潔い男の話し

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【横浜 24日 時事通信社】横浜Mの監督を成績不振で辞任した岡田武史監督(右)は「勝負に対する執着心が薄れた。これ以上チームと選手に迷惑を掛けられない」と決断の経緯を語った。
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 今年のJリーグも折り返し地点を通過しましたが、成績不振に喘ぐクラブを中心に、既に片手を超える数の監督の首がすげ替わりました。

 中にはジェフ市原千葉のような非常に特殊な例の監督交代劇もありましたが、その他に関してはトカゲのシッポ切りに過ぎない、つまり、悪いのは監督だけではないだろうとの疑念を抱かざるを得ないケースが殆どです。

 そんな中、横浜Fマリノスの監督である岡ちゃんこと岡田監督が辞任を発表しました。

 今回の岡ちゃんの場合は、クラブが慰留工作を行ったにもかかわらず、本人の辞意が固かったという珍しいケースですが、その潔さは、何と言われようと俺は辞めないと言い張っている誰かさんとは対照的に、際立っています。

 岡ちゃんと言えば、’03年にマリノスの監督に就任するや、いきなり史上初の2ステージ連覇(年間優勝)を成し遂げ、翌年も1stステージ優勝、そして チャンピオンシップで2ndステージ優勝の浦和レッズに完勝して、2年連続の年間優勝を達成した実績の持ち主。日本の名称の一人であることは間違いないのですが、昨年は9位、そして今年も現段階で12位と、その神通力に陰りが見え始めたので気にはなっていました。

 当然のことながら、御本人には相当な心の葛藤があったようですが、勝負に対する執着心が薄れてしまっては、辞任より他に道はなかったのでしょう。

 スポーツ報知によると辞任会見では、「昨年結果が出ず、今年は優勝すると言って補強もした。非情な決断と言われることをやってきて、(昨オフは)自分のコーチも切った。チームの結果が出ていないのに、自分だけがのうのうとしているわけにはいかない。勝つために自信を持って決断してきたが、 ここで責任を取らなければ、今後その決断が出来なくなる。」といった内容のことを述べたそうです。何と潔いのでしょう。そして男の鏡です!

 又、これを機会に当時マスコミや解説者の方々が評価しなかったので、岡ちゃんの潔さにまつわる過去のエピソードをご紹介させていただきたいと思います。

 岡ちゃんは日本代表が初出場した’98年ワールドカップ・フランス大会で指揮をとって3戦全敗を喫したものの、危機的状況から予選を突破した功績と将来性を買われ、協会より’02年自国開催大会での続投を要請されていました。しかし、俗に言うそんなにおいしい話しにもかかわらず、岡ちゃんは固辞をしました。

 その理由は、「勝利を目指す上で自分の判断でカズを切り、北澤を切って、結果を出せなかった今、どうしてチームに居残ることができるでしょうか。」という内容でしたが、私は何と男らしい、潔い決断かと感銘したことを良く覚えています。そしてその潔さは今も全くブレていないのが秀逸です。人間、結果を出したり、連戦連勝が続くと増上慢になりがちですが、岡ちゃんに限ってはその心配は無用のようです。

 政治の世界でも何の世界でも、潔い人物を見出すのが困難な近代日本にあって、フットボール界にこんな潔い男がいることを、私は心から誇りに思います。

 こういう人物にこそ、日本フットボール協会の会長になって舵を取っていただきたいと、’00年の暮れに出版した小著「拝啓 川淵三郎殿」には書かせて頂きましたが、今もその気持ちは全く変わりません。時期が時期なだけに、「川淵辞任!岡田新体制!!」などと電撃的報道がなされれば、どれだけ喜ばしいことでしょう。

 冗談はさておき、私はそんな岡ちゃんが大好きです。とても尊敬しています。

 実は、コンサドーレ札幌の監督時代にテレビで共演させていただく機会があり、その夜に個人的に色々なお話しを伺ったのですが、御家族の話をされる時に実に活き活きと嬉しそうなお顔をなさっていたのが印象に残っています。この人はすごく家庭を大事にし、御家族を愛してらっしゃることが良くわかりました。

 翻って、自身の夢を追いかけるために、家族に犠牲を強いてきたばかりか、多くの方に迷惑を掛けてしまっている私にとって、岡ちゃんは眩しい程の存在であります。爪の垢を煎じて飲まさせていただかねばなりません。

 なお、前述のスポーツ紙に、最近は私生活で不幸があるなど、困難に見舞われながら踏ん張った云々と書かれてあったのですが、家族想いの岡ちゃんのことですから、相当なダメージを受けられたに違いありません。この場をお借りしてお悔みを申し上げます。

 何はともあれ、岡ちゃんは現在無職となられたわけですが、体を動かすことが性に合っているので働きたいと意思表示されていることは喜ばしいことです。しかし、「サッカーの道に戻るかどうかは分からない」と付け加えられているのは大いに気になるところ。

 一方、辞任会見翌日の東スポには、オシムジャパンのスタッフ入りを熱望しているとの記事が載りましたが、もしそれが事実であれば、私には納得のいく話しです。何故なら、岡ちゃんであれば、監督としてもっと成長する為に、オシムのそばで出来るだけ多くのものを吸収したいと望むのは自然の流れだからです。私も岡ちゃんが復活する為のモチベーションを高めるには素晴らしいプランだと思います。

 如何せん、ニュースソースが東スポというのが何ともいただけない話しです。

 いずれにしても、岡ちゃんが一日も早く鋭気を養ってフットボールの現場に復活する日を心から切望致します。

 潔い男には、もっともっと日本のフットボールの発展の為に働いてもらわねばなりません。出来ればJFAの会長として!

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登録日:2006年 08月 29日 11:27:56

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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