小野、稲本両選手がJリーグに復帰!吉と出るか、凶と出るか?


1999年のワールドユースで日本チームが準優勝を果たした時の主力である小野選手と稲本選手が、相次いでJリーグ復帰を果たしました。

彼らがシーズン半ばで移籍を決意した最も大きな要因は、日本代表選手として南アW杯に出場する為に、より多く岡田監督の目に留まる機会をを求めたことにあるようです。

稲本選手の場合は、今季フランスのレンヌに移籍したものの思うような活躍を見せられず、ベンチを暖める機会も多かった為、今回の移籍を決断したようですが、川崎フロンターレへの移籍会見後に日本代表の合宿に追加召集されるなど、早速その効果が現われているようです。

彼の8年余に亘る欧州での経験と、攻守の切り替えどころを熟知した戦術眼は、岡田ジャパンでも生きるでしょうし、同選手が、川崎フロンターレの悲願である初タイトル奪取、無冠返上の切り札的存在として活躍されることを祈って止みません。

一方の小野選手の場合は、所属していたボーフムでは、9月のコラー監督解任後は出場機会に恵まれ、中盤の要として存在感を発揮していただけに、ちょっともったいない移籍ではないかと思う次第です。

もし、小野選手が南ア大会を自身最後のW杯出場の機会と捉えて移籍を決断したとしたら、色々な意味で残念といわざるを得ません。

何故ならば、彼の移籍が「本場の欧州でプレーをしていると、日本代表選手選考の際に不利である」という発想に繋がるわけで、それが事実であるとするならば、日本はまだまだフットボール発展途上国であるといわざるを得ないからです。   

本場欧州のトップリーグで経験を積む事は、世界の一流選手と対戦したり、一緒にプレー出来ることを意味し、これ程W杯に出場する為に有利な条件はないはずです。

つまり、裏を返せば本場の欧州ではEU圏の選手にせよ、外国籍選手にせよ、W杯出場の機会を求めてシーズン途中で母国に移籍することなど有り得ないということになります。日本がグループリーグで対戦するオランダにせよ、デンマークにせよ、カメルーンにせよ、主力は全て欧州トップリーグのレギュラー選手であり、そのことこそが実力のある選手の証なのです。

それらの国々のどの監督も、本場欧州のレベルを熟知しており、その中で揉まれた選手を軸にチーム編成を構築するのは当たり前のことです。疑いようのない常套手段と言えるでしょう。

余談ではありますが、デンマーク代表のオルセン監督がW杯欧州予選大詰めの段階で、ベンチ要因として怪我から復帰したばかりのイェンセン選手を召集しようと、所属先の監督であるシャーフ氏に電話で長々と情報を聞き出している現場に立ち会ったことがあります。例えバックアップ要因であっても、情報を詳細に聞き出そうとするオルセン監督の姿勢に驚かされましたが、彼らにとっては当たり前のことなのでしょう。またこの事実は、例え負傷上がりの選手でも欧州のトップクラブに所属している選手が監督にとっていかに重要であるかを物語っていると思います。

ともあれ、何故小野選手がブンデスリーガのボーフムでコンスタントに出場しているにもかかわらず、J リーグへの移籍を決断せねばならなかったのでしょうか。ここにどうしても疑問符が付きます。少なくとも本場の選手達にとっては考えられない選択と言えるでしょう。

そこで、考え得る限りの要因を列挙してみて、この問題を整理してみたいと存じます。

①W杯出場という目的を果たす為、日本に居を構える岡田監督にアピールするにはJリーグでプレーした方が有利と考えたから。

②清水エスパルスにとって小野選手は、本来清商卒業後に入団してくる選手であったにもかかわらず、思惑が外れてしまった過去がある。その後はずっとエスパルスにとっては片思いの関係が続き、特にクラブのトップが同選手への思い入れが強いこともあって、今回双方の目論見が合致した。

③ボーフムにとって、W杯後の移籍であるとフリートランスファーとなり、違約金等が発生しないので、今の時期の移籍を後押しした。しかし、これは第二儀的な事象であり、ボーフム自らが移籍を後押しすることは有り得ない。

④小野選手の夫人が何らかの理由で帰国を強く望んだ。或いは、小野選手自身に家族に関わる問題が発生した為に帰国を望んだ。

以上のような理由が想定できるわけですが、④の場合は家族を何よりも大切にする欧米の選手にとってはよく起きることであり、マスコミや評論家、もっと言うと他人がとやかく言える問題ではありません。

しかし、①と②に関しては、先ほども述べましたように本場では有り得ない選択肢であり、ここは問題視されるべきです。

W杯に出場するどの代表監督にとっても、本場欧州でプレーする選手達のパフォーマンスは最大の関心事であり、常にチェックしていることは周知の通りですが、小野選手の移籍の背景に見え隠れする問題として、岡田さんは欧州リーグで活躍する選手をきっちりとチェックしていないという懸念が浮き彫りになってきます。

