プレミアシップ百景(1)



ハル・シティが元気です! ミッドウィーク(2月3日)に行われたチェルシー戦に引き分けと大健闘したかと思えば、今度はマンチェスター・シティを2対1で下したのですから!!

昨シーズン、クラブ史上初となる念願のトップリーグ昇格を果たし、序盤で上位に着けるなど大健闘。結局は降格圏ぎりぎりのところで踏み止まって残留しましたが、クラブの資金力からすれば、それだけでも立派なものと言えるでしょう。

そんなハル・シティが、資金力で軽く3倍は上回る金満クラブに勝ったり引き分けたりするのですから、プレミアシップ観戦は止められません。同クラブはフィル・ブラウンという監督が強烈なリーダーシップを発揮し、いわゆる総力戦で並みいる強豪に立ち向かっているのですが、米国代表期待の新鋭アルティドールをレンタルし、高さのあるフェネホール・オフ・ヘッセリンクをセルティックから獲得するなど、いわゆるやり繰り上手。来季以降も是非プレミアシップに定着して欲しいクラブであります。

また、今季のプレミアシップは青春時代に本場母国イングランドのフットボールに傾倒した私にとって、懐かしいクラブが顔を揃えています。今季昇格組のウルブス、バーミンガム、バーンリーがそれらのクラブなのですが、1970年代にはいずれも輝いていたチームであります。

ウルブスことウォルバーハンプトン・ワンダラーズは、1970年代当時、デレク・ドゥーガンやジョン・リチャ―ズ(イングランド代表)、そしてアンディー・グレイ(スコットランド代表)といった名ストライカーを擁した強豪でした。国内総タイトルは9個を数え、黄金時代は戦前ですが、当時もリーグカップを2度制し、欧州のカップ戦でも決勝に進出するなど目覚しい活躍を見せていました。

ところが、1980年にリーグカップを獲得後は凋落の一途を辿り、一時は4部リーグに沈むという屈辱の時代もあったほど。プレミアシップ創設時には昇格を狙える1部リーグまで盛り返しましたが、念願のプレミアシップ昇格を果たしたのは、21世紀に入ってからのことでした。しかし、1シーズンで直ぐに降格してしまい、昨季圧倒的な攻撃力でチャンピオンシップを制し、再び檜舞台に返り咲いたというわけです。

残念ながら今季もこれまで5勝6分13敗の19位と振るわず、またしても1シーズンで降格の憂き目に会いそうな情勢なのはご存知の通り。近年プレミアシップの常連であり続けることは、マンU、チェルシー、アーセナル、リヴァプールのビッグ4とマンC、スパーズ、アストンビラ以外のクラブにとって至難の業と言いえるのではないでしょうか。

それは順意表を見ても一目瞭然で、これら7チームだけ得失点差がプラスなのに対して、8位のバーミンガムからはゼロかマイナスになっています。7位のアストンビラが+13であるのに、8位のバーミンガムがいきなりゼロとなり、続く9位のフラムから11位のストーク・シティまでが-4以内に納まっていて、12位以降は得失点差-20前後のチームが軒を連ねています。厳密には得失点差が-18で12位のブラックバーン(勝ち点28)から、得失点差-22で最下位のポーツマス(勝ち点15)までが、降格圏内ということが言えるでしょう。まさにどんぐりの背比べ状態ということになります。

でも、これらのクラブはクラブで残留を賭けた熾烈な争いを繰り広げ、大いに盛り上がっているところもプレミアシップの魅力であったりするのです。

さて、続いてバーミンガム・シティといえば、70年代当時は天才少年トレバー・フランシスと、典型的なセンターフォワードのボブ・ラッチフォードの二枚看板で、リーグを盛り上げたクラブです。当時は同じバーミンガムを本拠地とするアストンビラは2部にいて、シティこそが街の代表的なクラブでした。

しかし、歴史は移ろいやすく、80年代に入ると立場は完全に逆転。今世紀に入ってようやく2チームがプレミアシップでちょくちょく顔を揃えることになります。このランカシャー・ダービーの火を絶やさない為にも今世紀に入って3度目の昇格を果たしたバーミンガム・シティには奮闘を期待する次第です。

最後にバーンリーですが、当時はイングランド代表のマーチン・ドブソンとレイトン・ジェームスというウェールズ代表のアタッカーがいて、元気なクラブでした。チームカラーがクラーレットという赤紫色(ワインレッド)で、チームのニックネームがそのままクラーレッツとなっています。ユニフォームはこのクラーレットとスカイブルーを使っており、この配色は前述のアストンビラとウエストハムと同じです。余談ではありますが、日本では殆ど見かけないこの粋な配色のチームが今季のプレミアシップには3チームも揃っているところに、母国イングランドの奥深さを感じたりしております。

ホームグラウンドは、ターフ・ムーア(Turf Moor)といって23000人も入らない小さなものですが、イングランド・フットボールの古き良き時代の香りが残るアットホームなスタジアムです。自チームの得点が入るとTurf Moor Jumpingといって、多くのサポーターが独特のポーズで飛び跳ねる光景を見ることが出来ます。

折り返し地点を過ぎて、まもなく終盤を迎えるプレミアシップですが、140年の伝統はゆるぎないものがあり、Jリーグクラブのサポーターの皆様には、是非一度現地にて観戦してい頂きたい世界最高峰のリーグです。スタジアムで観戦するだけで、日本のフットボールがまだまだ発展途上にあり、多くを学ばなければならないことを感じて頂けるはずです。

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登録日:2010年 02月 09日 00:55:53

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プロフィール
小谷泰介
1955年、タイ王国バンコク市生まれのフットボールジャーナリスト。

四半世紀に及ぶ取材経験を生かしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説は、ラジオやテレビで人気を博した。
また、本場欧州にプロクラブの監督や選手の友人が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に「拝啓 川淵三郎殿」(モダン出版)や「Jリーグ入門」[講談社)などがある。
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