手ですが、チームに合流した日の午後に、担当のフィジオセラピストとなったユルゲンに連れられて、Kさんの治療室にひょっこりとやって来ました。
聞けば足首の付け根を痛めたようで、Uー21欧州選手権の準決勝でジャンプした際に近距離から相手選手の思いっきり蹴ったボールが足首を直撃したのだそうです。
マリン選手にとって鍼治療は初め手のことでしたが、Kさんの一挙手一投足に興味深々の様子。 そして、他の多くの選手同様に英語が堪能なため、あれこれと質問をしてくるあたりは、ボロウスキ、フリッツ、メルテザッカーといったチームメイトのドイツ代表選手達と変わりません。
一流選手は、知識欲が旺盛で常に何かを吸収してやろうと言う意識が強いものですが、特にドイツ人はその傾向が強いと私は感じています。この勤勉さは、総体的にブラジルやアルゼンチンのようにテクニックに秀でているわけでもなく、イタリアのカテナチオのような美意識を持ち合わせているわけでもなく、さりとてフランスのように身体能力の高い黒人選手が大勢いるわけでもないドイツ民族が、3回もワールドカップを制し、7回も決勝に駒を進めている強さの要因の一つだと確信しています。
そのドイツ人の特徴である組織力、団結力の源ともいえる頭脳の明晰さや忍耐力は、我々日本人も持ち合わせているはずで、古くは釜本、杉山の黄金コンビに始まり、西野朗、田中孝司、原博美、岡田武史、水沼貴史、風間八宏、井原正巳、名波浩、長谷川健太、堀池巧、大榎克己といった歴代の日本を代表する選手の皆さん等は、いずれも向上心と探究心旺盛な人達ばかりでした。
そしてこの特性こそは、日本代表チームの武器であるとしっかり自覚すべきだと考える次第です。何故ならば、こんなに大卒の代表選手が多い国は、お隣の韓国を除いて日本以外には見当たらず、結果的にこの点が組織的に優れた日本のフットボールの特徴を表わす端的な事例だと思うからです。その他にも、日本ほど高校や大学で学業とともにフットボールに真剣に取り組む生徒が多い国は他に無いはずで、組織力を磨くベースになっているに違いありません。
日本人の欠点ともいうべきフィジカルのハンディキャップを補うには、組織力と戦術理解といった頭脳系のパワーをフルに活かすべきなのです。
ついでにもう一つ付け加えると、走力とスタミナ。これも、日本人選手が世界と互する為に大いに磨かなければならないものでしょう。オシム監督や旧ユーゴ系の監督は、その点を日本での指導を通してしっかりと証明してくれていました。
話をマリン選手に戻しましょう。
気さくで飾らない性格のマリン選手ですが、たまたま私の持っていた日本のフットボール専門誌を見せると、丹念にページをめくりながら、浦和のフィンケ監督はどうなのだとか、中村選手は今季どこでプレーするのだとか、自分の知った顔の写真を見つけては質問を投げかけてきます。
また、マリン選手との会話は、彼の生まれ故郷であるボスニア・ヘルツェゴビナにまで及び、私が同国出身のオシム監督の素晴らしさや、日本代表チームでの指導ぶりを披露すると、「そうでしょ! 彼はすごい人なんだよ。」と表情を和ませるのでした。
さて肝心の鍼治療ですが、終わった後にハッキリと痛みが和らいだことが嬉しかったのか、毎回練習の後には必ずKさんの治療室を訪ねてくるようになりました。また、彼が初めて練習試合に出場した試合のロッカールームでのことです。マリン選手自ら足首のテーピングを、Kさんに巻いて欲しいと申し出てきたのです。
Kさんは、20年近くアスレチック・トレーナーとしてフットボール選手の治療にあたってきた実績もさることながら、言葉は上手く通じなくとも、ハートで語りかけ、ハートを込めて治療するタイプのトレーナーなのですが、マリン選手はそんなKさんのスタイルをかなり気に入ったようです。
長いシーズンはまだ始まったばかりですが、ブレーメンという欧州名門チームの選手の多くが日本人鍼灸師の手当を受けてピッチに立ち、一人の若きスター候補生のテーピングが日本人によって巻かれていることはとても素敵で価値的なことであり、この輪が本場欧州全土に広がって行くことを祈らずにはいられません。
コメント[6], トラックバック[0]
登録日:2009年 08月 23日 20:32:22
コメント
全然関係ないコメントですが:
googleで以下の条件で検索をすると、キャッシュにほとんどの文面が残ってます。
"site:www.actiblog.com/kotani/"
# "は入力しなくてOK
そこから文章だけでもひろいだすことは可能です。
川村カオリさんの件でこのBLOGを見つけたので、
ぜひ過去の文章も復活させてください。
baku @ 2009年 08月 28日 03:49:24
全然関係ないコメントですが、森本代表に初召集されましたね。彼には注目してます。カターニャの試合、彼には決定的なチャンスが何度も訪れてます。でもことごとくと言っていいほど外します。たまに入れてあの得点数ですからね。もっと決定力を上げれば得点王も夢ではありません。彼には途方もない才能を感じます。小谷さんはどう思われますか?
