トーゴ代表チームがバスで移動中に襲撃され、死傷者!
新春早々誠に残念なニュースが飛び込んで来ました。
アフリカ・ネーションズ・カップに出場する為、合宿から試合会場にバスで移動していたトーゴ代表が武装勢力に襲撃され、チームの広報官、そしてアシスタント・コーチが死亡し、複数名が負傷したというものです。
このショッキングな事件を伝える第一報が飛び込んで以来、次々と新たな情報が寄せられていますが、現場は混乱している模様で、現段階では残念ながら正確な状況を把握出来ません。しかし、幾ら戦後アメリカの庇護の下、太平の世の中を享受してきた平和ボケの我々であっても、今回の事件はあまりにも不可解なことが多く、大きな疑問符の残ります。
開催国や主催者のアフリカフットボール連盟はもとより、FIFAと他の諸大陸の連盟はこの悲劇を重く受け止め、慎重に吟味、分析し、今後の防止策を練る必要があるでしょう。
と申しますのも今回の惨劇は、過去に幾つかのフットボールチームが見舞われた悲劇とは明らかに異質だからです。古今東西、これまでにフットボールチームを襲った悲劇の殆どは、飛行機事故によるものでした。
そうです。1949年にイタリアのFC トリが、1958年にはイングランドのマンUが、1987年にはペルーのアリアンサ・リマが、そして1993年にザンビア代表チームがそれぞれ飛行機事故に遭遇し、多くの尊い選手達が命を落としました。
しかしながら、これらの悲劇はあくまでも偶発的な事故によるものであり、決してテロによって引き起こされたものではありません。時代が時代であって、今日のようにテロリストを含む人為的な要素によって列車やバス、そして飛行機といった乗り物がが狙われるという脅威にはさらされていない時代だったのです。
ところが21世紀は正に世も末の様相を呈しており、国同士の衝突というよりは南北間や人種、民族間の対立、或いは宗教上の対立、また貧富の格差が引き金となって暴力が誘発されるという憂うべき時代を迎えています。
それだけに、各国政府が連携を密に取りながら情報を共有し、未然にテロを防ぐ最大限の努力をしなければならないのです。また、五輪やW杯といった世界規模の祭典を主催する組織も開催国政府と協力し、国の威信と名誉を賭けて事故やテロ防止に取り組まねばなりません。
そういった観点からすると、今回の悲劇は決して起こしてはならなかったものと声を大にして申し上げたいと存じます。
まず、アフリカフットボール連盟が何故紛争地帯であるカビンダを開催地として選ばなければならなかったのか、納得し難いものがあります。
そもそも今年開催されるW杯が南アフリカで開催されること自体、治安面で疑問視され続けているわけですが、この南ア開催の裏にはブラッター現会長の政治的な思惑が見え隠れしているのは周知の事実であります。
そして今回、アフリカ・ネーションズ・カップの開催地がアンゴラに決定された経緯を詳しくは知りませんが、カビンダ地区を除く内戦が2002年に終結したとは言え、国内には世界最多といわれる無数の地雷が撤去されずに残っているような国で、アフリカ・ネーションズ・カップを開催する必要が本当にあったのか、検証する必要があるでしょう。
次に、トーゴ代表が何故危険なカビンダ地区を陸路移動せねばならなかったのか。
主催者は警告を無視したトーゴ代表の行動は理解し難いとの声明を発表しましたが
、トーゴ代表のバスにはパトロールカーが護衛していて、実際彼らが応戦しなければ、トーゴ代表チームは皆殺しにされていてもおかしくなかったという情報も入ってきています。護衛をつけたこと自体、陸路の移動を許可したことになるのではないでしょうか。それともこの護衛はトーゴ代表が独自に雇ったものだったのでしょうか。では、何故襲撃を企てた武装グループは、トーゴ代表が陸路移動することを知っていたのでしょうか。釈然としないことだらけです。
それにしても、紛争地帯での開催というのはあってはならないと思いませんか!カビンダの都市部は安全だといっても、平和の象徴である民衆のスポーツの国際大会が物々しい警戒の中で実施されることに異を唱える人はいなかったのでしょうか。
アフリカを差別するつもりは毛頭ありませんが、一部を除くアフリカ諸国の歴史を紐解けば、奴隷連行制度に代表される暗黒の支配と、その後は内戦による国土の荒廃と政情不安が蔓延し、無政府状態のソマリアを筆頭に未だに混乱の続く国がアフリカには少なくありません。
平和の祭典は、少なくとも平和な地域、安全といわれている地域で行われるべきものであり、それは基本中の基本です。テロ行為自体はどんな場所でも起こり得るものですが、今回の事件はそれ以前の問題であり、アフリカ・フットボール連盟とアンゴラ政府は、責任の重さをもっと痛感すべきであると私は考えます。
惨劇にあったトーゴ代表が、二転三転の末に結局は大会参加を断念せざるを得なかった経緯を知って憤りを覚えましたが、このような人災を二度と起こしてはならないことを、FIFAと傘下の各大陸の連盟は肝に銘じていただきたいと存じます。
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登録日:2010年 01月 10日 17:17:13
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- 小谷泰介
- 1955年、タイ王国バンコク市生まれのフットボールジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験を生かしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説は、ラジオやテレビで人気を博した。
また、本場欧州にプロクラブの監督や選手の友人が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に「拝啓 川淵三郎殿」(モダン出版)や「Jリーグ入門」[講談社)などがある。
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