負けるな!中村俊輔選手!!
現在世界で最も有名な日本を代表するフットボーラーである中村俊輔選手が、W杯を半年後に控えた今、ピンチを迎えています。
所属するエスパニョールの試合で先発出場出来ないばかりか、最近は試合にも出られない状況が続いているのです。
広い視野を持ち合わせた中村選手の持ち味である長短を織り交ぜたパスワークが鳴りをひそめ、優れた個人技を生かす状況も作れず、その輝きを失いつつあるように見受けられます。
プレシーズンマッチのリヴァプール戦を見た限りでは相当やってくれそうな期待感があったのですが、一体どうしてしまったのでしょうか。
流れるようなパスワークと個人技を随所に織り交ぜた魅惑のリーガ・エスパニョーラであれば、中村俊輔選手の未来は明るいという程フットボールは単純ではなかったということになるわけですが、やはり、フットボール選手にとって、監督の存在がいかに大きいかということを改めて認識させられました。
セルティックでは、ストラカン監督が中村選手に全幅の信頼を寄せていたのに対し、エスパニョールでは、現場(監督)主導というよりも、フロント(GM)主導での移籍であったため、ポチェッティーノ監督も何だかんだ言って様子を見ながらの起用であったと思うのです。
彼の目指すフットボールに中村俊輔選手は是対に必要だという存在ではなかったと・・・。
しかし、もうここまで来てしまった以上、後戻りできませんし、中村選手には今後も前向きに
進んでもらうしかありません。彼程の経験と実績を持ち合わせた選手であれば、そして何よりも誰にも負けないほど真摯にフットボールと向き合い、練習を積んできた中村選手であれば、自らの力でピンチを脱する術を心得ていると信じます。
そして今は我々外野がどうこう言うべきではなく、彼のフットボール選手としての総合力を信じ、復活してくれると期待する次第です。
さて、そこで今回はそんな同選手にエールを送る意味で、今春にスコットランドに出向いた際に取材を敢行した二人の人物へのインタビューの要約を掲載致したいと存じます。
ちょっと古いもので恐縮ですが、インタビューに応じてくださったのは「スコットランドからの喝采」の著者である気鋭の若手ジャーナリスト、グレイグ・マーティン氏と、老舗のサポーター組織であるセルティック・サポーターズ・アソシエーションのジョン・アンドリュース副会長で、それぞれがそれぞれの立場で中村選手について熱く語ってくれています。いずれも本邦初公開でございます。
このブログを中村選手が読んでいて下さるとは思いませんが、遠い空より尊敬する同選手の復活を祈りつつ、エールを送る意味で掲載させて頂きます。
中村選手にとっては恐らく最後のチャンスとなる南アW杯が半年後に控えているだけに、ここが正念場かと存じます。現在も移籍や母国への復帰等々様々な憶測が飛んでいますが、それらに惑わされることなく、復活への足掛かりを掴んでいただきたいと願っています。
「スコットランドからの喝采」著者、マーチン・グレイグ氏のインタビュー要約
グラスゴーを本拠地とするスポーツジャーナリストである私にとって、中村選手の存在は取材対象としては十分過ぎるほど魅力的であったからこそ、「スコットランドからの喝采」(原書名“ZEN OF NAKA”)を著すことになったわけですが、その中村選手が今、セルティックを離れてしまったことを大変に残念に思います。
そればかりではなく、今季からセルティックの所属するスコッティッシュ・プレミア・リーグのTV放映権料が金融危機の影響を受けて半減し、中村選手に代表される質の高い外国籍選手の獲得が困難となり、スコットランドのフットボール発展の妨げになるのではないかと危惧しています。
御存知のようにスコットランド代表チームは、日本代表が初めてワールドカプに出場した1998年のフランス大会を最後に、同大会に出場出来ていません。それとは対照的に日本代表が4大会連続で来年の南アワールドカップ出場を決めていることもあって、今回の中村選手の移籍が、スコットラントド・フットボール衰退の象徴のように思えるのは私だけなのでしょうか。
かつてはジミー・ジョンストンに始まり、チャーリー・クック、ビリー・ブレムナー、デニス・ロウ、ケニー・ダルグリッシュ、アーチー・ゲミル、ポール・マックステイといったテクニシャン達がスコットランド・フットボール界には大勢いたのですが、今はフィジカルと高さとスピード任せの選手が殆どで、そのことが我がフットボール界衰退の一因となっていることは間違いありません。
自著に詳しく書いたので詳しくは述べませんが、スコッティッシュ・プレミア・リーグにあって中村選手の技術と戦術眼は傑出していました。
セルティックが初めてチャンピオンズリーグのベスト16に駒を進められたのも彼の活躍があってのことです。マンU戦で決めたあの2本のフリーキックに代表される彼のパフォーマンスは伊達ではなく、新天地のスペインでもつとに知れ渡っているし、彼は日本が誇るべき選手なのです。
彼のプレーをセルティック・パークで見ることが出来ないのは寂しい限りですが、彼がスコットランド・フットボールのために残してくれたものに感謝するとともに、エスパニョールでの活躍を心よりお祈り申し上げます。
セルティック・サポーターズ・アソシエーション副会長のインタビュー要約
全世界に6万人の会員を擁するセルティック・サポーターズ・アソシエーションで副会長を務めているジョン・アンドリュースと申します。職業は、グラスゴー市内を走るタクシー・ドライバーです。
我が組織は62年の歴史を誇り、セルティックのサポーター組織の中では最も古い老舗であることを自負しております。
私自身、生粋のグラスゴー生まれであり、1953年に最初のセルティックのゲームを見て以来全てのホームゲームを見続けており、10年前にこの役職に就いてからは、2年に1度開催される北米総会にも欠かさず出席しています。
スコットランドでの総会は毎年開催されていますが、昨年は主賓として中村俊輔選手を招き、大変に有意義なひと時を過ごすことが出来ました。