アニヤン @ 2009年 08月 28日 11:54:10
bakuさん
削除してしまった過去の文章に関する情報を誠にありがとうございました!心より御礼申し上げます。
お知らせいただいたURLにアクセスをしましたところ残念ながら、すでにデータは消えてしまっておりました。しかしながら、武さんや、あなたのような親切な方がいらっしゃるというだけで元気が湧きますし、これから益々頑張らねばという勇気を頂きました。
重ね重ねありがとうございました。
小谷泰介 @ 2009年 08月 28日 14:42:43
アニヤん
コメントをありがとうございました。そしてお久しぶりです!
森本選手に関しましては何と申しあげたらよいのでしょうか・・・、非常にコメントしにくい選手だと私は常々感じております。
スピード、ドリブル、シュート、へディング、トラップ、ポストプレーとストライカーに必要な要素を全てそこそこ持ち合わせているのですが、秀でたものがないのです。
インザーギ選手のようなプレーが好きだというコメントを読んだことがありますが、DFラインの裏を取るプレーであれば大黒選手の方が上手いとも思いますし、今後のノビシロがどのくらいあるのか、想像がつかないのです。
しかし、敢えて言うならば、ゴールに対する嗅覚が鋭く、本番に強い(つまり結果であるゴールを挙げる)という点で優れており、これはストライカーに最も必要な要素で有ることも事実なのであります。
先だってのボローニャ戦でも、あれだけ押し込まれ、完敗の試合なのですが、ちゃっかりとごっつあんゴールを挙げているあたりは、彼の特徴を示す典型的な事例と言えるでしょう。
いずれにしましても今季が彼にとって正念場であることは間違いなく、代表でのパフォーマンスも含めて、今暫く彼のプレーぶりを見守る必要があると考えております。
個人的には、岡崎選手と森本選手には、常に泥臭くて良いから常に得点を挙げる選手に成長して欲しいと願っております。
小谷泰介 @ 2009年 08月 28日 15:02:30
残ってますよ。
"site:www.actiblog.com/kotani/"
で検索した結果の、
”キャッシュ”
というところをクリックすると過去の記事が残ってます。
# これを「キャッシュされている」といいます。
例えば:
どうにも気に入らないJリーグ中継 小谷泰介の地球はフットボール
という2007/3/5の記事は:
http://74.125.153.132/search?q=cache:4p0RtU5v9YcJ:www.actiblog.com/kotani/31015+site:www.actiblog.com/kotani/&cd=3&hl=ja&ct=clnk&gl=jp&lr=lang_ja&client=firefox-a
場合によってはコメントも残ってます。
baku @ 2009年 08月 29日 02:17:33
小谷さん
大変ご無沙汰しております。
不幸にも過去記事をロストされたとの事ですが、bakuさんの仰るようにおそらくまだ回収可能であると想います。
新ブログに再掲載される必要はないと想いますが、小谷さんの財産として素晴らしい過去記事を回収保存していただきたいと想います。
もし、まだでしたらActiblogスタッフの方にもご相談されては如何でしょうか?
話変わって、森本ですが・・・、私も不思議な選手だなと想っております。
アニヤンさんも仰られているように、カターニャという決して強くは無いクラブにおいて多くのゴールチャンスが彼には巡ってきます。
>スピード、ドリブル、シュート、へディング、トラップ、ポストプレーとストライカーに必要な要素を全てそこそこ持ち合わせているのですが、秀でたものがないのです。
とは、なる程と想いますが、一方であれだけのチャンスに恵まれるのは、ポジショニングと動き出しに天性の才があり、本人もそれを自覚的に磨いているのではないかという推測に至ります、僕は。
ポジションもタイプも違いますが、かつてスキラッチという選手に感じたような不思議な能力を感じますね。
日本は打開力の高い選手が欲しいですが、森本が打開する必要の無いところでボールを受けれる選手なのであれば、期待してしまいます。
いずれにしろ、TV画面ではなく、生でチェックしたい選手ですね。
僕も現状での結果だけを求めるのであれば、前田遼一と大黒の2トップが最も秀でた組み合わせだと想っていますが、将来を考えると、森本や田中輝希なんかが海外でドンドン結果を出していって欲しいです。
また、たまに寄らせてください。
プーアール @ 2009年 08月 30日 21:25:35
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- プロフィール
- 小谷泰介
- 1955年、タイ王国バンコク市生まれのフットボールジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験を生かしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説は、ラジオやテレビで人気を博した。
また、本場欧州にプロクラブの監督や選手の友人が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に「拝啓 川淵三郎殿」(モダン出版)や「Jリーグ入門」[講談社)などがある。
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