チェックしているかも知れないが重視していないと置き換えても構わないかと存じますが、確かに岡田監督は欧州のトップリーグに拘らず、Jリーグで活躍している選手ですら疎かにしていると言われても仕方のない面があります。つまり、自分の好み乃至嗜好に重きを置いた人選をする監督であるということです。ジーコ監督もこの傾向が強かったと言えるでしょう。

一概に決め付けることは出来ませんが、少なくとも自分の眼力に自身を持っていることは間違いないでしょう。また、自分の方針に異を唱えたり、素直に従わない選手はバッサリ切り捨てるタイプであることも間違いありません。古くはカズこと三浦知良選手と北澤選手の事件、そして今回前田選手を招集しなかったことなどは端的な例です。自分の方針に従わないから監督として使わないのは当たり前のことなので、別に非難は致しませんが、じゃじゃ馬を馴らしてこそ名伯楽という諺もあります。

私の敬愛するオシム監督の場合、代表チームにあって選手が反発したという話しなど一切聞こえてきませんでした。また、誰かが浮いているとか、仲間割れに関する話しも一切ありませんでした。

また、海外組の扱いについても実に理にかなっていました。同監督は就任当初、いわゆる海外組を全く召集せず、浅はかなメディアはオシム監督は海外組を軽視などと報道していましたが、とんでもない。彼は海外組の実力を熟知していたからこそ、あの時期は召集しなかったのです。本番のW杯までは4年もありますし、国内組の戦力を見極める為に時間を費やしたと言って良いでしょう。因みに当時リーグ戦で活躍していた選手は殆ど招集してチェックしたはずです。神戸にレンタル移籍していた近藤選手まで招集したのはその良い例ではないでしょうか。

そして、就任後半年が経過したあたりから海外組を呼び寄せて、チームの骨格作りに取り組みました。そしてそこに至るまで、海外組の試合をつぶさにチェックしていたことは言うまでもありません。

少し、話がそれてしまいましたが、私が申し上げたいのは、日本代表に選ばれたいから欧州からJリーグに復帰するというのは、本場の国々では有り得ない発想であり、そういった意図で母国に復帰した選手は殆どがうまく行かないのが現実です。

小野選手の優れた才能に疑いの余地はありませんが、その点で私は今回の移籍を憂いている次第です。高原選手の例もありますし、本当に心配です。

これが杞憂に終わるように祈るばかりですが、小野選手にはまだまだ活躍してもらわねばならず、エスパルスでフィジカルをフィットさせ、世界をアッと言わせるファクターとして南アのピッチでその雄姿を見ることが出来れば、こんなに嬉しいことはありません。

コメント[8], トラックバック[0]
登録日:2010年 01月 14日 20:15:39

コメント

岡ちゃんは試合の結果や内容を抜きにして、世間やメディアから批判を受けないような選手の招集がうまいですね。本田にしろ小笠原にしろ(まだまだいたような気がしますが…)世間が何で召集しないんだって意見が出そうな(もしくは出た)タイミングで召集しますし。それで機能しないかなんかの理由ではずされて終わり、みたいな事が多すぎると思います。
最初からコンセプトに縛られすぎなんですよね。高校サッカーの子達のほうが自由な発想でプレーしてるように見えますもん。
小野を召集しないのに関しても怪我してたし走れなそうだから呼ばない、ぐらいの印象を受けます。小野もスポーツ紙が活躍をとりあげだしたら召集するんでしょう。
あと、内容や質がまったく違うのに、サイドアタック重視や走り勝つというコンセプトはオシム時代と同じというのが話をややこしくしてると思います。

我々 @ 2010年 01月 19日 12:25:06

的を得たコメントをありがとうございます。

いずれにしても、マスコミの論調がゆるいのは相変わらずのことであって、仏レキップ紙の記者だったら岡田ジャパンに対して、どのような批評を展開するのか、またその違いを知りたいという欲求に駆られます。

「世界は(日本がベスト4入りを目指していると知って)既に驚いている!君 (岡田監督)の役目は終わった!!」くらいの見出しを日本のスポーツ紙で見れるのはいつのことになるのでしょう。

小谷泰介 @ 2010年 01月 19日 14:13:22

小野選手のインタビューを見る限り、①から④すべて外れています。
・いつかエスパルスでプレーしたいと考えていた。
・自分のコンディションを考えて今がベストのタイミングと判断した。
・小野選手の方からエスパルスにアプローチした。
とのことです。
「地元でプレーしたい。」
本場ではよくあることではないでしょうか。

たこたこ @ 2010年 02月 01日 18:00:23

たこたこさん

初めまして。そしてコメントをありがとうございます。

私は僭越ながら、自分の記述した③が正しい分析ではないかと思っています。

いつかは清水でプレーをしたいと思っていたというのならば、今年の6月以降の復帰でも何ら問題は無いはずですし、試合に出ているのに契約破棄までしてレベルが下のリーグに下野するのは尋常ではありません。また、プロフェッショナル精神にもそぐわないと思います。

