野球の話しではあるけれど

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 私は野球は大好きですが、高校野球はあまり好きではありません。
 なぜなら、まだこれからという若い才能のあるエース(投手)を平気で酷使するからです。

 御存知のように、今年の夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)は、早稲田実業が再試合にまでもつれ込む壮絶な死闘の末、三連覇をかけた駒大苫小牧を破って、悲願の初優勝を飾りました。そして、エースの斎藤投手はなんと決勝戦の2試合連続完投を含む7試合、計948球を投げ抜き、甲子園が久々に生んだスーパーヒーローとなったのです。

 しかし、風間トオルにも似た甘いマスクに、細身でしなやかな体から繰り出される剛速球と、色々な意味で将来性抜群なだけに、連日の炎天下で1000球近くを投げ切ったことによる後遺症が心配です。

 私は野球の専門家ではありませんし、勿論トレーナーではないので、今ここで医学的な根拠を楯に述べることは出来ませんが、成人のプロ選手でさえ、先発ローテーション入りをしている投手は、中5-6日の休養が与えられていることを考えると、斎藤投手の連投は論外です。

 準優勝をした駒大苫小牧の田中投手にしても、2日連続で1回途中からの超ロングリリーフでは、何の為のベンチスタートなのか、首を傾けざるを得ません。

 無論、斎藤、田中両投手が悪いのではなく、連投に次ぐ連投が肩に悪いことを知った上で登板させている監督、学校側、そしてそれを許すどころか、美談にまでしてしまう高野連や、主催者の朝日新聞を始めとしたマスコミが責められるべきと考えます。

 何故なら、野球を愛し、野球に没頭している全国の高校生選手、特にプロ入りを目指す才能豊かな選手達にとって、甲子園はあくまで通過点に過ぎず、最終目標はまだまだ先にあるべきはずだからです。
斎藤選手や田中選手程の実力ともなれば、将来の夢はメジャー、そしてWBC連覇と限りなく大きなものであって然るべきで、まだ17-18歳の段階であんな無茶をして良いはずがありません。

 プロ野球史を紐解いても、息の長い名投手は高校野球で目立った活躍をしておらず(即ち肩を酷使しておらず)、甲子園で大活躍をした投手の多くは太田幸喜、荒木大輔、バンビ坂本のように甲子園以上に輝くことはなく、輝けたとしても最後は肩やヒジの故障に苦しむ結果となっています。ちなみに順調にスター街道を突っ走っている松坂投手は例外となってくれることを祈るばかりです。

 結論から申し上げると、甲子園での連投、又連投は若い才能を潰す悪弊であり、高野連は100球以上を投げた投手の連投を禁止するとか、投手を最低でも先発3人、中継ぎ1人、球援1人の5人登録制にするとかの策を早急に講じるべきだと強く主張する次第です。

 門外漢が何をと、批判を受けるかも知れませんが、野球観戦歴40年の一ファンとして、又、プロ野球ニュースで、関根、江本、田尾、谷沢、加藤、達川、松沼(兄)といった錚々たる球界OBの皆様と席を並べてフットボールの解説をさせていただいていた者として書かせていただきました。

 ちなみに余談ではありますが、田尾氏はフットボールにめっぽう詳しく、松沼兄やんのご子息は野球ではなく、フットボールをなさっていると伺いました。

 さてさて、翻って日本のフットボール界にも全国高校サッカー選手権大会なるものがありますが、こちらは野球と違ってFIFAの傘下に収まっている組織による大会ですから、昔のようなハードスケジュールが改善されてきています。しかし、それでも高校日本一のタイトルが魅力なのか、連日痛み止めの注射を打って試合に出る選手がいると聞きますし、そういう選手に限って将来性に溢れていたりするのです。

 去る7月の末に、埼玉県坂戸市の市政30周年と群馬県藤岡市サッカー協会創立30周年を記念して、ドイツ・ブンデスリーガの名門、ヴェルダー、ブレーメンのU-17(アンダー17)を招待し、親善試合が行われたました。

 わたしはコーディネーターとしてその大会に参加させていただいたのですが、同チームの中に一人だけ足首を捻挫した選手がいたのです。歩くには支障がなく、ジョギングも出来る程度の軽い症状でしたが、ついぞその選手は1試合もプレーすることはありませんでした。