その総会のスピーチの場では相変わらず英語を話してくれませんでしたが、彼がこれまでにセルティックのために捧げてくれたゴールやパフォーマンス、そして献身的なの数々のプレーのことを考えれば、そんなことはどうでも良いことであり、我々は通訳である金子誠の口から発せられる悠長な英語で充分に満足した次第です。
セルティックがチャンピオンズリーグのベスト16に駒を進めることが出来たのは、彼がマンU戦で決めた2本の見事なフリーキックのおかげだといっても過言ではありませんし、彼のフットボールに取り組むプロフェッショナルで真摯な態度が、どれだけクラブに有益なものをもたらしてくれたかを我々は良く知っているつもりです。
セルティックのコーチ陣が異口同音に、中村選手の練習に取り組む態度と徹底した自己管を称賛していましたし、何よりもあのストラカン監督自身が彼のことを好きでたまらなかったのですから。
また、昨年癌のために惜しまれて亡くなったコーチのトミー・バーンズも、「NAKAのあの柔らかい羽根のようなボールタッチは、真似しようと思っても出来ない天賦の才なんだ」といっていました。また、下部組織のコーチ達も、「若手に練習の大切さを教えるのに言葉はいらなかった。いつも居残りでフリーキックの練習をしているNAKAの姿を見せれば、それで良かった」と言っていました。
スコッティッシュ・プレミアでは、大男達がフィジカルにものを言わせてプレーをする傾向が強い中、彼は高い戦術眼と広い視野、そして抜群の個人技でフィールドを支配し、我々に夢を与え続けてくれたのです。そして、在籍した4年間で3シ-ズン連続のリーグタイトルをはじめ、我々に数々のトロフィーをもたらしてくれました。
彼をもうセルティック・パークで見ることが出来ないのは残念ですが、彼には感謝の思いしかありません。そして彼の新天地での活躍を祈るばかりです。
我々、セルティックのサポーターは今でも彼のことが大好きですし、彼のことを忘れることはないでしょう。
なお、このインタビューは今年の6月に私が MUSIC MASTERS JAPAN という音楽レーベルの依頼で、セルティック・ストアと日本で販売する中村選手の応援歌を収録したCDをプロデュースした際に行ったものです。CDのタイトルは A WONDERBHOY FROM THE LAND OF THE RISING SUN (日出づる国のワンダーボーイ)トいいますが、、詳細をお知りになりたい方は、MUSIC MASTERS JAPAN のホームページにアクセスしていただければと存じます。
いずれにしましても、今の私の偽らざる気持ちは、 「負けるな!中村俊輔選手!!」でございます。
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登録日:2009年 12月 18日 06:08:43
コメント
小谷さん、お久しぶりです。
その後の御身体の調子はいかがでしょうか。
話題に挙げられた俊輔の苦境は、時代の潮流から観ると必然なのでしょうか。
この6~7年でサッカー界もアーチストからアスリートが求められる時代に大きく変化していきました。これはアフリカが南米とともに本場の欧州クラブへの選手供給地として確立したこととも関係が深い筈です。
とは言え、まだまだ俊輔のような戦術眼とテクニックを併せ持つ選手が活かされるクラブは沢山ある筈なんですがね・・・。
当り前の事ですが、オファーを受ける選手達やマネージメント会社もしっかりと進むべき路や選ぶべきクラブについての洞察を今まで以上に高めていく必要があるように想います。代理人との関係においてもですね。
そして困った事に、俊輔を核とする代表チームはあと半年で強豪国との対戦を控えています。
僕は代表チームはオールスターチームである必要はないと想っておりますので、どのような選手選考でも監督のビジョンが反映されるなら構わないとは想っております。
しかし、今の代表には競争が無い。
さらに、このまま俊輔がエスパニョールで控えに甘んじたまま岡田ジャパンのエースとなるようでは、ドイツでの敗戦で浮き彫りになった商業主義に傾倒した選手選考と同様の批判が浴びせられる可能性が高まりますね。
俊輔が少々気の毒にも想いますが、常識を超える特別なスポンサードを受けた選手として背負わねばならない運命から逃げずに立ち向かっていってほしいと想います。
話変わって、ルグエンとの対戦が本当に楽しみです。
僕が小谷さんと初めて言葉を交わさせていただいた時の話題が、(かなり渋いですが)ルグエンとゼムノビッチについてでした。
あのカメルーンにも、やはり規律とプロ意識をしっかり持ちこんでくるのでしょうか。
かなり楽しみです。^^
では、御身体に気を付けてください。
プーアール @ 2009年 12月 19日 14:08:03
プーアールさん
洞察の鋭いコメントをありがとうございます。また、返信が遅れましたことをお許しください。
まさにおっしゃるとおりなので、何もコメントすることはございませんが、ルグエンに関して一言。
カメルーン協会は良いところに目を付けましたね!
公用語は両国ともフランス語なので問題はないし、規律や献身的なプレーを大事にするルグエン監督の就任で、日本代表の対カメルーン戦の勝率が25%以上ダウンしたと私は考えています。
因みにその結果、何パーセントになったかは聞かないでください(笑い)。
小谷泰介 @ 2010年 01月 04日 02:04:47
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- プロフィール
- 小谷泰介
- 1955年、タイ王国バンコク市生まれのフットボールジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験を生かしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説は、ラジオやテレビで人気を博した。
また、本場欧州にプロクラブの監督や選手の友人が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に「拝啓 川淵三郎殿」(モダン出版)や「Jリーグ入門」[講談社)などがある。
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