そこには今日本に戻らないとW杯出場のチャンスが限りなくゼロになってしまうという焦りが見え隠れ致します。

また、自分からエスパルスにアプローチしたというのは事実でしょうが、それは小野選手がエスパルスならばいつでも自分を受け入れてくれることを知っていたからだと思います。

エスパルスの早川社長の小野選手への思い入れは半端ではなく、小野選手獲得の際は自らが交渉に出馬され、獲得出来なかったことを本当に悔いておられました。また、かつてご本人からお食事をご馳走になった時に、小野選手を養子にしても良いと思っているという発言を直接伺っています。そんな早川氏の熱い想いは、今回の移籍報道の端々から読み取ることが出来ます。

ただ、誤解して頂きたくないのは、小野選手やエスパルスを非難しているのではないということです。小野選手をして、W杯という目標を達成する為に実力の落ちる本国のリーグに下野しなければならない程追い詰めさせてしまう日本はちょっとおかしいのではというのが、その主旨でございます。

いずれにしましても、小野選手の凄さは私も知っているつもりですし、こうなった以上、彼の活躍を祈るばかりです。今の日本代表ならば、フィジカルが完全にフィットしたらという条件付ですが、小野選手が救世主になれる可能生が無きにしも有らずだと思います。

小谷泰介 @ 2010年 02月 03日 06:28:47

「今年の6月以降の復帰でも何ら問題は無いはず」
と断定されておりますが、何故でしょうか?

移籍先での活躍を念頭においているのであれば、そのチーム
のシーズン始動に合わせるのは通常のことかと思います。

③は、外れていると思います。ボーフムは小野の移籍志願を
聞いた後、後釜を探していたという報道でした。

よって、小野選手のインタビューと各処の報道を読む限り、
①から④すべて外れていると思います。

たこたこ @ 2010年 02月 03日 17:38:12

たこたこさん

再びのコメントをありがとうございます。また、返信が送れて申し訳ございません。

小野選手は、レギュラーであったにもかかわらず、契約を破棄してまで日本に戻って来ようとしましたよね。

プロ選手というものは、契約は守るものという前提に立って行動せねばなりません。現に契約期間中の移籍なので、エスパルスは違約金という余計な出費を払っているのです。この厳しい経済状況の中で・・・。

小野選手はまだ30歳ですし、半年移籍が遅れたからといってエスパルスが慌てふためくとは到底思えませんし、シーズン半ばでの移籍というものは、時としてとても有効であることなどを鑑みての私の発言です。

また、選手や監督の発言なるものは、昨今の代表監督や協会会長のインタビューを聞いていても分かるように、必ずしも本心ではないということを念頭に置かれて、記事を読むなりインタビューに耳を傾けられることをお勧めいたします。

小谷泰介 @ 2010年 02月 15日 12:17:26

「必ずしも本心でない」のは当然理解しています。ただ、小谷さんが小野選手のJリーグの移籍が代表選考の為。とは、正しい根拠ももっているわけでもないでしょう。
つまり、小谷さんも私も頼りない根拠から意見を書いているわけです。

小谷さんは、「本場の欧州でプレーをしていると、日本代表選手選考の際に不利である」論が本場ではありえない。という意見かと思います。
その意見の根拠が、私にはとても頼りないと思えたので、小野選手のインタビューを読む限り違うんじゃないでしょうか?と疑問を呈しました。ここまで待っても小谷さんから根拠が提示されないので、小谷さんも私も小野選手の本心は分からないわけですよね。

私が言いたいのは、確たる根拠もなく、一選手の貴重なサッカー人生における決断を残念と書いたり、代表監督の仕事を批判するのはどうかとおもいますが、いかがでしょう。

結局、小谷さんは、①、②ではなく③という意見なので、代表監督の批判は的外れであったわけですし、③というのも根拠が提示されないのであれば、不確定なインタビューから妄想する我々素人評論家となんら変わりはないわけです。

日本のフットボールジャーナリストももっとレベルが上がるといいですね。

たこたこ @ 2010年 03月 03日 20:13:03

たこたこさん

根拠について一言だけ。
長い間にわたって取材をさせて頂いていると、ネタの出どころ或いは情報の提供者に対して守秘義務が生じてくる場合があることをご理解頂ければと存じます。
今後はあなたの仰るような不確定なインタビューから妄想する評論家になることなきよう精進させていただきたいと存じます。また、日本のフットボールジャーナリズムの向上の為に日々精進させていただきたいと存じます。

小谷泰介 @ 2010年 04月 11日 01:09:13

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プロフィール
小谷泰介
1955年、タイ王国バンコク市生まれのフットボールジャーナリスト。

四半世紀に及ぶ取材経験を生かしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説は、ラジオやテレビで人気を博した。
また、本場欧州にプロクラブの監督や選手の友人が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に「拝啓 川淵三郎殿」(モダン出版)や「Jリーグ入門」[講談社)などがある。
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