 日本の指導者達だと、遠路遥々やって来たのだから、記念にちょっとぐらいはプレーさせてやろうかと考え勝ちですが、彼等は違いました。

 何故なら、彼等の目指すところはトップチームに入ることであり、一流のプロとしてどれだけ長くプレー出来るかに尽きるからです。
 そんな強い目的意識を持った若者の中から、将来ごく僅かな精鋭がドイツの代表選手となり、ワールドカップで活躍出来るのです。

 また、ブレーメンには小学校の低学年を対象としたスクールもありますが、時間は1時間にも満たず、時間が来るとコーチはゲームの途中であってもさっさとボールを取り上げて、子ども達がせがもうが何をしようが終わらせてしまいます。
 若年層に過度のトレーニングは無用。腹八分目ではありませんが、もっとボールを蹴りたいぐらいが調度良い、といった明確なポリシーがあるのです。
 フットボールを愛し、プロを志すからには何に価値を置き、どこを目指すかがハッキリと意志統一されているフットボール先進国ドイツに、我が国のスポーツ界は学ぶものが沢山あるのではないでしょうか。

8月22日

コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2006年 08月 25日 20:51:31

コメント

腹八分目  なるほどです!
確かに自分が『部活』をやっていた時には『もっとやりたい』よりも
『早く終わらんかな』という思いでした。
もちろん当時は練習中水を飲む=根性が足りないという時代でしたから論外でしょうが、
やはり若年層だからといってモチベーションをないがしろにしてはいけませんよね。

ただ甲子園の連投の件については、
田中投手や、斉藤投手のように将来性を考慮しなければいけない選手というのは
ごく一部の存在であり、ほとんどの甲子園球児は甲子園で勝ちたいという目標が頂点で
あると思います。

田中投手や斉藤投手にしてもあそこまで勝ち上がって再試合に際して
『おまえは将来があるから負けるかもしれないけど明日は投げさせない』
と指導者に言われて納得するでしょうか?
仮に本人の気持ちが収まったとしても今まで、甲子園を目指して必死に練習してきた仲間に対してうしろめたい気分にはならないでしょうか?

現実的に超高校級の投手を2~3人擁する事は不可能なことを考えれば
投手の連投を制限するという事は勝利を半ば放棄しろと言うのに等しいと思います。
そうなれば高校野球自体の存在が??となりかねません。

否定的な内容になっていますが、私も連投で選手が壊れるという意見には異論は
ありません。ただ上記の部分との兼ね合いで良い解決案がなかなか浮かびません。

野球に限らず、学生スポーツと選手の将来性について小谷さんの意見をもう少し
聞かせていただければ幸いです。

長文失礼しました。

クライフターン @ 2006年 08月 26日 10:08:55

僕もあのように連日連投を繰り返す姿を見てると、小谷さんと同じく疑問に思えて仕方ありません。
個人的には大勢の補欠部員がスタンドから一生懸命応援している姿はどうも悲しく写ってしょうがありません。人間教育の一環として、高野連が選手達に高校生らしい態度やマナーを求めるのならば、高野連はそのような補欠部員達にスポーツ教育という意味において、もっと公式試合へのチャンスを与えるべきだと思います。

そして美談ばかり流しネガティブな面を世間に伝えないNHKや朝日新聞が高校野球に携わっていることに疑問を覚えます。

僕はこういう問題の原因のおおくは、この大会トーナメント・フォーマットにあると思っています。つまり負けたら終りの一発勝負という大会システムであるがため、一つでも勝つためにエースピッチャーは連投せざるを得ないのでしょう。
よく考えて欲しいのですが、遠方からわざわざ全国大会に参加し、たった1試合負けただけで、帰らなければいけないというシステムが本当に教育機関がやるべきものなのでしょうか?
単純計算してこのトーナメント方式というものは、全国の半分の高校球児が、1試合しかできず大会から去っているということで、4分の1は2試合しか公式試合を経験することができないというものです。トーナメントと同時にグループリーグ制とういものを部分的に導入する必要があると思います。

話がそれてたかもしれませんね。申し訳ございません。
僕の意見はやはり大会主催者側が選手を守るため、一人の投手の投球数を制限する必要があると思います。クライフターンさんがいうように、「将来性を考慮しなければいけない選手というのはごく一部の存在であり、ほとんどの甲子園球児は甲子園で勝ちたいという目標が頂点であると思います」という意見はかなり事実に近いと思いますが、プロでもないアマチュアの高校生たちが、勝ち負けだけのために体を酷使することが、教育の一環で行われるべきものでしょうか?僕は思いません。どう思われます?

K @ 2006年 08月 26日 13:31:48

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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